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製作国
韓国
監督
パク・イウン
出演者
キム・ヘユン
パク・ヒョックォン
イェソン
今回は韓国の社会派な映画、ブルドーザー少女(原題:불도저에 탄 소녀/The Girl on a Bulldozer)の感想です。
正直自分はタイトル見てこりゃおバカな映画か痛快リベンジアクションだなと甘く見ておりました。
ですが、蓋を開けてみたら重い…あまりにも重すぎる….
ただ一家族、1人の少女の生まれや環境による苦境、金を持った者からの搾取、それらを突きつけられる本当韓国映画らしいエグめな内容です。
かなり好き嫌い分かれる主人公の少女なんですが、
最後にタイトルの通りに行う、その少女の声無き叫び。
これを見て何かを感じ取れる物はきっとある映画だと思います。
一応言っておくと紹介などにある痛快さはまるでありません。
ジャンルはドラマで上映時間は約113分となります。
目次
あらすじ
悪をなぎ倒せ 弱者庶民 VS 権力者 理不尽な韓国社会にひとりの少女が殴り込み!怒れ!狂え!雄叫びを上げろ!!闇夜をブルドーザーが暴走する!!
Rakuten TVより
腕にドラゴンのタトゥーがあり、何かと喧嘩っ早い少女ヘヨン。母亡き後、ギャンブル中毒の父の代わりに幼い弟の面倒をみていた。ある日、父が盗んだ車で事故を起こし、意識不明の重体に。被害者から巨額の和解金をつきつけられ、さらには住まいも奪われてしまう。しかし、その事故の裏には信じがたい事実が隠されていた。格差、不正、虚偽・・・こんな世の中は許せない!怒り狂ったヘヨンはブルドーザーに乗り、理不尽な社会をなぎ倒す!
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登場人物
・ヘヨン
腕に龍のタトゥーを入れた19歳の非行少女
父の店を手伝っているがギャンブルを繰り返す父には呆れている
更生プログラムの職業訓練としてブルドーザー講習を受けている
・ク・ボンジン
飲食店“海賊チャンポン”を営んでいるへヨンの父
ギャンブル中毒
かつてはコリア設備貿易に勤めていた
ある日盗難車による人身事故を起こし脳死状態となる
・ヘジョク
へヨンの弟
・チェ・ヨンファン
コリア設備貿易の会長
現在は選挙活動中
あまりにも重々しい苦境のドラマ
父が盗難車で起こした事故により様々な出来事が明るみになっていき、その苦境と真実にもがき抗う少女のドラマが展開される本作。
ギャンブル中毒な父のいる環境で非行を繰り返している少女へヨン。
実家である飲食店では父ボンジンが火傷を負ってしまう。
治療のために病院に行くと保険が切れており、更にカードは限度額で医療費は払えないという始末。
更には財布の中からギャンブルの後が見つかりへヨンは呆れて弟のヘジョクと共に帰路につく。
構成支援プログラムとしてブルドーザー講習を受けている最中で父が事故を起こしたという電話を受けて病院に向かうへヨン。
意識のない父を前に警察から聞かされたのは父が盗難車で飲酒運転中に人身事故を起こしたこと、
そしてその前に盗難車の持ち主の元で暴行事件を起こしていたという経緯であった。
父のスマホや自身のスマホに身に覚えのない電話がかかってきている中で帰宅すると、なぜか父が店を売ると約束して店を差し押さえようとする人物達がいた。
へヨンにとって見に覚えのない話に彼らを追い出した後に急ぎ事情を聞こうと病院に行くと父ボンジンが緊急手術を受けるも脳死状態となるボンジン。
へヨンは失意の中で事故現場に向かい違和感を覚える。
被害者の病室に向かいなぜ雨も降らず横断歩道もないのに車道で轢かれたのか被害者を問い詰めるへヨン。
要領を得ない話の中被害者の1人の包帯を解くとその手には何の怪我の跡も残ってはいなかった。
警察にそのことについて話しても保険金のためなら良くある話として一蹴されてしまう。
そして父が事故前日に死亡保険を復活させており、かつて勤めていたコリア設備貿易で暴れた後に会長の車を盗み事故を起こしたという、
これらの判断材料からへヨンが兆候を見逃していた自殺として処理される事件。
事故直前に起こしていた暴行事件についてコリア設備貿易のヨンファン会長の元になぜボンジンが直前に現れたのか聞きに行くへヨン。
何も聞き出すことは出来ずに帰宅したへヨンだが父のスマホから父とヨンファンとのやり取りを発見する。
そこには会長と揉めた音声が店の契約に払う金が払えなかったこと、
そして店の2階増築の際にヨンファンからの提案で増築したにも関わらず、
それは口頭でかわした約束であったため契約書ではその費用である5億ウォンは父が負担するということになっていたという事実であった。
真実を知りヨンファンの元に再び乗り込むへヨン。
音声を証拠に父への謝罪を求めるがスマホを奪われて破壊され証拠は失われてしまう。
金持ちによる搾取と個人で何度も立ち向かっても跳ね返されてしまう現実。
そして少女は最後に体1つで大きな叫びを上げるのであった。
後半に向かうまでのあらすじは大体こんな内容。
正直口頭では説明できないし感じ取れないくらいにこの映画は重いです。
落ち度が無いかと言ったらありありなんですが、それにしてもって内容です。
社会としての搾取される側とする側をここまで汚らしく嫌らしく腹立たしく描いていたのは流石は韓国映画と言った内容となっておりましたよ。
えぇ、とてもダメージを受けましたとも。
釣り合わない理不尽
この映画、正直主人公のへヨンも父のボンジンにも落ち度は割とあります。
父ボンジンは悪いです。
そもそもギャンブル中毒でへヨンに負担をかけていますし、
そして店でのヨンファンとの契約も口頭でやるなんてあまりにも甘い、
そして知識が無いことを利用されて口約束ではなく契約書の方で結局5億ウォンの借金という取り返しのつかない苦境に立たされてしまうのですから。
そしてへヨンも悪いです。
非行の繰り返しは当然悪いですし、それを繰り返していたら周りも助けようとはなかなか思えません。
父のことだって呆れるのはしょうがないことではありますが、でも見えていなかった部分もやはりあるのです。
しかも非行中の喧嘩が弟にも災禍を招きますし。
でも彼らの落ち度が今回の理不尽な苦境と釣り合いが取れているかと言われたら自分は断じてNOと言います。
確かにボンジンがかわした口頭での約束というのはあまりに迂闊です。これは知識の無さから、もしくは人と人との関係性という物を信じすぎた結果ではあるでしょう。
この苦境を引き込んでしまったのは間違いなくボンジンだしそれは確かなんですが、
それでも富裕層によっていつか誰かが引かされる理不尽なババを引いてしまったようにしか思えないんですよね。
へヨンも真実を追求しようというには迂闊もいいとこです。
証拠の音声を持って乗り込むのはいいですけど、あっという間に側近にスマホを奪われて折られるなんてまぁはっきり言って考えなしです。
上の口約束もそうですが、何というか知識の無さ、こういう浅はかなところにもある種の貧富の差による反発招く言い方だと教育の差という部分が出てしまっているなぁと感じました。
それを利用されているとも言えます。
もう何かね。生まれや社会から襲われる選ぶことが出来ない理不尽さがあまりにきつい話でしたよ。
また元凶とも言えるヨンファンが嫌な描き方されてるんですよ。
ボンジンに対して口約束で自分が金出すと言っておきながら契約書作っていたりとかね。
更には証拠の音声を処理した後のへヨンへの態度。食事をぶっかけるっていうのは屈辱与える中でも上位の行動だと思っているのですが、憎たらしくこれをやってくれる訳ですよ。
それでも富裕層な彼は多くの人生を握ることが出来る。
途中で出てくる「じっと耐えて身の程を知ってみんな生きている」この台詞に社会の縮図を感じましたわ。
最後の叫び
理不尽の果てにあるのはやはりリベンジ…なんですが、この映画のはそこまでスカッとはしません。
何と言ってもこの映画はタイトルに反して社会派なので個人が悪を倒すなんて英雄的な展開は与えてくれないのです。
主人公のへヨンがただの少女なので襲いくる様々な不幸になんて対処し切れる訳がないんですよね。
しかもその中には自分由来の物があるのだからそれもまた苦しい。
父のボンジンはギャンブル中毒だし火傷を負うし保険は止まっているしそして事故によって脳死にまでなってしまう。
その事故の真実には轢かれた被害者は保身優先で全てを話してくれないし、
もっと大きな店の借金の部分では富裕層というとてもら抗えない存在に押さえ込まれてしまう。
そして弟のヘジョクは自分がトラブルを起こした相手に毎日何度もリンチされていたということまで明らかになると。
一体彼女が何をした?
いやヘジョクの件は確かにへヨンが悪いんですよ?
でもそれ以外の苦境は本人は何も悪くない。
しかも父の事故にしたってそもそもの原因と被害者の嘘には一切の関連がない、
つまり全く無関係なのに不幸を増やしに来ているんですよ。
腕に龍のタトゥーを入れて必死に虚勢を張って生きていても、父の事件について抗っても個人で出来ることには限界がある。
社会派映画故にその限界をとことんまで突きつけてくるんです。
そんな人間に出来る最後の抗いと打開策というのは体1つで捨て身で暴れ回るくらいしかないんだろなぁって…もう本当見ていて苦しい映画ですよ。
爽快感もない、解決にもならない、でもそれでも叫ばざるを得ない、その手段がブルドーザーによる破壊。これを用いて自分の家とヨンファンの家を破壊するという無言の叫び。
こんなことをしても何もなりません。これで世間にヨンファンが糾弾されることもないです。ただ暴れて自分が撃たれて終わりです。
でもそれでもへヨンは身一つで最後まで抗い、声無き叫びをあげたのです。何もならなくても。
それは世間に対してではなく自分を納得させるための行動でもあったかのように自分は思うのです。
抗えないことは現実として世の中にはある。
だからこそそれを納得して飲み込むには人それぞれ何がしかの通過儀礼を行わなければとても飲み込めない。
へヨンにとってはブルドーザーを用いて叫ぶことがそれに値することだったのだと自分は思います。
だからこそラストで憑き物が取れたように生きていき、釈放後に父の事故による被害者からはっきりとした真相を聞くことが出来、
そして父の遺した保険金が最後に支払われる。
社会派故に個人が抗うことへの限界は現実的に見せていましたが、それでもその中でやれる範囲の救いを最後に見せたのはこの映画の優しさなのでしょう。
ご都合主義に感じて気に入らないという人が出そうなラストだとも思いますが。
まとめ
いやー、いい意味でタイトル詐欺な内容でしたね。
貧富の差や生まれなどによる抗いの限界、そしてそれでも抗うなら捨て身になってしまう。
個人の限界の怖さとも言えますし、無敵の人が作られる怖さとも言える、いい社会派ストーリーでしたよ。
へヨンとボンジンに関しては好みが分かれる描写だと思いますが、このくらいの方が生々しくていいと思いますね。
まぁでも重い映画でした。
BGMを全然流さない、モノローグなんかもないので常に重々しい。
だからこそBGMが流れる数少ないシーンが印象的だし、大事にしたいシーンなんだなって伝わってくる訳ですが。
一応実話をベースとした話だそうなので国は違えど身近に感じるべき映画でもあるんじゃないかなぁと思いますね。
うん、でも見応えあって自分の中では見て良かったと間違いなく思える内容。
スカッと感はないですが救いはある、このテーマでやれる範囲の優しさが見れるのも好みでした。
個人的にはオススメです。
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