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製作国
シンガポール
監督
J.D.チュア
出演者
ジェセカ・リウ
アンディ・チェン
ピーター・ユー
パトリック・ペイシュー・リー
今回はシンガポールのモンスター・パニック映画、グアイウ 地下鉄の怪物(原題:Circle Line)の感想。
本作、個人的にはかなり好みの映画。
親子という怪物側にも通じる一貫したテーマ軸を盛り込むことで人間ドラマが全てに繋がるような展開。
そして最後の母親のリンが放つ2つの意味を持つ言葉からの決着が最高にクールな映画でした。
怪物側のシーンの少なさ、勿体無い設定の捨て方など気になる点あるにはあるのですが、
この規模の映画という前提で見る分にはいいモンスター・パニック映画でしたよ。
ジャンルはサバイバル・アクションで上映時間は約80分となります。
目次
あらすじ
奴から逃げきれ!狂暴な怪物に息子を奪われた母親の死闘を描くモンスター・サバイバル・アクション!!
Rakuten TVより
大都市の生活に欠かすことのできない交通手段である地下鉄。その日も終電で帰宅する多くの通勤客を乗せていつも通り運行していたはずだったが、突如、制御不能となりコースを外れて暴走。現在は使用されていない廃墟と化したトンネルへと突き進んでいく。ようやく停車したその場所は、なんと未知の怪物の巣窟となっていた!幼い息子のルーカスとともに家路を急いでいた母親のイー・リンは、地下鉄車内に侵入してきた怪物と遭遇。必死の抵抗もむなしく、ルーカスは怪物に連れ去られてしまう。果たして、彼女は息子を連れ戻し、怪物が巣食う地下空間から脱出することができるのか?
グアイウ 地下鉄の怪物を配信している配信サービス
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登場人物
・イー・リン
救急外来の元看護師
過去に自分が運転していた車で事故を起こし、夫を亡くし息子のルーカスに傷を負わせてしまった
暴走した列車の果てにいた怪物に攫われた息子を救うために単身怪物に挑む
・ルーカス
リンの息子
過去の事故以降声を出さないなど心に傷を負った
・チャン
鉄道会社の本部長
暴走した列車のトラブルの対処中に娘が巻き込まれたのを知り単身彼女を救いに向かう
・チャンの娘
短大生
バスケ部だったが大学の最後の年にもレギュラー入り出来なかった
父が仕事を優先して自分のことを理解していないことに反発している
親子という軸がしっかりとあるモンスター・パニック
地下鉄トラブルの果てにいた怪物に襲われるという映画ですが、
アジア圏らしいモンスター映画と見るべきか、人間ドラマの方に(方が?)力を入れている内容となっている本作。
そしてそのドラマの軸となるのは親子。
この世の不変のテーマでありますが、本作は2つの親子。
リンとルーカス、チャンとその娘(作中で多分名前が出てきていない)母と息子、父と娘というドラマが軸となっているんです。
そこに怪物自体にも親と子、そして過去のちょっとした設定があり、
ドラマとしてはこのジャンルにしてはという枕詞はつきますが短いながらもしっかりと軸のある良質な部類に入っているなと感じましたね。
その分怪物の出番は少なくなってしまっているのですが、
少ないながらもその出番の中でしっかりと活躍をしているのでこの規模の映画としては及第点ではないかなと思います。
序盤は現実的なパニック映画のよう
この映画の導入となる列車のトラブルによる暴走、ここの描写はモンスター・パニックではなく普通のパニック映画のような導入となっております。
鉄道会社が問題を把握しながら対処をしていなかったシステムトラブル(一応怪物の偶発的な介入はあった描写はある)で暴走する終電の列車、それに主人公達乗り合わせてしまうという始まりです。
暴走する列車、未開業の路線の区域にどんどん侵入し、
最後にはボロボロになってトンネルの奥の奥の方まで突き進み停車。
しかもシステム管理している司令所からは線路が切り替わり未開業の路線に入った列車は見つからず突然消えたように見え、
地下鉄という限られた区域の中のはずなのに孤立するというここだけ見たら電車メインのパニック映画のよう。
助け合う乗客達もいい雰囲気出しているんですよ。
しかしモンスター・パニックなので本番は当然ここから。この緊張感ある始まりをした導入は中々に引きつけられるものがある導入でしたね。
この導入の鉄道会社の問題。
予算のせいで改修されないシステムなど鉄道会社なら割とどこも他人事ではないかもしれない社会的な問題もちょっと盛り込んでいたりもするのですが、それ以上に状況作りとして便利でしたね。
そもそもシステムの問題で列車の孤立、さらにこの不備で社会に知られるのを躊躇うという、孤立と救助が遅れる理由が自然に入り込む設定になり、
更に更にその結果会社所属であり列車に取り残された娘の父であるチャンが単身動くことになるという親として愛情なども見せることに成功していると、
ストーリーの最初から最後まで影響する状況作りと社会風刺を上手く組み合わせることに成功していた導入でした。
親子という共通点
この映画はとにかく親子が軸となっている物語です。
リンとルーカスという母と息子、チャンとその娘という父と娘、更には怪物にすら親子の概念を入れています。
この親子の親の方である2人はそれぞれ形が違えど子供に対して後悔を抱えている2人です。
リンは過去の自分が起こした事故で息子から父を奪い、また息子にも深い傷を負わせてしまったという過去の後悔。
チャンは仕事にかまけすぎて娘をしっかりと理解していないという後悔ですね。
その後悔とそれ以上に我が子への愛情からこの2人は互いに一切交わることはないながらもそれぞれ我が子のために単身怪物に立ち向かうのです。
まずはチャンの方ですが、こちらの抱える後悔というのはとても一般的な後悔です。
仕事が忙しくて娘の大学の学年さえ覚えていないという、よくある父と娘の関係ではありますね。
でもそんな娘を助けるために会社側が救護隊を出さないことを知り、1人で未開業の路線の奥深くまで行くという娘の信頼を取り戻したい父の姿がそこにはありましたね。
最後には怪物が近づいていることを悟り、娘だけを逃す。
それは会社の役員である自らを犠牲にすることであり渋っていた会社側が救護隊の派遣を決断させることにもなるというね。
この自分の命の価値を勘定に入れた決断をする姿は流石にカッケェ父親だなと言わざるを得ませんでした。
この犠牲が救護隊を派遣させ娘が救いたいと思ったリンとルーカス親子を救い出すことにも繋がるのがまたいいのです。
そして主役たるリンとルーカスの親子。
こちらの親として抱えている後悔はかなり深刻。
自分の運転している車の事故により夫を失い息子は深い心の傷を負っているという(多分喋れなくなった?)もの。
そんな息子が怪物に攫われて文字通り単身怪物の巣まで乗り込む訳ですが、実際の所あっさり見つかったりはします。
ここら辺は尺の都合だしゃあねえ。
それはそれとして大事なのは息子を見つけてからの怪物との対峙ですよね。
ここは一貫した親子のテーマ、こちらの親もチャン同様に自分を囮に怪物を引き寄せるという手立てに出る訳ですよ。
この子と私は誰の手にも引き離せないわ。あの事故にもアンタにも!と啖呵を切って挑む姿は正に親の強さですね。
当然かなう訳もない中でルーカスがついに声を発して今度は自分が母のために石を投げて怪物の気を引く、これぞベタ、これぞ王道の良さですよ。
そして決着の台詞こそがこの映画のテーマと言えるでしょう。
「子供を守れないなら母親失格よ。」
この台詞と共に怪物の子供のいる横穴に対してガソリンと火をつける(容赦ねえ)
すると怪物が自らの身も構わず子供の元に行くために燃え盛る炎の中へと向かうのですよ。
この言葉にかかっているのが子供を守り抜いた母であるチャンと子供を死なせてしまった怪物の2つの意味をかけているところとかクールですよね。
そう最初に言った通りこの映画は怪物側にも親子としての絆の物語という物を盛り込んでいるのです。
これこそが軸となっているテーマの一貫性。
リン、チャン、怪物、これら親に共通しているのが子供のためなら自らを犠牲にすることを厭わない姿なんですよ。
人間側だけでなく怪物側にも同じテーマを盛り込んだことで、人間ドラマの尺が多くてもこれが怪物側にも通じる話になるので気にならなくなるという訳です。
モンスター・パニックや怪獣物の中で描く人間ドラマの形としては正解の1つといってもいいんじゃないか、そう思える上手さを感じましたね。
ちょっと勿体ない怪物の設定
親子という共通のテーマの中では完璧な怪物の設定でしたが、実はとても勿体無い形に終わってしまった設定があります。
それが冒頭で見せた自分の飼い主とルーカスを重ねていたという設定です。
この映画の冒頭は20年前に病院で入院しているであろう少年にまだ子供の怪物が水槽の中で飼われていたというところから始まるのです。
ちなみ未開業線のたどり着いた先も病院です。
そしてでかくなった怪物がリン達を襲った最中、ルーカスを見た瞬間に怪物が過去の少年をルーカスに重ねる、
もしくはルーカスをその少年だと思った描写が差し込まれるのです。
これがルーカスを殺さずに攫った理由になるのですが、この設定なんとルーカスを攫った後は使われなくなってしまうのです。
これすごい勿体無いなと思っていて何でここで設定を切り捨ててしまったのかなと。
病弱な少年の飼い主と単身成長した怪物とか過去に悲しげなドラマとかありそうじゃないですか?
親子という共通のテーマに振り切った方が楽なのは分かりますけどすごいドラマ作れそうな関係性なのにとても惜しいなぁと。
語られないからこそ考察しがいがあるとも言えるのも確かなんですけどね。
例えばルーカスを攫ったのは飼い主をまだ追い求めていて、飼い主の少年が病弱だったから病院に連れ戻したとも思えますし。
もしかしたらホラーのお約束、少年に情を感じているようで餌として食べた…何て展開も考えられるじゃないですか?
でも結局のところは一切語られずにバッサリと切り捨ててしまっているので、飼い主の少年との関係性に関してはもっと掘り下げた方が観客目線でもこの怪物にもっと情を持てたと思いますね。
最後に親だけ生きているのでまさかの奇跡の続編が出たりして語られる可能性もあるかもしれませんけどね。
多分無い。
まとめ
いいモンスター・パニック映画でした。
親子という不変のテーマを人間側と怪物側双方の軸にすることで人間ドラマの多さにダルさを感じなくなる構成。
他にも鉄道会社のシステムの問題と隠蔽で地下鉄という限られているはずの空間の場所で孤立を作るので人間ドラマに無駄がないなと思います。
あまり書きませんでしたが怪物の造形も動きもこの規模の映画としては洗練されている方。ここら辺はアジア圏の人とは気が合うなと改めて感じる点でもありましたね。
電車内でビュンビュン動いて人を襲うのとか好きですよ。
モンスター・パニック映画としては個人的にかなり好みな部類の内容。
とはいえあくまでこの規模として完成度は高い方という話なのでそこの心構えだけは持って見てください。
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