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製作国
ベルギー、フランス
監督
グレゴリー・ベギン
脚本
ニコラス・タキアン
出演者
ブライズ・アフォンソ
オリビエー・ボニー
レオーネ・フランソワ
ソフィア・ルサフール
ジョゼフ・オリヴェンヌ
フィリップ・レジモン
今回へ映画カタコンブ 地下墓地の秘密(原題:Deep Fear)の感想。
タイトルを見ると地下墓地であんなものやこんなものが出現するホラーだと想像するでしょうが、
蓋を開けてみると意外にも違う路線のホラーとなっておりました。
しかし、個人の感想としてはこの路線のホラーでも全然あり、そしてB級ではお馴染み、そして便利な“あれ”も登場するという、これはいい映画でしたね。
ジャンルはホラーで上映時間は約84分となります。
目次
あらすじ
地下20メートル。全長およそ1.7キロメートル。パリの地下に広がる、600万人の遺体が眠る世界最大の地下墓地“カタコンブ・ド・パリ”。そこには足を踏み入れてはいけない禁止区域がある―。パリに住むソニアは、友人たちと共にカタコンブを訪れるが、案内人のラミはソニアたちを禁止区域へと連れていく。人ひとりが這いつくばってなんとか通れる穴を進んだ先には、冷たい空気が漂う巨大な空間が広がっていた。さらに、通路に仕掛けられた無数の罠によって、次々と犠牲者が増えていくが―。
アルバトロス・フィルムより
カタコンブ 地下墓地の秘密を配信している配信サービス
※2023年6月14日時点での話ですがTSUTAYAなどでレンタルするか購入する以外だと見れないかも?
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登場人物
・ソニア
父がフランス人、母はアルジェリア人のフランス人女性
兵役が迫る友人アンリのために特別な1日を送らせるためにラミに相談する
・マックス
ソニアとマックスの友人
ビデオを持っておりカタコンブ内では撮影している
閉所恐怖症、誇大妄想、暗所恐怖症、空間恐怖症、ネズミ恐怖症(いくつかは多分冗談)
・アンリ
兵役を控えているソニアとマックスの友人
彼らとは同じ教室で仲良くなった
親と折り合いが悪くソニアとマックスが人生の全てだと語る
・ラミ
ソニアの知り合いでカタコンブの案内人
カタコンブには16歳の時、初めて入った
・ラミア
カタコンブに集まるカタフィルの1人
弟のスポーンが2年前に行方不明となり彼を探すためにカタコンブに顔を出すようになった
・ダンテ
カタフィル
カタコンブの“空白地帯”の道を開通した
・スキンヘッド
20年前から彷徨っている集団
差別主義者
思っていたのとは違うがいい味出しているホラー
カタコンブ、地下墓地の邦題がついたこの映画。
そんな邦題がついていたら想像するのは当然入ってはいけない場所、触れてはいけない物に触れて骸骨、ゾンビ、幽霊、呪い、どれかに襲われるんでしょう?っめ思うものでしょうけど、
これはこれで正しくはあったんですけどね。
実際にはそんな超常現象的かつ王道な内容のホラーではありません。
じゃあどんな内容のホラーかというと人と暗所、閉所といった空間、
この2つの恐怖によるリアル感あるホラーとなっております。
期待というか構えていた内容とは違ったんですが、これがなかなかにいい味出しているホラー。
地下という限定された空間、そこで繰り広げられる内容としてはこっちの方が寧ろ怖いのでは?とちゃんと感じられていいんですよ。
鉄道が通ったら揺れて崩れそうになる道など閉所が苦手な人からすると結構鬼気迫る描写で息が詰まりそうな描写を見せますし、
そしてそんな限定された空間、つまり少しばかり社会のルールから隔絶された場所から人に追われる怖さというのも完璧に表現出来ています。
この怖さがリアルなんですよね。起こりうるという部分、地に足ついたホラーなので自分の身として想像出来る内容というのが良かったです。
更に後半になり“空白地帯”と呼ばれる、新しく開通した空間に入ると作品全体の雰囲気はそのままに一気にB級ホラー感出してくるワードが飛び交い、
そのワードが出た時点でB級好きとして実家のような安心感を感じませんでしたね。
そこからは作品の路線としては変わらないんですが、追ってくる存在が肉体の限界突破でもしているのか引きちぎったり中を出してきたりと、
安易なグロ方面を見せてきてちょっと極端なホラーになってしまったかなというのは個人的には残念なところ。
後半から地に足ついたホラーから浮世離れした、ある意味邦題っぽいホラーになったので最後まで序盤の路線を見せてくれた方が好みでしたね。
ただオチはいいと思います。
文字通りな感じで。
序盤のフリは大事
1991年のパリが舞台でソニア、アンリ、マックスの友人グループが兵役前のアンリの思い出作りに案内人のラミに頼み親友同士でパリの地下に冒険をというストーリー。
調べてみるとパリの地下って“カタコンブ・ド・パリ”て名前で結構有名なんですね。
カタコンブ・ド・パリは、パリ市内にあった大規模墓地を閉鎖した際に発掘された遺骨の単なる移転場所であり、当初から実際に死者の埋葬に使われたことはない。それにも関わらずカタコンブと呼ばれているのは、古代ローマの地下墓地から類推しての名称である。カタコンブの正式名称はロシュエール・ミュニシパル(l’Ossuaire Municipal)、すなわち市営納骨堂である。
全長はおよそ1.7km、地下20mの場所にあり、2008年のカタコンブ・ド・パリ訪問者数は約24万人であった[3]。パリの博物館の1つであり、2002年5月よりカルナヴァレ博物館が管理を行っている[4] · [5]。パリ・メトロ及びRER B線の最寄り駅はダンフェール=ロシュロー駅。
Wikipediaより
そんな如何にもな舞台に2年前の1989年に地下にいた男性が襲われる冒頭の映像、更にソニアが見る3人がスキンヘッドに拷問される不穏な夢と、
ここまでだとやはり心霊的なホラーのように思わせる内容でしたね。
こういうフリからの意外性が大事なんですねぇ。
そしてカタコンブの中に入るとラミの仲間達カタフィルと呼ばれている人達というかグループですかね、彼らのちょっとタチの悪いイタズラなんかもあり、
そこでの彼らカタフィルの価値感である少し現実離れしたところでの抑圧からの解放やちょっとした自由なんかを楽しむという地下での文字通りのアンダーグラウンドな価値観というのは興味深いですね。
ただここで彼らも言っていますがこれらは自己責任が伴うというのがやはり後半になると効いてくる価値観にもなっていましたね。
2年前に行方不明になった弟を探すラミアや友人達が人生の全てと語り彼らがいなくなったら諦めないと語るアンリ。
他にも最近見つかった誰も足を踏み入れたことのない“空白地帯”のことや地下鉄が通るたびに脆くて揺れる通路のこと。
何だかんだと序盤はほのぼのとしてはいますが後半にこれらが襲いかかってくるんだなぁと思わせる前振りがしっかりしている内容でしたね。
特に一部の通路を通る描写、すんごい狭い穴を這って通る所なんかは上述の前振りもあって、これ後半に絶対嫌なことが起きるわと思わせるには十分な狭さと圧迫感でしたね。
人によっては全然平気でしょうがこの狭い“通路”を通る描写は終始自分は苦手でしたね。
おっ、そういう路線なの?と思わせるホラー描写
地下を堪能して帰ろうとするソニア達の目の前に不穏な気配、そして現れるスキンヘッドの男達。
ソニアの不穏な夢で見た(と思われる)連中が現れて捕まりリンチされるという、しかも相手は差別主義者というか純血主義者ですかね。
そんな価値観の連中で躊躇なく暴行してくるというあっ、もしかしてそういう路線のホラーなの?これってと、
ここからストーリーの路線も予想の流れも変えてくる展開になっていきました。
ルールが行き届かないアングラな世界での自由と自己責任というのはこういう連中とのリスクもあることと言うのを見せつけ、
やはり肝試しで1番怖いのはそこを溜まり場にしている不良連中だよなぁとリアルな方の怖さを見せてきます。
銃を使って切り抜けて割とあっさりと逃げられるんですが、
なりふり構わず逃げるので道に迷って地下という狭い空間に閉じ込められたようなこれまたリアルな怖さを感じられます。
正直最初は借りた理由が理由だったので心霊とかのホラーじゃないのか…と思ったりもしたのですが、
このアングラの中での人と空間を使ったリアルな怖さというのはこれはこれで味があるので結構ハマる怖さでしたね。
この道に迷うのもラミの仲間とすぐに合流してあっさりと解決してしまうのはちょっと勿体無いなぁと思ったのですが、
ただここからが本格的に冒頭からのフリも活かされるので割と気にはなりませんでした。
誰も足を踏み入れたことのない“空白地帯”への道が開通され、ラミが興奮してそこに入り帰りたいソニア達も渋々それに付き合うのですが、そこの通路の描写ですよ。
前振りであった地下鉄が通り通路が崩れそうに揺れるなど息が詰まりそうな描写でこれ閉所恐怖症の人が見ると結構きつそうな気がする程の肉体的、心理的な圧迫感がありました。
この後に安易なホラー描写も出てくるのですが、この映画の醍醐味であり恐怖はやはりこの空間による圧迫感だなと思えますね。
“あれ”が出てきて実家のような安心感
今まで誰も足を踏み入れたことのない“空白地帯”
そこに足を踏み入れた時、B級的な意味で実家のような安心感のあるノリと設定が出てきます。
“空白地帯”の中は比較的新しい空間、そしてそこにはアンリが引っかかるトラバサミや爆弾のあるワイヤートラップなど不可解な物、そして合流した後すぐに弟の荷物を見つけ惨殺されるラミアと。
急にエンジンかけて緊迫感を一気に高めてきます。
トラバサミにかかり怪我したアンリを連れ帰ろうとする通路を戻ろうとすると、案の定と言いますか“空白地帯”への道が地下鉄の振動により崩れ落ちます。
ここのアンリの描写が個人的にですが本当に精神的にくる怖さでしたね。
人が1人しか通れない空間で道がどんどん崩落していくのは生々しい恐怖できっついです。
崩落による生き埋めは免れながらも帰り道を失って“空白地帯”の探索を進めていきソニア達が目にしたのは…
ドイツ語と鉤十字
はい、もうB級お馴染みの存在ナチスですね。
本当毎度のことながら便利に使われるなぁ!
この“空白地帯”はドイツ軍の掩蔽壕で軍事施設であったという中々の設定。(パリの地下にそれってあり得るんですかね?)
そして、罠を仕掛けラミアを殺害したのは終戦を知らずにここで生き続けていたドイツ軍の兵士と、
一応まだ人が相手とはいえ完全に路線が変わってましたね、これは。
人をバラバラにして殺していたり(食料目的として?)なぜか偉い怪力でアンリの足を引きちぎったりマックスを片手で持ち上げてモツを抜いたりなど、
ただの危険思想なだけのスキンヘッド達に追われるのと違って現実離れしたモンスターやゾンビ映画のノリになっていましたね。
独自の味が薄れてちょっと勿体無い気がした。
とはいえこの明らかに異常な緊急事態というのも悪い物ではなく、逃走の際に足が引きちぎられたアンリを置いていくという決断をするソニア達3人のところが生々しくていいんですね。
青春の思い出が残されているビデオを置いて1人残されるアンリと、彼が序盤でラミアに語った、
ソニアとマックスが人生の全てと思っている、彼らがいなくなっても諦めないというのが見事にフリになってしまっているという。
一応ソニア達は助けを読んで戻る気はあったんですが、
それでもやはり見捨てる決断をされ孤独なままドイツ軍兵士にやられたアンリの絶望感はすごかったでしょうね。
ラストはみんながやられる中で1人逃げるソニアが兵士に追いつかれるのですが、
ちなみにスキンヘッドにも出くわしますが、彼らは兵士に敬礼した後殺害されます。
ナチスの信奉者だったんですねぇ。
結局は人間なので殴った後にストンプして顔を潰して倒すという呆気ない終わり方をします。
そして最後に地下の上に伸びる光にハシゴで登り開かない柵から助けを求めますが、誰にも気付かれず最後は悲鳴と共に落下して終わるという、オチなだけに落ちて終了と。
追っ手がいなくなったのだからもっと安全な出口を探しても良かったと思わなくもないのですが、
全く土地勘のない地下という閉鎖空間、更にスキンヘッドやナチスの兵士に襲われるという地上とはルールの違う環境。
こういう状態、経験を経た上でここで新しい出口を探してまた彷徨うのはやはり心理的には無理だったんでしょうね。
そういった意味でもこの映画の最大のホラー要素は特に何もせずただそこに佇んでいただけの空間だったんだろうなと自分は感じましたね。
まとめ
ちょっと思っていたものとは違いましたがいいホラーでした。
地下墓地という舞台で霊とかそういった存在に頼らずホラーとして作ったのは意表をつきつつちゃんと楽しませる内容になっていましたね。
特に空間をホラーとして使うのが上手かった。
非日常的でルールから外れた地下という空間、狭くて圧迫感のある通路と、
閉じ込められるかもしれない、逃げられなくなるかもしれない、道が分からないという不安に着目しているのがいいです。
後半のナチスに関してはちょっと安心感でもあり、陳腐さも感じてしまう部分ではありましたが、
これがラストの余裕のない決断に繋がったとも思うのです結果的にはこれで良かったのかもしれません。
何回も言っていますが閉所が苦手な人には多分きつい映画だと思いますが、不安という部分でホラーを感じたい人なら一見の価値はあるかと思います。
ナチス登場でB級好きも満足出来ますよ。
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