【映画】エンタメへの昇華が素晴らしい アンテベラム ネタバレあり感想

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アンテベラム
©2020 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

製作国

アメリカ

監督
ジェラルド・ブッシュ
クリストファー・レンツ
脚本
ジェラルド・ブッシュ
クリストファー・レンツ
出演者
ジャネール・モネイ
エリック・ラング
ジェナ・マローン
ジャック・ヒューストン
カーシー・クレモンズ
ガボレイ・シディベ

昨今人種や性別による差別や平等といった問題が叫ばれ、映画界特にハリウッドだと無視はできない大きなものとなっています。

今回はゲットアウトやアスなどそんな問題もエンタメに昇華するのが上手い製作陣の作った映画アンテベラム(原題:Antebellum)の感想となります。

ジャンルはスリラーで上映時間は約106分です。

あらすじ

博士号を持つ社会学者で人気作家でもあるヴェロニカは、優しい夫、愛くるしい幼い娘との幸せな家庭を築き上げていた。ある日、ニューオーリンズでの講演会に招かれた彼女は、力強いスピーチで拍手喝采を浴びる。しかし、友人たちとのディナーを楽しんだ直後、ヴェロニカの輝きに満ちた日常は突然崩壊し、究極の矛盾をはらんだ悪夢へと反転するのだった…。一方、アメリカ南部のプランテーションで囚われの身となり、過酷な労働を強いられているエデン。ある悲劇をきっかけに、奴隷仲間とともに脱走計画を実行するが―。

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登場人物

✔️エデン

黒人奴隷

✔️ヴェロニカ

人権問題を扱う社会学者

「生きるための仮面を捨てて」などの本も執筆している作家でもある

✔️ニック

ヴェロニカの夫

✔️ケネディ

ヴェロニカの娘

✔️エリザベス

ヘッドハンター

ストーリー感想

アンテベラム

どういう設定や流れになって行くのか読めない序盤

過去は決して死なない

過ぎ去りさえしないのだ

ウィリアム・フォークナー

この冒頭のテロップから黒人を奴隷とする白人、そしてその白人達の台詞や様相から南北戦争時代と思われる舞台から始まります。

この時代描写はアメリカ人からしたら常識なのでしょうが、日本人的には少し前提知識が不足する部分があってちょっと大変でした。

自分にはプランテーションや貧乏白人、裕福白人などは、
その時代と合わせて調べて知る知識でしたね。

奴隷への扱いは黒人奴隷時代を扱う映画だとよく見る描写ですので、そこまで目新しい感じではないのですが(とはいえ陰鬱ではあります。)

白人の子供が黒人に勝手に名前をつけるところなどなかなか嫌な描写です。

しかし、その黒人奴隷達の様子や最初に撃たれた女性の服装などを見ると、どこか違和感を感じて行くようになる構成にしっかりなっていましたね。

特にエデンへの拷問、彼女は名前を言うことを求められますがなぜか自身の名前を言おうとしません。

焼印を押されてようやく名前を言いますが、なぜそこまで頑なだったのかそれも後に分かる展開となっていていい伏線でしたね。

他にも貧乏白人(クラッカー)など言って激昂された理由も後に別の意味で捉えられますね。

連れてこられたばかりの黒人奴隷達からも既に知られているエデン、
そしてその1人から指導者どころか口先だけと罵られるその意味が後半に分かっていくことになります。


視点は変わり電話の音で目が覚めた現代のエデンとそっくりなヴェロニカの視点へと移ります。

彼女の視点だと彼女が多様性の受容(インクルージョン)について論争する社会学者として活動していることが分かります。

彼女の支持者は多く彼女は今の時代に必要なのは同化ではなく自由と語ります。

この視点ではヴェロニカはまさに指導者となっています。

その裏で起きる何者かから送られる花束、ヴェロニカの部屋に忍び込む女性喋っちゃいけないと語る少女など不穏な気配を帯びてきます。

女の子はちょっとシャイニングっぽい演出でしたね。

ここら辺が設定を読ませない演出に買っていたなぁと思います。

そしてヴェロニカが何者かに誘拐、気絶させられた後視点は再びエデンへと戻っていくことになります。

ストーリー感想(ネタバレあり)

アンテベラム

素晴らしいエンタメへの昇華

電話の音で目が覚めたエデン。

ここまで来ると分かると思いますが、エデンとヴェロニカは同一人物です。

南北戦争時代は白人至上主義によって再現されたごっこ遊びのような空間でした。

なぜエデンが自分の名前をエデンと呼ばなかったのか、
初めて会うはずの黒人達がなぜエデンを知っていたのかここで全てが分かるようになっています。

そして将軍のスマホを盗み彼女は脱出を試みます。

ここからはアクションや皮肉も多めとなりここからは分かりやすいエンタメ性が強くなりますね。

拉致した彼らの目的は黒人達を帰郷させる、つまり当時綿花を摘むだけの奴隷だった時代を分からせるためにやっていた狂気の行いでした。

そして脱出途中でのエリザベスとの決着では「いつものように女が男の尻拭い」や殴り合いで「女同士なのによくも」の言ったりなど男女同権問題も入ってきます。

最終的には無事に脱出し彼らの行いは白日のもとに晒されることとなりました。


現代視点の途中までは正直設定が読めない映画でしたね。

当時の南北戦争時代と現在がリンクしている映画なのかと思わせるような構成になっていたので、
そっちと意識が繋がっているのではと最初は少し思ったりしていました。

実際にはヴェロニカ視点が過去、エデン視点が現在という構成で見事でしたね。

これに関しては冒頭のテロップも上手く作用してました。

過去は決して死なない

過ぎ去りさえしないのだ

ウィリアム・フォークナー

もう一度出してしまいましたが、こんなテロップ出されたらそりゃ最初は勘違いしてしまいます。

ちなみに自分は見てから調べて知ったのですがタイトルのアンテベラムとは”南北戦争前の”という意味らしいですよ。

見た後だとちゃんと別の意味で正しいタイトルなのですが

初見だとここでも大分惑わせに来ていたんですね。

テーマは差別問題でありそれを多様性の受容、インクルージョンでしようという話なのでしょうが、
結局のところ暴力解決ですのでその道にはまだまだ遠いという話でもありましたね。

それを見た我々はインクルージョンしましょう。

将軍の死に際の目には見えんが我々は無数にいるという台詞にもそれは表れています。

思想的な部分も強い映画ですが、それなのにエンタメになっていて映画としては見事ですね。

差別問題というとどうしても思想優先になってしまいがちですが、
この映画はスリラー、ホラー、サスペンスというエンタメ部分としてよく出来ているので、
ちょっと品のない悪い言い方をしますがそこまでクサさを感じない映画に出来上がっています。

ここら辺はこの製作陣ならではの思想をある種荒唐無稽とも言える設定で包んでいるうまさがある映画で個人的にはとても楽しめたいい映画でした。

良いところ

ともかく全体的な構成ですね。

序盤から違和感を感じさせつつ、どこに転ぶのかは読ませないようにしていて見事としかいえませんでした。

過去と現在にまつわる1つの1つの台詞やテロップがいい具合に惑わせてくれてとても楽しめました。

残念なところ

ここは正直特にないです。

強いて言えばラストに他がどうなったのかということをしっかり描写してほしかったくらいでしょうかね。

それくらい個人的にはあまり隙のない良い映画でした。

印象的な台詞

時にはね怒りのように見えるものが恐れの裏返しだったりする

真実は見た目じゃ分からない

先祖は夢に取り憑いて生き続ける

未解決の過去は現在に害をなす

この映画はこの2つの台詞だけで説明できてしまうんじゃないかと思うような台詞です。

前者は明らかになった真実の中ではある意味真理でしょうし、後者は目を背けた結果故とも取れると思います。

後者は地味に話を惑わせてくる効果もありましたね。

まとめ

アンテベラム

ともすれば拒否反応されるような問題をしっかりスリラーやホラーなどといったジャンルを混じえ上手くエンタメに昇華していた本作。

単純に主題において議論を呼ぶ映画もいいものだとは思いますが、本作のように上手く娯楽にも変えられるのは素直にすごいと思える作品でしたね。

どうしても所謂ポリコレに配慮されてるだけで嫌悪感を持つ方も最近いるでしょうが、
そんな方にもスッと見れるようないいエンタメであり問題提起の映画にもなっている見事な1作ですので興味を持った方は是非とも。


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