【映画】エルダリー/覚醒 感想 あー…このオチはいけません!

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(C)2022 PERSON’S FILMS / LA DALIA FILMS / ANTÍDOTO FILMS

製作国

スペイン

監督
ラウル・セレソ
フェルナンド・ゴンザレス・ゴメス
脚本
ラウル・セレソ
ルベン・サンチェス・トリゴス
ハビエル・トリガレス
出演者
ゾリオン・エギレオル
グスタボ・サルメロン
パウラ・ガジェゴ
アイリーン・アヌラ
ホセレ・ロマン

 温暖化、異常気象、少子高齢化、それによって生まれる老いや老人への嫌悪。
 こういった社会問題を絡めて老いと老人からの反撃というアプローチの視点がいいホラーだった…
 と思ったらオチで台無しだよ!!!

 今回はアマプラにて鑑賞の映画、エルダリー/覚醒(原題:Viejos/The Elderly)感想。

 少子高齢化、温暖化、介護問題、そんな社会的問題を絡めた、老いへの嫌悪と老いからの反撃、といういいアプローチからのホラー映画。

 そんな風に思っていた時期も私にはありました。

 とにかくオチがすごい!オチがあかん!オチでもう終わりだよ!と、オチだけで評価が急降下する映画でした。

 ジャンルはホラーで上映時間は約96分となります。

(C)2022 PERSON’S FILMS / LA DALIA FILMS / ANTÍDOTO FILMS

あらすじ

人類は滅亡する。老人たちが暴れ出す――
記録的猛暑のスペイン、マドリード。 気温は上昇を続けている。ある日、ナイアの祖父・マヌエルの目の前で祖母のロサはバルコニーから飛び降りた。その日を境にマヌエルの様子はおかしくなる。事故のショックだと悟った息子のマリオは妻の反対を押し切ってマヌエルとの同居を試みるが容体は日々悪化し、ついには家族に殺意を向けるのであった。一方その頃、ついに最高気温を記録した街は奇行を繰り返す老人たちで溢れかえっており……

Rakuten TVより
映画配給エクストリーム

この映画を配信している配信サービス

※2025年3月19日時点

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登場人物

マヌエル

マリオの父

記録的な猛暑の中で前触れもなく自殺した妻ロサの死によって心を痛める

ナイア

マヌエルの孫

祖母ロサを失った祖父マヌエルを心配する

母が亡くなってから父と再婚したレナとは打ち解けていない

マリオ

マヌエルの息子

母を亡くした父を心配して、レナの意見も聞かずに半ば強引に同居を申し出る

レナ

マリオの再婚相手

現在妊娠しており、介護も伴うマヌエルとの同居には反対する

ざっくり概要

 ここからはいつも通りに途中までのざっくりとした内容を。

 巨大な暖気団により観測史上最高の温度に達する見込みとなったイベリア半島。

39.9℃

 この日に日に上昇していく気温の中、マヌエルの妻であるロサが前触れもなく飛び降り自殺した。

 急な死に悲しみにくれる家族達、マヌエルの息子であるマリオは父を心配して同居をしないかと提案する。
 しかし、マヌエルはマリオの再婚相手のリサに歓迎されていないとして断り、1人電池を買いに行くのだった。

 不況により仕事を失っていたマリオ一家。

 彼らは引越し先のマンションで近くの老夫婦に挨拶するが、素っ気ない態度を返されてしまう。
 引っ越しが落ち着いた後、勝手に同居の話を進めるマリオにリサはロサの死因が本当に自殺だったのか疑う。
 自身の子の出産も控えていた彼女は将来の赤ちゃん部屋を義父に使わせること、そしてそもそも同居自体に反対をしていた。

 家も職も安定しない現状、その中で介護までとなるとこちらの方が破滅してしまうと…

 しかし、マリオはそれでも独りになった父を見捨てることは出来ず、更に娘のナイアもそれに同意しマヌエルとの同居が決定する。

 後日マヌエルを迎えに行くマリオとナイア。

(C)2022 PERSON’S FILMS / LA DALIA FILMS / ANTÍDOTO FILMS

 マヌエルは鏡とスーツケースという最低限の荷物だけを持ち、彼らの同居が始まるのだった。

42.7℃

 同居を始めたその日の夜。物音に目を覚ましたレナは家の中を確認するが、目に入ったのは呆然と座り続けるマヌエルの姿のみ。

 その姿に不安を覚えたレナは改めてマリオにマヌエラの部屋を確認するように念を押すのだった。

 翌日ロサの葬儀が行われたが、その最中にマリオの娘ナイアはどこかから自分を呼ぶ声を聞く。
 声と同時に目に入った人影を追いかけるナイア、そこにいたのは死んだ時と同じ姿の祖母ロナの姿だった…

 思わず悲鳴を上げるナイア、周囲を見渡すとそこは葬儀中。
 いつの間にか白昼夢のようなものを見ていた?不安に覚えながらも心配する家族の前で平静を保つナイア。

 祖父マヌエルに祖母の話を聞きながら帰路につくナイアとマヌエルだったが、マヌエルは急に用事があるといいナイアだけを先に帰らせるのだった。

44.2℃

 レナに言われた通りにマヌエルの部屋を訪れるマリオ。腐った食材、散らかった部屋、それを見たマリオは掃除しながら部屋を探索する。

 母が飛び降りたベランダを確認し、掃除をし終えた部屋の写真を取るマリオ。
 その時部屋がノックされノックの主だった老婆に挨拶をするが彼女は不可解なことを話始める。

(C)2022 PERSON’S FILMS / LA DALIA FILMS / ANTÍDOTO FILMS

 「お母様が言うにはあなたは戸締りを忘れがち」だと…

 不気味な物を覚えながらも部屋の写真をレナに送信するマリオ。何もなかった代わりに不気味な隣人にはあったことを伝えて帰路につくのだった。

 帰宅したマリオとナイア、しかしマヌエルがいつまでも帰ってこないことを知ると、2人は再び外に出て彼を探しにいく。

 残されたレナは先ほど送られてきたマヌエルの部屋の写真を確認する。
 そのうちの1枚である鏡が映った写真に違和感を覚えて拡大しようとするが、その瞬間、無言の電話がかかってくるのだった…

 マヌエルを探して彼の部屋まで訪れるマリオとナイア、そしてナイアの友人であるホタ。

 マリオはマヌエルの部屋を探索、ナイア達は周囲の様子を確認する。

 再び部屋を訪れたマリオは先ほどは開かなかったタンスが開いていることに気付きその中を調べる。
 その中には燃やされたロサの写真、服からは“聞こえる”と書かれたメモ、更にタンスを調べるとタンスに直接“聞きたくない”と描かれているのを発見してしまう。

 その頃、ナイア達は近くにいる車椅子の老人に呼ばれ、何かを知っているかもしれないと思い彼の跡をついていく。

 立ち止まった老人は探しているものは奥にあると言いその言葉に従いナイアは奥を調べようとするも、その時急に老人がナイアに掴みかかる。

 老人とは思えない力で彼を引き剥がさないナイア、それを見たホタも加勢するが老人は今度ホタの頭に噛みついて抵抗する。
 何とか老人を引き剥がした2人は急いでその場から逃げるが取り残された老人は車椅子から確かな足取りで立ち上がり1人佇むのであった…

 不可解なメモを見つけたマリオ、老人に襲われたナイア達、合流した2組だったがその時レナから電話がかかってくる。

 その内容を聞いた彼らはすぐさま向かう。そして向かった先に飛び込んできたのは屋上の縁に立ち続けるマヌエルの姿だった。

 何とかマヌエルを止めたマリオは病院に彼を見せる。するとマヌエルは珍しいタイプの認知症かもしれないと言われ、ピック病と診断される。

 症状は周囲の物事を正常に捉えられなくなる、進行するに従い幻聴や幻覚などの精神症状が現れる、場合によっては暴力的になるなど、すぐさま入院などはさせずに鎮静剤の処方で様子を見ようという医師。
 だがこれはあくまで経過観察であり、施設への入所をマリオに打診するのだった。

47.4℃

 連日のマヌエルの奇行にレナはたった2日でこの有様であり、このままでは家が滅ぶとすぐさま彼を施設に入れることをマリオに要求する。

 その頃、マヌエルは部屋の中で1人基盤をいじり、その基盤をカッターナイフの刃で開いた自分の体に中に押し込めていた…

 更にその一方では寝ていたナイアは再びロサの幻覚を見る。

 そして夜、マヌエルは食事中に急に口を開き宣言するのであった。

「明日お前達は死ぬ。私が殺す」と…

途中までは良かったのにこのオチはいけません!

 この映画のオチ、これは本当に良くないです!

 久しぶりに話が進行していくごとにこれはやめてくれよ…となる展開を味わってしまいました。

 どんなオチかは最後に話すとしまして、何でこんなに拒否反応を示しているかと言うと、
 途中まではいいアプローチの視点のホラーだなと思っていたこと、
 そしてそれを(勝手に期待していただけな部分ではありますが)覆すオチがそのオチ使うなら何だって許されるじゃないかと言うオチだからですね。

 これ途中まではホラーとして引き込まれるいい雰囲気なんですよ。

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 観測史上最大の気温の中で徐々に老人達が狂っていく、そしてその過程において若者達の老い、そして老いを重ねた老人への嫌悪が示され、更に在宅介護の問題などもあるなど、
 少子高齢化、温暖化、在宅介護問題など現代問題を絡めた後のカタルシスが秘めているような展開が期待出来るような構成だったんです。

 これありとあらゆる社会問題を全部綺麗に絡めていて、自分はこの映画のラストは「老いと老人」からの反撃になり、最後のカタルシスに持っていけそうなすげえいいアプローチだなと途中までは感心してたんですよ。

 若者達というか現役世代が節々で見せる老いることや老人達への嫌悪、
 それを受け止めた老人達が記録的な気温による熱によって熱中症なりで頭のネジが外れて集団暴走によって社会が崩壊していくっていうのを期待したんです。

 実際社会問題としては上でも書いた通りに高齢化問題、温暖化、在宅介護をちゃんと絡めてホラー風味で進行してましたから。

 その中でも特に在宅介護に関しては自分自身の経験もあってか中々に感情移入するものもあってですね…

 妻を失って独りになったマヌエルを息子であるマリオ、孫であるナイアは引き取ることに積極的で妻であるレナの方はそれこそ嫌悪するんですが、
 これ経験の差で考え方変わるんでしょうけど、在宅介護経験者としては自分はレナ派だったんですよね。

(C)2022 PERSON’S FILMS / LA DALIA FILMS / ANTÍDOTO FILMS

 在宅介護って本当にきつい、実際に面倒見るのが多分この家族形態だと結局レナになるってことも見えるので尚更。
 認知症、せん妄、ここら辺は経験者によって全然受け止め方の深刻さも変わるのでここだけはレナに同情してしまいました。

 ちょっと脱線しましたが、こういう我が身に染みる問題も取り上げつつ進行していき、そしてそれらは全て老人達へのヘイトなんですよね。

 だからこそ若者からするとその嫌悪している存在が不気味に行動する、これは自分も含めた現役世代としてはおそらく「老い」から反撃されるホラーとなり、
 逆に既に高齢者となった立場からすれば最後の暴走によって若者達への「老い」から反撃するカタルシスを得られる黒い気持ちよさに繋がる、
 そんな社会問題を取り上げたことによる両者の立場によってラストの印象が変わるホラーに仕上がると期待したんですよ。

(C)2022 PERSON’S FILMS / LA DALIA FILMS / ANTÍDOTO FILMS

ただオチというか、真実が酷いのでこの進行は全て台無しだったんですが…

 ここまで溜めてきましたが、そろそろオチを言います。

 この映画の異常な気温の上昇、そして老人達の暴走はUFOの仕業でした。

 もう終わりだよ、台無しだよ、こんなんされたら何でもありだよ。

 映画を見ていても話が進むに連れてだんだんと人間ならざる何者かの介入が予期されるようになっていって、
 もう自分はやめておけよぉ、最後まで人間自身の体と心の問題でいいじゃんと嘆いてしまったわけですよ。

(C)2022 PERSON’S FILMS / LA DALIA FILMS / ANTÍDOTO FILMS

 最後にこんな都合のいいデウスエクス・マキナみたいな存在出さなくても人間と社会だけの問題でも全然怖くなりました。
 寧ろこのオチのせいで他人事とは思えない身近な社会問題の爆発による恐怖が急に他人事になって遠くに離れて行ってしまったように感じてしまい、
 納得や恐怖より呆れと笑いが来てしまう何度も言いますが残念なオチにしてしまったなと膝が崩れてしまうほどの衝撃を受けてしまいました。

ちょっとだけ暴走のトリガーについて考察してみる

 真面目に考察するほどではないなと思いつつもこの映画のUFOがやったことについて少しだけ考えてみようと思います。

 まずUFO達がやったのは暖気団として雲と共に異常な気温上昇を引き起こしていました。

 そしてそれと同時にラジオ、鏡、クローゼットの奥などありとあらゆるアプローチで老人達のみが聞くことになった謎の指令を聞かせ続けて老人達を狂わせ、支配下に置き最後の惨劇を引きおこしました。

 で、そこで問題となるのはなぜ老人達のみが指令が聞こえてしまったのかと言うこと。

 条件としてはまず気温上昇によってある程度体力なり判断力なりを奪ったのは間違いないでしょう。
 そしてそれによって指令が聞き届きやすくなったのも多分繋がると思います。
 なので体力の低い老人達が洗脳にかかりやすくなる、ここまでは分かります。

 ですが、それなら同じく熱中症に気をつけるべきと一般的に言われる子供だって洗脳されてもおかしくはないはず、しかし作中ではそのような光景は一切見受けられず、となると熱による体力低下以外に条件があるはず。

 ここで考えられるのが子供と老人の違いは体力だけではなく、経験や他者からの目の違い。これが自分の視点だと頭に浮かぶわけです。

 人間関係や人生経験をたくさん得たというのは歳を重ねると分かる通り、必ずしも強さに繋がるわけではありません。寧ろ何も知らない方がどんなことにも踏み込んでいける強さがあるはず、なので豊富な経験故に生まれた弱さというものに洗脳でつけ込んだのではないかと。

 実際マヌエルは妻であるロサが帰ってくると言っているシーンもありました。

 そしてもう1つは他者からの目、これは言うまでもなく若者達からの老人や老いへの嫌悪の目ですね。

 この若者達が老人達への嫌悪を示したようにそれを受け止めた老人達も若者への嫌悪があったのかもしれない、そしてその感情をトリガーとして利用したのかもしれない。

 そうなると自分がこの映画に感じていた「老人と老い」からの反撃という部分にも納得行くので、
 この映画で楽しんでいた部分、期待していた部分を信じ続けたいがためにこの自分の頭の中の考察を信じ抜こうかなと思います。

まとめ

 やっぱオチですね、オチ。これがダメだと期待していた部分も陳腐になってしまうのでよろしくないです。

 多くの他人事ではない社会問題を使ったホラー構成は良かったのに最後に都合のいい存在に縋って話を纏めようとしてしまうのはやっぱ投げっぱなし感を覚えるのはしょうがないですね。

 でもこの映画のストーリーに対してどうにかして無理矢理でも説明をつけようと言う人間の弱さというのが見えるよう気もするので、これはこれで意外とこの映画に漂う雰囲気にはあっているのかもしれません。

 といっても普通はそこまで頑張って擁護したり、無理やり意を汲み取ろうとする必要もないんですけどね。
 そもそも何も考えずにやった可能性もありますし、このオチだけ考えて話を使ったら奇跡的に社会問題的なホラーを期待するような構成になっただけかもしれませんしね。

まとめ

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