【映画】個人の思惑なんてやはり小さい規模なのです Black Site ネタバレあり感想

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BLACK SITE
(C)MMXVIII AIRPICK PICTURES LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

製作国

イギリス

監督
トム・ペイトン
脚本
トム・ペイトン
出演者
サマンサ・シュニッツラー
マイク・ベッキンガム
クリス・ジョンソン
ローレン・アシュリー・カーター
ジェシカ・ジェーン・クレメント
ヘンリー・ダスウェイト
ソフィア・デル・ピッツォ
フィービー・ロビンソン・ギャルビン

旧神と人との戦い…これだけで心踊らされたという理由で視聴を決めたのがこよ映画Black Site。

蓋を開けてみたらいい仕掛け(人によって、というか大多数にとっては気に入らないかも)で自分としては当たりでした。

ジャンルはアクションで上映時間は約88分となります。

この映画の見どころ

散りばめられた壮大なワードと設定

ラストの真実(肩透かしを感じる人の方が多いとは思います)

あらすじ

人類が誕生する前は旧神がいた。人類は魔術を使って旧神たちを異次元へ追いやり永遠に閉じ込めたが旧神たちは戻る手段を発見した。1926年 アメリカ主導で旧神を捕獲し異次元に送還するための国際機関アルテミスが創設された。幼い頃、両親を旧神エレバス(クリス・ジョンソン)に殺されたレン・リード(サマンサ・シュニッツラー)は旧神エレバスを捕らえるためアルテミスの秘密基地ブラック・サイトにいた。そしてエレバスが捕らえられブラック・サイトに連れてこられた。異次元へ送還しようとしていると、謎の組織がエレバスを奪いに基地に侵入し壮絶な戦いが始まった。

dTVより

登場人物

レン・リード

アルテミスの施設ブラックサイトの所属

過去に両親を旧神エレボスに殺害されそれ以降幻覚を見ることがある

父や祖父のように現場で働きたいと思い試験を受けているが、精神の問題で不合格が続いている

エレボス

過去にレンの両親を殺害した旧神

全存在の中で5番目に生まれた旧神で“食いしん坊”、“宇宙の埋め草”、“暗闇を来たる者”の肩書きを持つ

現在は殺人犯ジェローム・デイビスの体に入り込んだいる

かつての仲間であり親しかった旧神ニックスが送還されたことにより人間達を襲っていた

サム・リーバイ

アルテミス所属でレベル10の送還担当者

多くの人間に退屈なやつだと評される

記憶力が抜群

ジョン・オースティン

アルテミスの現場担当者

過去にエレボスを逃してしまいレンの父である同僚のロブを死なせてしまう

それ以降レンのことを気にかけている

カー

エレボスを奪還しに来た襲撃者のリーダー

2本の刀を使う

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旧神

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人類が誕生する前は旧神がいた

人類は魔術を使って旧神達を異次元に追いやり永遠に閉じ込めた

しかし旧神達は戻る手段を発見する

いきなりこんなワクワクする厨二な説明から入る本作。

この映画の世界は旧神と呼ばれる存在がいて彼らと人間は争っているという前提を受け入れる必要があります。

今回の映画で出る旧神エレボスは単純すぎる言い方をすると敵ポジション…のようで後でちょっと変化をつけたり。

おそらく予想とは少々違う変化でしょうが。

旧神の特徴としては地球にいる旧神は異次元の中で徐々に弱くなりパワーとサイズが縮小。
そのために回復の手段として人の中に隠れ生命力やその源を消耗させるというところです。

この人の中に隠れるのが1つ目のミスリード。

地球に戻ってきても弱体化してるから人に寄生して徐々に力を取り戻す、
しかし体を取り替えるたびに痕跡として残るため人間達に送還、つまり永遠に追い出される可能性も上がるということですね。

設定だけならこのパワーバランスは中々面白いんですよね。

旧神は力を得ると痕跡を残す、人間はその痕跡が少なく力を取り戻す前に確保してさっさと追い出す…と
この部分をしっかりやっていてもそれはそれで面白かったように思えます。

まぁ、この映画はそこら辺は語りだけで済ませて捕獲したエレボスを送還するために奮闘するだけなんですが。

旧神自体もエレボスだけしか登場せず(名前だけならもう1人出ますが)旧神という存在がどんなものか彼1人という偏った情報しかないのが勿体なかったですね。

全員こんな感じで傲慢なのか?とか人間に好意的なのがいるのか?とかそういう広がりも少し見せて欲しかったですね。

アルテミスとブラックサイト

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1926年アメリカ主導の元、旧神を捕獲するための国際機関が創設される

その名はアルテミス

“ブラックサイト”旧神を異次元へ送還するための極秘施設

と、これまた冒頭で説明してくれる厨二な世界観。

基本的に冒頭で物凄いしっかりこの映画の世界観について説明してくれてます。

旧神対策の組織アルテミスとそしてこの映画の舞台となる旧神を送還できる施設ブラックサイト。

昔は旧神が多くいたため本部として扱われていたほどの施設ですが、
旧神の送還の成功が続いたことにより予算が降りなかったりやや廃れていたりする施設でもあります。

旧神の尋問と操作、送還を目的としており今では主に送還のみを目的としている施設です。

中では爆発や発砲が魔術により不可能となっていると映画的には省エネにちょっと便利な設定もあります。

理由としては過去に旧神を捉えた時にその崇拝者が襲撃したからという理由。

これが2つ目のミスリードですね。

これから起きる襲撃を予感させる設定が盛りだくさんな施設です。

施設ではELFという電気を帯びたレーザーバリアがあったりなど強固ですが、お約束ですがこの強固さが敵も味方も阻むことになるわけですね。

レン

旧神エレボスに両親を殺害され心に傷を負った女性レン。彼女がこの映画の主人公となります。

旧神を送還するアルテミスのブラックサイトに所属しており、基地務めの所謂裏方。

しかし、本人は祖父や父のように現場で旧神と向き合いたいと思っており現場担当のテストを受け続けています。

しかし、毎回精神的に任務に適さないとされ不合格。

そう、レンはエレボスとの接触以降定期的に同じ幻覚を見るようになっているのです。

この幻覚が後々に大きな(?)意味を持つことになるのですが、要は実力はあれど不安な部分があるので戦闘に出れないというタイプの主人公ですね。

舐めてかかったら実は…の系譜ですね。

そんな最中に父を亡くしてからの後見人とも言えるジョンから仇であるエレボスの捕獲、そしてブラックサイトでの送還が行われることを聞きます。

幻覚の問題もあり立ち会うなとジョンからは言われるレンですが、
ブラックサイトの責任者はこれを機会にエレボスの送還を見届けて今後は現場担当の試験を諦めるように言われます。

そして送還担当者であるサムを迎え入れたところでエレボスを奪還しにきた襲撃者達との戦闘が始まります。

襲撃からは精神の問題以外は実力的には何も問題はないレンのアクションとしての活躍が見れますが、
そこでもちょいちょいエレボスと共鳴したかのような幻覚が何度も挟まれます。

襲撃者達を凌ぎながら見るこの幻覚の正体、それが明かされる時にエレボスの目的もまた明かされることとなります。

襲撃者

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エレボスを奪還しに襲撃してくるカーという人物を中心とした襲撃者達。

早々にブラックサイト内を鎮圧しジョンにもカーが深手を負わせますが、
施設のELFが作動しエレボスの元には簡単には辿り着けないという状況。

手段としてはブラックサイト内では火器を使うと死んでしまうので刀やボウガンといった原始的な武装で襲撃。

これが数で劣るレン側に取っては追い風となる形になり現代を舞台としているという点を考えるとここら辺のバランス調整はなかなか良いですね。

数の暴力はあれど火力が足りないため抵抗できる余地があるんですねぇ。

とはいえメインとして見るのは彼らの手段ではなく目的。

最初の方で語られた通りかつて旧神の崇拝者に襲撃されて火器厳禁になったブラックサイト。
そんな事前情報が提示された中でエレボスを奪還しにきた襲撃者達と完全に準えている状況です。

しかし、話が進むとどこか違和感を感じる部分が出てくるようになります。

最も分かりやすいのがリーダー格であるカーがレンに気絶させられ襲撃者間で連絡が出来なくなった時。

この時残った襲撃者達はあっさりと逃げの一手を選びます。かつてのように崇拝者が襲ってきたのであれば他の仲間の犠牲の時と同じように作戦を続ければいい。

にも関わらずリーダーのカーがやられたと思ったらすぐに諦めてしまう。
旧神を崇拝しているのであれば誰が犠牲になろうと旧神に殉じて奪還するための戦いを続けそうなものですがこれだとカーありきな組織のように見えてきます。

この違和感、この理由もラストでしっかりと明かされるようになっていきます。

人間も神も等しく

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エレボスと深手を負わされたジョン達はレンやカーが来るまで送還ルームで度々問答を繰り広げます。

旧神たるエレボスは人間であるジョン達に、

人間どもは何にでも名前をつけて所有した気になっている

宇宙では名前など気にしない

人間なんて眼中にないんだ

この世は万物が期待外れ

足と犬のフンは友達になったりしない

とこんな感じでおっ、ちょっと一理あるかもと思わせる部分と、
神だけあって傲慢だなと思わせる部分を垣間見せてきます。

人間を考察して理解したことは本当に無意味な存在だとも語ります。
なんですが地球で活動して力を蓄えるにはその無意味な存在の人間の体の中に入りその生命力が必要であり、
もっと言えば地球で暴れた理由が恋人であった旧神ニックスの送還であるなど個人レベルで言うとどこか矮小な部分も匂わせる存在だったりします。

この矛盾と俗なところは伏線だった気もしますね。

そもそも偉そうなこと言ってるけど捕まってますしね。

それに対して人間であるジョン達は、

仲間がいるそれにはお前の理解を超えた価値がある

旧神か人間なら人間を選ぶ

人としての矜持を語ります。

ここら辺だけ見るとジョンの方がよっぽど高潔な感じに見えますが、
これも見ている側が人間なので人間贔屓になってる部分もあったのかなと。

実際エレボスの問答の中での人間評というのは一理あるなと思わせる部分があり、
こういう部分があるからこそ旧神への崇拝者も生まれる訳なんでしょうからね。

ここら辺の問答はメインではないでしょうがこの映画の哲学的な部分としては結構気に入ってたりします。

そしてメインであるレンの幻覚の正体とエレボスの目的。
これが役者が全て揃った時に明かされることとなります。

レンが過去にエレボスと接触したことにより見た幻覚。
それは時間を断片的に見ることがあるというエレボスが今現在、今この瞬間をレンの脳に直接見せ続けていたということでした。

つまり接触した過去からずっと自分が垣間見た今日を送り続けていて、
そしてレンがその瞬間に立ち会うのを待っていたということですね。

その理由としては自分を救うこと。

エレボスを奪還しに来た襲撃者。
実は彼らはエレボスの崇拝者ではなくエレボスを監禁して毎週体を入れ替えさせ血を抜くという狂気の集団でした。

旧神の血を飲めば力を得られるというデタラメを信じていたカーに執着されていたということですね。

これがカーと連絡を取れなくなったら襲撃者達があっさりと撤退した理由。
エレボスに忠誠も信仰もないのですからカー個人の執着が消えたら自分の身を優先するのは当然という訳です。

そしてそれに対してのエレボスの考えた手段が隙を見てカー達から逃げて、
アルテミスにわざと捕まり恋人ニックスのいる宇宙にさっさと送還してくれという目的だったのです。

とても情けない理由ですが、これならエレボスが不利な状況にも関わらず散々人間を煽った理由も理解できるようになります。

レンを長年苦しめていた幻覚は未来を見たエレボスのただのSOS。
あれほどレンを怯えさせ自分の夢も阻んだ幻覚が何ともちっぽけな着地点を見せることになります。

ですがこれがこの映画の面白いところ。

人間の中に入るという旧神、かつてブラックサイトを襲った旧神の崇拝者、送還されたニックスという別の旧神の存在。

こういう深読みさせるような設定を散りばめておき真実はありのままを見ておけば分かるというシンプルな話。

こういうの設定を語られたら幻覚を見るレンには旧神ニックスが入り込んでいるのかも?とか、
カー達はニックスの方の崇拝者なのでは?とか予測しますがそんなことにはならないのです。

でもこういう仕掛けは自分は嫌いじゃなかったですね。

ストーリーの方も壮大なワードが飛び交う割には舞台も1つの施設内で収まり、エレボスの目的も実に情けなくこじんまりとしています。

ですがこれも意図的なように思えます。エレボスが負け惜しみに近い形なのかもしれませんが、

宇宙が嘲笑うのは人間だけではなく旧神も

この世こそ地獄だ

と、このように宇宙にとっては最早人間も旧神も同じく塵みたいなもんなんだぜと、つまりは人も旧神も同じ位置に降りているというわけです。

先ほども言った通りストーリーは壮大なワードと設定の割にはこじんまりとしています。
ですが個人の思惑なんて世界にそうそう影響を及ぼすものじゃなし、旧神も人と同じ位置に降りた以上それは変わらないのかもしれないそんな話に感じますね。

まとめ

なかなかの厨二な設定から始まりこじんまりとした着地点を見せる映画でした。

普通ならこういうのは肩透かしだなぁと思ってしまうのですが、なぜか自分は結構気に入っていたりします。

多分、エレボスとジョン達の偉そうな問答からあの着地点に落ち着くというのが好きなのかもしれません。

制限かけられたアクションというのもなかなか見応えもありましたし、分かりやすい見どころがあるのも良しですね。

オチで何だこりゃとなるかこの旧神の偉そうに振る舞いながら何か情けなくね?という部分にハマるかによって評価は変わるでしょうが。

より大きな存在の前にはみんな平等なのよという着地点は個人的には好みでした。

後、ここでは書きませんでしたがサムがいいキャラしていてお気に入りです。


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