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ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ見てきました!
一応自分も前作には熱狂した身ですので、戦々恐々しながらこの喜劇を見てまいりました。
先に結論だけを言っておくと自分は本作に対しては“賛”寄りの立場になりました。
事前情報や評価はそこまで気にしないタイプではあるので(多少のノイズにはなる)賛否渦巻く中でも抵抗も問題もなく見ることは出来ました。
見てみると前作で生まれた“ジョーカー”をどう捉えていたのかのリトマス試験紙のようだった内容。
そこら辺を軸に見た上でどう感じたのか、語らせていただきました。
目次
あらすじ
ジョーカーになった男のその後一
ラストに備えよ
「生まれて初めて、俺は1人じゃないと思った」。
理不尽な世の中の代弁者として
公式サイトより
時代の寵児となったジョーカー。 彼の前に突然現れた謎の女リーとともに、
狂乱が世界へ伝播していく。
孤独で心優しかった男の暴走の行方とは?
誰もが一夜にして祭り上げられるこの世界一
彼は悪のカリスマなのか、ただの人間なのか?
“ジョーカー”をどう捉えるか
かなり賛否が分かれたらしい本作(こういう言い方だと大体否が多かったりする)
これは“ジョーカー”の続編というのをどう捉えたかなよって分かれたのかなと思っています。
前作ラストの展開でジョーカーというカリスマが誕生したのか、それともジョーカーというアイコンが誕生したのか。
これを前者として捉えていた人には本作は「いや、アーサーってこんなやつだから」と現実と冷や水ぶっかけ続けられるような感覚になるのは当然かなと思います。
でも、ジョーカーというアイコンが誕生したと捉えれば本作は納得度が高い続編にはなるんじゃないかなと思いましたね。
今回はとにかくジョーカーが生まれるまで映した前作と違い、ジョーカーが生まれた後のアーサーという人間の価値を写し続けているんですよね。
学もない、金もない、親すら最早分からずアイデンティティが完全に崩壊している。そんな道化にもなりきれない男が空回りし続け滑り散らかす喜劇なんですよ。
そもそも前作を見ていたらアーサーは無敵の人になってしまったってだけでカリスマが伴うような、というか保ち続けられるような存在ではないのは分かるんですよね。
人のお世辞を間に受けてコメディアンを目指し、辛いことは辛いと思い、そんな中で得られた僅かな優しさには兎に角染み入ってしまう。弱者…なんて単純、簡単なカテゴリ分けは嫌いですが、一般的にはこのカテゴリの存在ですし、思考自体はよくいる人でしかないんですよ。(行動に移すかは別の話です)
例えば証人喚問で呼ばれた共に仕事をしていた時に優しくしてくれたゲイリーなんかは本当最後までアーサーは自分の中から切り捨てることが出来てない。
あんだけ討論の中で罵倒したりしても、ゲイリーがアーサーが自分に優しくしてくれたと自分のことを見てくれる人であり続けたから、その直後の妄想でゲイリーはこっそりアーサーを祝福する側として出演させていますしね。
そんな普通の人間が必死に自分の死刑がかかった裁判で自己弁護をしてカリスマを演じようとしているんですから、本作は悲しくておかしい喜劇なんですよね。
アーサーは今作の中では必死にカリスマを保ち続けようとしましたが、やはり無理は瓦解する物。
そして自分はジョーカーではないと吐露します。彼が見て欲しかったのはジョーカーという虚構ではなくアーサーという自分自身。
前作で自分の人生を形づける物を何もかも失ったアーサーに残されたのは無敵の人として行動した結果のジョーカーだったんだけど、みんなに見て欲しかったのは辛く生きていたアーサーという自分自身だったんですよね。
で、そんなアーサーをカリスマと見て熱を浮かしたのガガ演じるリーが接触しているわけですが、彼女が前作のアーサーをカリスマと見た人の代弁者に近いのかなと。
アーサーに嘘をついて近付き、アーサーとは似ても似つかない金も学もある存在。そんな彼女がアーサーに見るのはアーサーではなくジョーカー。
こんな風に都合良くアーサーを見ている姿こそ前作で熱に浮かれたファンと同じ存在なのだろうと思います。
だからアーサーがジョーカーではないと吐露したら完全に興味を失い、あっさりと離れていってしまう。彼の存在が面白くなかったら冷めてしまう。
正直ジョーカーという存在を消費するエンタメとしか見ていなかったんだろうなと。
そしてもう1人ジョーカーの熱に浮かされた存在がラストで彼を刺し殺す謎の囚人。
彼はいわゆる過激派ファンですよね。
すげえ安易な言い方と括りをしてしまいますが、ジョーカーが解釈違いだったから殺してしまおうという反転アンチみたいなもんです。
リーとこの囚人でアーサーという個人への興味のなさとジョーカーというカリスマへの気持ちをがっつりと代弁しているんですよね。ジョーカーでなくなったアーサーには価値もなくなったかのように。
そしてそんな男がアーサーが倒れて息絶える後ろで自分の口をナイフで切り開いていく、続きはしないでしょうが間違いなく彼が新しいジョーカーとなっていくのでしょう。
もしくはこの2作の“ジョーカー”という存在への考え方だと彼もジョーカーというアイコンが漂い続ける1つの通過点に過ぎないのかもしれません。
どちらにしても本作はアーサーという人間自体に焦点を当ててはいましたが、ジョーカーというアイコンはこれからも継承されていく、間違いなく“ジョーカー”の続編ではありましたね。
で、この賛否が分かれた評価となっている中で自分の中の評価ですが、個人的には“賛”寄りです。
これは自分は前作でジョーカーというアイコンが誕生したと解釈したので、本作のこの流れは当然の帰結かなと納得感がありましたからね。
でも、カリスマと見た人達が怒るのも分かるんですよね。
アーサーという人間を見たらこんな普通の人がカリスマになんかなれないよという夢も希望もない考えよりも、こんな目にあった人間が悪のカリスマになるという、言い方正しいか分かりませんが、報われる存在であってほしかったという気持ちを映画という創作に求めるのは当然だと思いますし。
でもなぁ、ゲイリーとか弁護士とか思惑はどうであれ、確かに個人として見ていてくれた存在はいたんだよなぁ。そこよりも“自分”に傾倒してくれて表面上優しいだけのリーを選んでしまうあたりがアーサーという人間の本当に悲しいところだなぁと思ってしまいますね。
そこを含めての俯瞰して責任取る必要も被害に遭うこともない観客から見たら喜劇ってことなんでしょうね。
で、映画として面白いのか
まぁ本作のストーリーを納得性高い物として“賛”寄りと言いましたが、本作が映画として面白いのか?と聞かれたら、正直なところ“否”寄りになってしまうのが本音です。
今作は裁判と刑務所を行き来するだけの話で抑揚が少なく淡々とアーサーの空回りっぷりを見ていくような内容なんですよね。
なので映画として面白いかと言われたら言葉に詰まってはしまう。
ただこれも当然っちゃ当然のことでだって今作は凡人が凡人であることが確認するだけの話なんですから。カリスマの話でもヴィランの話でもヒーローが都合良く倒されるわけでもない。
なら話が凡人相当の内容になるのも意図的とまでは分かりませんが、これも当然の帰結と言えるでしょう。
その凡人に背負わすには荷が重い、間を持たすために入れられた分かりやすい盛り上がりどころがミュージカルという形だったんだと自分は思っています。
ミュージカルの説明口調を歌にするやり方はアーサーの心情を理解させるのに持ってないですし、ガガだって起用しているんだからやらない理由はないですよね。
ちなみに自分はこのミュージカルは嫌いではないです。
ひたすらに空回りしながらもはっちゃけている内容が本当に見ていて恥ずかしくてアーサーという人間にとても合っていると思いましたから。
ただこのミュージカルを持ってしても笑いどころにはなれど、映画としての面白さになるかと言われたらNOかなと。
でも前作の特大ヒットからの期待と予算をつぎ込んでこの話を作れるのはすごくはありますよね。
観客の求めに応えた作品を出すのか、それとも作家性を重視して半分以上に冷や水を意図的にぶっかけるのか。
興行作品として世に出す以上は何が正解になるのかは分かりませんが、結構エンタメの本質をつかれているようで今作はそこにも一石投じられたと思って考えてみるのも少し面白いんじゃないかなと思っています。
まとめ
映画として面白いかは別として作る側の熱はあり、それとは逆に観客はアーサーやジョーカーに冷めていくという現実巻き込んだ構成が面白かったです。
こういう客よりも前作の熱狂に対して作るというのを前作の大ヒットを受けた上で注ぎ込まれた莫大な予算で作るっていうのは色々なところに喧嘩を売る相当な覚悟で作ったんだろうなと何となく想像出来ますね。
そして全編通じての凡人がカリスマ演じて空回りして滑り散らかす滑稽さ、でも観客だけはアーサーを知っているので悲しさも見えてくる、喜劇として見れば相当に上等な喜劇だったと言えるでしょう。
もちろんそれを演じたホアキン・フェニックスの体含めて役作りと演技は圧巻。というかこれが無かったら喜劇に至らずにただの駄作となって本当に悲劇になりかねませんからね。
映画として好きか?と言われたらうーん…ってなりますが、構成として好きか?と聞かれたらうん!と答えられる不思議な魅力のある映画でした。
何というか自分の中では製作陣の覚悟が面白い映画だったのかもしれません。
でも、正直そんな自分でもリピートまではしないと思います。
2周目以降に苦戦しているというのは多分“賛”寄りでも同じように思っている人が多いからだと踏んでいます。
やっぱ映画としての面白みが足りないとリピートまでは至らないんだよなぁ。
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