【映画】予想を超えて超真面目で良質ホラー ミンナのウタ 感想

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ミンナのウタ
©2023「ミンナのウタ」製作委員会

夏といえばホラー、というわけで久々に邦画のホラーを見ようと思い新作ホラー映画ミンナのウタを見てまいりました。

昨今玉石混合が激しすぎるジャパニーズホラー、本作も出演している俳優陣などを見るとホラーとしては正直石の部類に入ると思っておりましたが、

まさかまさかの玉側!ファン向けでここまで怖くするのかと思うくらいに面白いホラーでした。

本来の客層はこの映画大丈夫だったのか。

おふざけみたいなネタシーンは無し、タイアップのタレントを派手に活躍させることなく被害者側にしっかりと置く。

そして怖くしたことにより結果として彼らのタイアップシーンが癒しになると、他のアイドルムービーみたいなホラーは見習うべき映画ですね。

正直ネタ感覚で言ったので期待以上と見るべきかある意味での期待外れと見るべきか、感情がバグってしまったのですが良質であることには変わりはない。
というわけでこの嬉しい悲鳴を胸に感想を書いていこうと思います。

あらすじ

人気ラジオ番組のパーソナリティを務める、GENERATIONSの小森隼。
収録前にラジオ局の倉庫で30年前に届いたまま放置されていた「ミンナノウタ」と書かれた一本のカセットテープを発見する。
その後、収録中に不穏なノイズと共に「カセットテープ、届き…ま…した…?」という声を耳にした彼は、数日後にライブを控える中、突然姿を消してしまう。

マネージャーの凛は、事態を早急且つ秘密裏に解決するため、元刑事の探偵・権田に捜査を依頼。
メンバー全員に聞き取り調査を進めるが、失踪した小森がラジオ収録の際に聞いた「女性の鼻歌のような、妙なメロディーが頭から離れない」と言っていたことが判る。
そして、リハーサル中に他のメンバーたちも“少女の霊”を見たと証言。
ライブ本番までのタイムリミットが迫る中、リーダーの白濱亜嵐、凛、権田は捜索に乗り出す。
やがて、少女の霊の正体は、“さな”という女子中学生だということが判明するが、彼女が奏でる
“呪いのメロディー”による恐怖の連鎖が始まり・・・。

一体、彼らに何が起こっているのか?
この先に待ち受ける、
想像を絶する結末とは───!?

公式サイトより
松竹チャンネル/SHOCHIKUchより

おふざけ無し良質ホラーストーリー

正直ただのタイアップ映画でホラーとしてはヌルいんでしょ?と思っていたストーリー面だったのですが、
これがおふざけ無しで良質に進行するいいストーリーでした。

ラジオ局に30年前に届いていたカセットテープそこに収録されていたミンナノウタが流れ始まる呪いともいえる連鎖。

この時点で個人的にはいいじゃんと思える掴みでしたね。

カセットから呪いが始まり、聴いた人が鼻歌を歌うという形でも感染すると、こういう法則性があるホラーは大好物だったので。

そのテープを最初に聴いたGENERATIONSのメンバーが1人行方不明になる、

物凄い怒られることここで白状しておきますが、メンバーの名前覚えられなかったのでここすごい曖昧になります。

そしてその捜索のために元刑事の探偵である権田が雇われると呪いの根源を辿る謎解きの雰囲気も漂わせてくるのです。

ミンナのウタ
©2023「ミンナのウタ」製作委員会

といっても謎解きに関してはそこまで期待する要素ではなかったですね。
正直情報の後出しジャンケンが多いので提示された情報から真実に辿り着くというのは難しいと思います。

不可解な事態が起きる中でカセットテープが原因と突き止め、
その送り主であり偶然にも権田の学生時代の同級生でもあった高谷さなについて調べることになるんですね。

このカセットテープというのがいいアイテムでしたね。

ミンナのウタ
©2023「ミンナのウタ」製作委員会

呪いの根源になるのは勿論なんですが、通常再生の他に逆再生、そしてB面での再生とそれぞれに仕込みがあり、
通常再生では鼻歌、逆再生ではだんだん激しくなる「聴いて!」という声、そしてB面にはミンナのウタというタイトルの意味が分かるおぞましい内容と、
カセットテープという媒体を完璧に使いこなしていましたね。

そしてそれに気付くのが探偵の権田という若い子には分からない要素なので、
おっさんだからこそ気付く要素として彼の配置にもちゃんと意味が出てくるという、捨てるところがないいい人物配置でもありました。

正直な話GENERATIONSは大半が事態に巻き込まれて翻弄され犠牲になる側で、
事態の解決に向かうのは彼らではなく探偵の権田とマネージャーの角田凛となっています。

そして根源となる高谷さなですが、彼女はホラーのシナリオ的には良くある評価の推移をしていましたね。

最初は不慮の事態で亡くなり生前に魂の叫びを聴かせて自分の歌を届け自分の世界に引き込みたいという強い思いを持っていた女性として描かれていますが、
後半になると彼女のヤバさがどんどん浮き彫りになります。

学校で彼女の話を聞いた時は上記の評価になるのですが、
カセットテープのB面を聴いてから一気に評価が覆ります。

ぶっちゃけると最初からイカれている女性です。

B面に入っているのは動物を殺害した時の悲鳴、同級生が落ちた時の悲鳴、そして母のお腹の中にいる弟の音など、
ここで魂の叫びの意味、そしてミンナのウタと付けられている意味が分かります。

要は彼女の鼻歌ではなくB面のみんなの叫びこそがミンナのウタということですね。

ここからの怒涛の展開で歌を聴いたメンバーが彼女の世界へと連れ去られていくと、
最後に彼女の家に再び訪れて見るミンナのウタに最後に吹き込まれた叫びは正直常軌を逸していましたね。

詳しく書くと自分が怖くなるのでボカしますが、要は自分の悲鳴をとある方法で吹き込んでいます。

いや、本当ここだけは冗談抜きでなるべく良い言い方をするならロックすぎるな高谷さんと思いましたよ。

嘘偽りなく言うならイカれてんなと思います。

ここで迫ってくる高谷さなも怖すぎますし、後半の彼女の評価のひっくり返しからの展開は実にホラーしていました。

最後に彼女に寄り添おうとした角田が身を挺したことで満足したのかみんな帰ってくるという大団円となりますが、

ラストで完全に予想通りのオチが待っているんですけどね。

正直ラストのせいで高谷が泣いているのもこれ感動して泣いているんじゃなくて、
死因の都合で汁という汁が出てきていてそう見えてるだけなんじゃないか?と自分は疑っております。

呪いの感染の仕方、ホラーとして徐々に迫る恐怖、そしてカセットテープの多彩な再生方法からの送り主である高谷さなの評価の反転からの攻勢とホラーのストーリーとして実にしっかりしておりました。

特にストーリー上での良いのがおふざけがないことですね。

タイアップありだと怖すぎない様にするためか下らないネタみたいな演出入れるホラーもあるんですが、この映画は終始静かに怖いです。

やはり怖いホラーは真剣なストーリーがあってこそ、この映画は意外にもそれを満たしており実に満足するホラーでございました。

とりあえず夜中に階段見上げたくない。

疑問点もちょっとだけ語りたい

いいホラーのストーリーだったのですが一応個人的に疑問に思った当然ですがあったりはします。

そんな疑問点を羅列したら深読みしようかなと。

まず1つ目は権田が介入することになったのは偶然だったのか?

今回探偵として捜索を任された権田。彼は実は高谷さなの同級生ということが明らかになるのですが、
これは偶然だったのか?それとも高谷さなの介入があったのか?というところですね。

作中だと高谷さなに呼ばれている気がすると権田は語りましたが、ただ特に交流があったわけでもなく本当にただの同級生という立場だった。
となるとそこまで巻き込む理由が深い訳ではないんですよね。

自分の経歴をより深く調べさせるためにとも思いましたが、
別にそれが何かに作用したわけではないのでここは結構謎なんですよね。

ただホテルで姿は見えずとも隣で鼻歌歌っていたシーンもあるので何かこだわる理由はあったのかもしれませんね。

2つ目は角田凛は何で高谷さなに寄り添おうとしたのか。

ラストで角田凛は高谷さなの死の直前に止めようとして突っ込んだらしたのですが、この行動原理が結構謎なのです。

単純に人がいいと取る事もできるのかもしれませんが、作中でも俯瞰してみても高谷さななんて危険人物に入れ込む理由なんて何もないんですよね。

鍵となるのはみんなでカセットテープの裏面を聴いた後に現れたADのシーン、あそこのシーン他の人間はADの姿が見えていたのに角田だけ高谷さなが見えていたんです。

ここを見ると何か感じ入るものがあった部分なのかなと最後のライブでもなぜか高谷さなが持っていたカセットプレーヤー持っているなど彼女は高谷さなから見ると扱いやすい何かがあったのかなと。

最後の疑問で男の子の霊ってやばいのでは?

高谷さな以外でちょいちょい現れて仕掛けてくる男の子の霊。

あの子は言うまでもなく高谷さなの弟なのは間違いないと思います。

ただあの子の年齢を考えるとこれもしかして高谷さなの死後にやられたのでは?と思うんですよね。

高谷さなが亡くなった時に弟は妊娠中、もしくは出産していてもまだ赤ん坊。(流石にミンナのウタでお腹ポンポンしていた時に殺害まではしていないはず)

となるとあの子が少年として霊で現れ、しかも高谷さなと共に現れるのを見ると成長してから霊の高谷さなにやられたのでは?と考えてしまうんですよね。

だから何だと言うわけでもないですがこれを考えると高谷さなのヤバさがより際立つなと思ったわけです。

どれも別に答えが出るわけでもなく妄想、考察するくらいしかないのですが、こういうのを考えるくらいには楽しい映画だったということで。

ジャンプスケアは極力少なめ、演出で魅せるホラー

この映画はよくあるジャンプスケアだけで怖がらせてくるホラーとは違い、ちゃんと恐怖が徐々に迫ってくるという演出で怖がらせてくるホラーでした。

姿は割と最初から見せてはいるんですが、バッと驚かせて出てくるのではなく、静かにそこにいるという演出が多いんですよね。

流石に後半は直接的にガバッと来ますが急にではなくしっかり溜めを使ってから来ます。

静かな音やわずかな気配でじっとりと湿度の高い怖がらせ方をしてくる古き良き日本のホラーの形式でしたね。

正直パリピ(勝手なイメージです)な出演者とファン層に向けられた作品とは思えないくらいの演出でいい意味で期待を裏切られましたね。

内容としては高谷さなという女性が生前、死後共に独壇場とも言える暴れっぷりを見せているのですが、
霊としての怖さと生きている人間の怖さ、この両方を1人でやり切ったのは恐怖の対象として褒め称えたいくらいの存在ですよ。

そんな本作で自分が怖かったシーンを3つだけ抜粋。

ミンナのウタ
©2023「ミンナのウタ」製作委員会

順位としては

  1. ラストの迫ってくる高谷さな
  2. 急にダッシュの高谷母
  3. 自販機の下に潜る高谷さな

これら3つになります。
他にもあるにはあるのですが、これは後ほどでということで。

まず3位の自販機の下に潜る高谷さな。

これ初見だと大分怖すぎませんか?とメンバーの1人が外の自販機に買いに行った時に出くわすという流れなんですが、
首突っ込んで胴体だけで動いているのが怖過ぎる…!

何もない状況なら釣り銭漁りにしか見えないシュールさもありますが、状況が状況なのでともかく不気味でしょうがない。

この後に襲うこともせず話しかけるだけに止めるのも合わさって実にいいシーンでした。

第2位は急にダッシュの高谷母。

カセットテープの真相を探るためにメンバーだけで高谷家を訪れた時に出会す現象でしたが、この映画の中では数少ないジャンプスケアシーンですね。

ただのジャンプスケアだとそこまで評価はしないのですが、このシーンは溜めがちゃんとあるのがいいです。

何度も同じやり取りを繰り返す高谷母、そこから不気味さと雰囲気が変わったところで急にこちらに向かってダッシュと、
分かっていても体が反応してしまうというか溜めがあるからこその身構えさせての演出なので、
ただ急にバッと出てきたり叫んだりするだけのジャンプスケアには見習ってほしいシーンでした。

そして1位はラストの迫ってくる高谷さな。

ラストのメンバーが彼女の世界に連れ去られていく中で高谷家に乗り込んで訪れるシーンですが、こんなんシンプルに怖いわ!

その前の彼女の死因が明らかになるシーン、そして出てくる高谷さなとはっきり言うとゾンビとかモンスター映画的なノリの部分もあるのですが、
それでもこっち来るなぁぁ…!と心の中で叫びながら見ていたシーンでした。

カセットを抱えてそこから声を出して迫ってくる様は単純にただ怖い、
ストーリーの感想でも書きましたがしばらく夜中に階段見上げらんねえよ!と言いたくなるくらいまぁ怖かったです。

他にも印象に残る怖いシーンとしてはカセットテープのB面と高谷さなの死因があるのですが、
どちらも生きている人間が怖いと言う内容。そしてネタバレ満載でもあり、タイトルの回収でもあり、あまり思い出したくないシーンでもあるやつですね。

とりあえず猫好きは注意です。

特にB面再生は怖いです。ミンナのウタってそういう意味かよ…って思わず鳥肌が立つくらいの怖さでした。

襲いかかるわけでもなく映像をはっきり見せるわけでもなく、殆ど音と声だけで怖がらせるホラーとしてはいいシーンではあったんですけどね。

不安は払拭、出演者の演技

ミンナのウタ
©2023「ミンナのウタ」製作委員会

見る前だと間違いなく懸念事項にはなっているGENERATIONSの演技、
こちらは特に何の問題も違和感も感じることなく見ることが出来ました。

少なくともノイズにはならないですね。

ただ役のポジションとしてはどちらかといえば解決側と言うより被害者側なので、
本来この映画で主に狙っていたであろうファン層的にはどう評価されるのかはちょっと聞いてみたいところですね。

個人としてはだからこそいいホラー映画になったと思っているのですが。

ホラー映画なのでGENERATIONSの面々が活躍するという形にするとヒーロー映画の様式に片足突っ込んでしまいかねないため、
ちゃんとホラーに徹してくれたという意味では彼らに対して好意的な感情まで持てるレベルです。

当然タイアップみたいなものですので例えばダンスの練習シーンなんかは普通よりさ間違いなく長尺ですし、
途中で歌詞付きで歌が流れるミュージックビデオみたいな演出もあります。

なおその時映っているのはおっさんの権田な模様。

ラストのライブシーンなんかはかなりがっつり1曲流したりするのでここら辺は完全にファン向けな要素として存在していますね。

自分みたいな人間はファンの方には申し訳ない言い回しをするとこういう部分をいつもならノイズと感じるのですが、
この映画の場合は予想以上にがっつり怖いホラーなので、彼らのタイアップ的な長尺シーンは寧ろ癒しというかいい箸休めとして機能してくれていたなと感じました。

正直アイドルムービー的なホラー映画はこの映画を見習った方が良いんじゃないかなと思うくらい好意的にタイアップなシーンを捉えられるんですよ。

雑に出して叫ばせておけばいいだろという内容より、しっかり怖くすることでアイドル達のタイアップシーンを箸休めとして機能させ、好意的に見させるというのはかなり効果的だと思いますよ。

正直がっつり怖くした上にGENERATIONSの活躍は被害に遭うシーンなため本来見込んでいたリピートしないんじゃない?と思ってしまうのですが、
それでもそれを容認してしっかりと怖いホラー映画の被害者役に徹してくれた彼らにはプロの仕事をしてくれたと個人的には賞賛したいですね。

まとめ

めっちゃいいホラー映画でした。

正直怖さ的な意味であまりリピートしたくないレベルなんですが、
邦画ホラーで久しぶりに大当たりをしかも夏に引くことが出来たので大分嬉しい気分になりました。

人間現金なもので自分の興味の範囲内でいい仕事をしてもらえると好感を抱いてしまうんですよね。

楽曲をいくつかレンタルしてしまいました。

他の役者陣も良い演技でしたし、真面目に作れば邦画のホラーだってやっぱいい!と再確認させてくれた映画として個人評価で今年の中でも上位に入る映画になりそうです。(他の予告見ても多分今年の邦画ホラーで本作超えは無さそう)

©2023「ミンナのウタ」製作委員会


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