【映画】シビル・ウォー アメリカ最後の日 今年1番見ていて疲れ切った映画

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製作国

イギリス、アメリカ

監督
アレックス・ガーランド
脚本
アレックス・ガーランド
出演者
キルスティン・ダンスト
ケイリー・スピーニー
ワグネル・モウラ
スティーヴン・ヘンダーソン
ニック・オファーマン
ジェシー・プレモンス
ソノヤ・ミズノ
カール・グルスマン

シビル・ウォー アメリカ最後の日(原題:Civil War)見てきました。

最初はスルー予定だったんですが、周りの評価の高さ、そして翻弄されていく様がなんか自分好みになりそうなので鑑賞を決意いたしました。

まぁあまり政治的な視点やアメリカの現地にいる生の知識や感触などはふんわりとした物しか持ち合わせていない自分みたいな人間がこの手の映画を見るとはてさてどうなるのか。

色々な意味で楽しみに鑑賞しに行きましたよ。

あらすじ

「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」
連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている——」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていくー

公式サイトより
Happinet phantom

ロードムービー形式で見せる混乱

開始時点で内戦状態となっているアメリカを記者4人が大統領取材のためにワシントンに向かうロードムービーのような構成だったんですが、まぁこれがしんどい!地獄のようなロードムービーでしたね。

そもそもこの映画、解決なんてものはなく、もっと言うなら何でここまでなってしまったのかなんて原因や経緯、目的すら最早分からなくなっている状態。

だからその混乱にかこつけて好き放題やっている奴、自分の中で作った線引きで行動している奴が出ているという地獄のような状態なんですよね。

なので目的地に近づくまでの間にとにかく事態というものに翻弄される。

そしてその1つ1つが内に抱えてはいるけど取り繕うべき物が1枚剥がれ落ちただけで露呈される凶暴性という物が出ているようでこの怖さはマジもんでしたね。

やっぱこの分かりやすい物が失われているというのが怖いんですよね。

何かあった時に個人は翻弄され続けるというのが答えでその現実を常に提示し続けている。映画のようなヒーローなんて現れないし、何か1つを防げば全てが終わるなんて都合のいいことも起きない。

そんな映画を見ているのに人ごとみたいに娯楽性を求めて、そして実際に楽しいと思えてしまい、興奮を覚えてしまうのも振り返ると己の感覚を突きつけられてるような感覚にもなるんですよ。

それこそ話題になりまくっている「どの種類のアメリカ人だ?」のシーンとかね。

あそこは間違いなくこの映画の社会の混乱によって生まれたキモであり、見どころの1つではあると思うんですが、話題になりすぎてネタにして消費されるのは、この映画の枝葉だけを1つ切り取って分かったような気になる怖さもはらんでいるなとと思うんです。

ただこれはあくまで枝葉、強盗を目論んだ相手を拷問している人や平穏の中にいることを決めて無関心に身を置くことを決めた人々(自分だったら多分ここに身を置きます)、それこそ主人公達みたいに何か使命感を持って中央に向かったり、戦争に参加する人もいます。

これら提示された存在の中で自分がどこに身を置くのか。そういうことにも思いを馳せる映画ですから、1つの枝葉をネタとして消費はやっぱ危険性のある行動だなとも考えてしまいますね。

と言ってもこう思えることもネタにすることも、それはそれでまだ平和で幸せという証拠でもあると思うので、この感覚を維持出来るように頑張ってねってことでもあるんでしょうが。

でもこの映画の原因や経緯で分かりやすい物を出さないというのは大事な部分だとは確かに思っています。

結構明確な答えが欲しいという人もいると思うんですが、でも分かりやすい原因の提示は分かりやすい解決法の提示にもなりがちだと自分は考えているんですよ。

確かに三期目の大統領とかFBIが解体されたとか何となく引鉄となった部分は分かるんですよ。

でも実際世の中の事態ってそう単純なものじゃないじゃないですか?

何かが起きる時って今までに蓄積された物が最後のきっかけという引鉄で爆発なんですが、どうしてもその最後のきっかけだけを見てしまう事も多いです。

それこそ実際の事件でもなんでこんなことでと引鉄だけを見てそれまでに込められてきた弾の方を見ない人の方が殆どだと思います。

少し例えを矮小にし過ぎてしまいましたが、まぁ何が言いたいかと言うと、自分はこの明確な原因の提示をしなかったのは支持するということです。

報道としての無力

この映画の記者4人のうちリーとジェシーというベテランと若手のペーペーの戦場カメラマン。

こういうマスコミという立場なので映画的な行動の振る舞いは何か政治的な主張を持ってと思うところですが、映画そのものには当然主張はありますが、作品内での彼女達はあくまで“事実”を報道というかフィルムに収めていく形にはなっていたかなと思います。

リーに関してはその主張のない“事実”を見せることでこの内戦のような事態が起こらないようにという理念を持っていました。過剰な主義は持たずとも信念はあるといった感じでしょうか。

そのホワイトハウスでの攻防によって自分の行動理念全て崩れ去ったかのように何一つ行動できなくなるリーはやはり印象的でしたね。

今までの道中では拷問を見ても死亡する人を見ても気丈に保ちシャッターを押し続けた人間がここでぱったりと止まるんですから。

それと同時にジェシーがリーとは逆にどんどん取り憑かれたかのようにシャッターを押していく姿。

サミーが死んでも、リーのこれまでの活動が無になっていくような光景を見ても、こうなる姿。

ジェシーはリーにとって自分が仕事を始めた年と同じ道を歩み始めたかつての自分と重なる存在となっていました。

リーにとってはここのジェシーはかつての自分を俯瞰して見た存在となっているんですよね。

この時のリーは自分の行動理念が崩れ去った衝撃と共に仲間が死んでもこの光景を見ても取り憑かれたように夢中になっているジェシーの姿というのは、そこらの野次馬と自分はもしかしたら変わらない、そういった衝撃もあったんではないかなと思いますね。

自分の理念が崩れ去った無力さを感じた日にジェシーを庇い世代交代と言わんばかりに死亡するリー。

これを見るとこの先のジェシーを待つ未来というのもどこか伺いしれるようでやはり後ろ暗い気持ちになりますね。

それにしてもリーの理念というのは難しいですよねぇ。

戦地で確かに起きている事実の光景を淡々と見せるというのは確かに人の心に影響を与えるものではあるんですが、そういう写真というのは得てして自分から興味を持つという能動的な人々にしか届かないですからね。

本来ならそこに興味を持たない無関心な人々にこそ届かなくては意味がないのに写真の強さによりそれが叶わない。(いや、アメリカだとどうかは分からないんですけど)

しかも能動的に興味を持つ人間の中にはスラッシャーポルノとして娯楽として消費する者もいるから、まぁ報道が持つ力っていうのは難しいですよね。

ただ今回映画という媒体を通して(例え野次馬根性がどこかに潜んでいたとしても)その理念やら報道としての姿勢というものを見せたのでそこはやはり無駄にしないように何かを感じ取らなければいけないなとは自分も思っています。

娯楽媒体において、というか昨今はネット全体において悪になりがちな報道というものですが、確かにある意義の側面の1つを改めて伝えたのは意味のある姿勢だったんじゃないかなと。

まとめ

まぁ一言でまとめると見終わって本当にしんどくて疲れ切る映画でした。

はっきり言うとやっぱり自分の中ではどこか遠い話で知識としては頭にあっても実感の伴う題材ではなかったと思います。

それでも生々しさのある形で作られた映画でしたから、やはりここからは知識ではない何かを感じ取れたような気もします。

とはいってもこの生々しさも多少は暈しているのは確かですが、本気でやったら性暴力や核使用なんかも盛り込んでもおかしくないのに、ここはあえて避けているのは1つのバランス感覚でもあり焦点を絞りたいという思いもあったんでしょうね。

色々と主張のある題材の映画でしたが、政治的な部分ではなく戦争体験としてもクオリティはちゃんと高いです。

特に最後のワシントンでの攻防は生々しくもエンタメしていると思います。(これをエンタメと思うのが自分の良くないところなんだよなぁ)

人の中に潜む暴力性、戦争の悲惨さがありながらも突き進んでいく姿と確かに疲れる映画。

嫌なものばっかり見えてくる内容ですが、それがこの映画を見た正しい感想であり、そしてそれは見てつまらなかった後悔したという方向性には向かっていないので間違いなく完成度は高い映画だったと思います。

まぁでも本当に自分がこんな事態に直面したらどうなるのか…やっぱ「どの種類のアメリカ人だ?」と尋ねられないように無関心の立ち位置に身を置こうとするんだろうなぁ。


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