【映画】終わらない週末のここがすごい!? 壊れる日常と見事な閉鎖空間の作り方【Netflix】

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終わらない週末
(c)2023 NETFLIX, INC.

製作国

アメリカ

監督
サム・エスメイル
脚本
サム・エスメイル
原作
ルマーン・アラム
出演者
ジュリア・ロバーツ
マハーシャラ・アリ
イーサン・ホーク
マイハラ・ヘロルド
ケヴィン・ベーコン
ファラ・マッケンジー
チャールズ・エヴァンス

ネトフリオリジナル映画、終わらない週末(原題:Leave the World Behind)視聴致しましたよ。

これすごいですね。
2時間越えの時間にしかも自宅という割と気が散る場所で見ているにも関わらずのめり込んで見てあっという間に時間が過ぎてしまいました。

壊れる日常、閉鎖空間、疑心暗鬼。
これらを現代だからこそ用意出来る形で作り出し、そして事態の中心にいないという登場人物達の配置で最後まで彼らが翻弄される様を見ることが出来ました。

実に良質、その中でも個人的にすごいと思った点を3点語りたいなと思います。

ジャンルはドラマで上映時間は約138分となります。

ここが見どころ!

崩れていく日常

広いはずなのに閉鎖空間、そしてそこからの疑心暗鬼

ストーリー、カメラワーク共に意識されている俯瞰という視点

あらすじ

のんびり週末を過ごそうと、豪華な別荘を借りた一家。だが到着早々、サイバー攻撃により携帯やパソコンが使えないという不測の事態が起こる。そして、玄関口に見知らぬ男女2人が姿を現す。

Netflixより
Netflix Japanより

登場人物

アマンダ

広告業の仕事をしている女性

仕事柄見ることになる人間模様のせいで大の人間嫌いになっている

仕事の喧騒を忘れるために週末に郊外の家を借りて休暇を過ごすことを決める

クレイ

アマンダの夫

市立大学の教授で英語とメディア論が専攻

ジョージ

アマンダ達が旅行先の宿泊先として決めた家の家主

交響楽団の理事でクラシックを知り合いに紹介するのが趣味

街の停電により異変を感じ取り自宅に戻る

ルース

ジョージの娘

父と共に家に戻るがアマンダの懐疑的な態度で彼女とソリが合わなくなる

ローズ

アマンダとクレイの娘

ドラマ『フレンズ』を崇拝している

アーチー

アマンダとクレイの息子でローズの兄

ダニー

ジョージ達の家の改装を行った職人

食糧や薬を貯め込んでいる

終わらない週末のここがすごい

5パートに渡り2つの家族が翻弄されていく様を映し出すこの映画。

その中で自分が見た感想としては、
変わっていく日常
閉鎖空間と疑心暗鬼の作り方
そしてカメラワーク

これらがすごいと感じましたね。

崩壊していく日常がすごい

終わらない週末
(c)2023 NETFLIX, INC.

この映画のメインとなる事態、変わっていく日常。

現代社会への警鐘かの如く、ハッカーによる攻撃で日常が徐々に壊れていく様を強烈に映しています。

この映画、ハッカーによる攻撃で事態が起きているのですが、登場人物達は誰1人その事態の中心にはいません。

なのでひたすらに変わっていく日常に翻弄されていく、
現代社会で情報という物を得る手段が破綻すると何も出来ない、分からないというのをまざまざと見せつけて来るのです。

初っ端からオイルタンカーの座礁から始まり、市内の停電、そして非常事態宣言。

そして飛行機の墜落やドローンによるアメリカへの攻撃の示唆、超音波による攻撃、自動運転車が次々と暴走して事故を起こして高速道路を塞ぐ、どれもネットを通じて行われる攻撃です。

終わらない週末
(c)2023 NETFLIX, INC.

これらが派手な何かが行われることなく確実に迫ってくる日常の崩壊の描き方が本当に上手かった。

これらの事態でネットに依存していることの脆さも描いているのですが、
それ以上に登場人物達の無力さも同時に表しています。

この映画の登場人物達は本当にこの事態どころか身近で起きることにも何も対応出来ないのです。

街に様子を見に行こうとしてもGPSが通じないから地図もナビも無く迷う、子供が病気にかかっても対処の仕方が何も分からない、情報だって当然何一つ得ることは出来ません。

でもこれって当たり前なんですよね。

自分もそうですが、普段は何か分からないことや欲しい情報があればスマホ1つで検索してその情報を普段は得ることが出来る、
でもその情報って結局自分の物ではないんですよ。

何となく自分が調べて得た情報をさも自分の知識だと思いがちなんですけど、
実際は別に自分が勉強や努力して得た物ではないから別に身に付いている訳じゃない、
なのでネットが途切れた瞬間自分には何も出来ないんです。

すごいのはそれこそスマホや情報を出している人であってそれが遮断されたら何も出来ない、これは文字通り日常の崩壊ですよ。

この崩壊をここまで真に迫る形で描いているのって少なくとも自分が知る限りでは見たことがないですね。

最後に推測という形でこそありますが、この事態の解明はなされます。

どこかの国、もしくは複数の国による攻撃で政府を内部から転覆させる3段階の簡単な作戦とされており、内容としては、

1段階目は全ての通信と交通を無効にして隔離する。
2段階目で多発隠密作戦と誤報で恐怖に陥れ防衛力を圧倒し兵器システムを脆弱化し、過激派や軍の侵入を許す、明らかな敵が見えないと市民はお互いを敵視する。
これが成功すると第3段階は自然に起きる、クーデター、内戦、崩壊、国を揺るがすのに最もコスパのいい作戦。

いや、ここまでのハッキングが実際に出来るかはともかく理にかなっているので怖いんですよ。これ。

出てくる国の名前もこんなはっきりと出しちゃって大丈夫?と思う国々で、でもやりかねないな、ありそうだなと思うのは良くない偏見でしょうかね?

変わらない日常

崩壊していく日常を描いている映画ですが、1人だけ最後に変わらない行動をとる人物もいます。

それがアマンダとクレイの娘ローズ。

終わらない週末
(c)2023 NETFLIX, INC.

最後にアマンダとルースが見た衝撃的な光景の裏で彼女だけは人の家に入り込んでお菓子を貪り食い、
地下の防空壕の中でネットが遮断されて見れなかった『フレンズ』の最終回を見てこの映画は終わります。

1人だけ最後に変わらない日常を堪能する、こういうのを見るとローズはある意味タフなんでしょうね。

子供だからと言われたらそれまでなんでしょうが、13歳という年齢もなかなか絶妙。

彼女の行動がこの世界のこれから取るべき行動を示唆しているのかもしれません。

閉鎖空間と疑心暗鬼の作り方がすごい

終わらない週末
(c)2023 NETFLIX, INC.

この映画は閉鎖空間が作り方がすごい上手いと思いましたね。

登場人物達は物凄く広い所にいます。別に行動が制限されているわけでもなく、行ける場所も高速以外ならたくさんあります。
しかしネットの遮断、情報の遮断により地図も見れずどこへ行けばいいかも分からず閉じ込められたかのように身動きが取れない、
これは閉鎖空間映画好きとしては唸る空間の作り方でしたね。

これも現代社会ならではですよね。

何もかも情報を得られるからこそ得られない状況で無闇に動くという選択肢は怖くて取れなくなってしまう。

今で言うならロックダウンが最も身近で想像しやすいでしょうか?

そして閉鎖空間ということは当然人間同士の疑心暗鬼も付きもの。

これが本当に見事でしてね。

アマンダとクレイの一家と家主のジョージとルースの親子という2つの家族による疑心暗鬼が繰り広げられるわけですが。

この2つの家族に関しては実は観客から見ると情報はかなり提示されているのです。

なぜなら片方の家族だけを映してもう1つの家族が何者なのかというありがちなことをせずに、
両方の家族の視点を映してそれぞれが何を考えているのか常に描いているからです。

途中でラジオやテレビから事態の情報も少しだけ聞かせてくれるのですが、登場人物達は間が悪くそれも知ることは出来ない。

なので相手を信頼しきれないまま同じ空間で過ごすというストレスのかかる環境にいることになるんですよね。

相手の事情を知らないから特にアマンダは人間嫌い故にジョージ達を家主とは思わず疑ってかかる、
そして時に相手の地雷を踏んでしまうなど見ている側からしたらやっちまったなと思うことも度々行われており、
観客が情報や事情を知っているからこそ感じ取れる緊張感という物が感じ取れる演出になっているんですよ。

それぞれの素性を観客に明かしながら疑心暗鬼による緊張感というものを感じ取らせるということはなかなか出来るもんではないので、
閉鎖空間の作り方と合わせてすごく上手い舞台作りをしていましたね。

何だかんだで優しい話

疑心暗鬼なお話をしましたが、何だかんだで優しい話かなとは思っています。

なぜなら結局この家族達は互いを守る決断をするからですね。

広告業の仕事の中で人の欺瞞を見て人嫌いになってジョージ達とのトラブルの元になっているようなアマンダや、
子供のことをあまり知らないクレイ、
その両親を少し諦めた感じで見ている2人の子供、
そしてアマンダに突っかかられたからソリが合わないルースと。

こんなの絶対に互いの命を狙い合う関係になると思うのに彼らはそれを乗り越えるんですから。

アマンダとルースは腹を割って話し、クレイはアーチーの病気を対処をするために向かったダニーの家で抱えている想いをぶち撒けてお互いを守ります。

多分この映画で本当に伝えたい部分はここなんじゃないかな?と自分は思っているくらいです。

薬を得るために互いに銃を向け合うジョージとダニーに割って入るクレイ、鹿に囲まれるルースとそれを助けようとするアマンダ。
ここの誰かの命が失われるかもしれないという緊張感が物凄いわけですが、クレイは子供達への想いをダニーにぶつけることで(間接的にアーチーにも伝わっていますね)アマンダはルースを必死に助けに行くなど、
しっかりと人を見て話すことで相手を好きになれずとも理解はし合えるという、
ネットに依存していることによる危機を描いた映画なら巻き込まれた人間は生身で話すことで和解することを提示するのが自然なのでしょう。

上で書いた今回の事態の狙いである明らかな敵が見えないと市民は敵対する、この狙いのある攻撃ですが登場人物達はみんな最終的にそれを乗り越える、
ネットに頼り切る部分の危うさを描いていますが、この生身で話して分かりあう部分を見せるのはやはり優しい映画なのだと思いますね。

カメラワークがすごい

この映画見ていて映像的にすごいのは派手な飛行機墜落なども当然なのですが、個人的にカメラワークがすごいと思いました。

休暇に向かうクレイ、アマンダ一家の車の中の撮影などシームレスに中を映しながら閉まった窓から外に出ていく、多分どこかがCGなのでしょうが妙に心掴まれる動きでしたね。

家の中を映すシーンも似たような物でこの特徴的なカメラワークはこの映画の不安定さにも十分に一役買っていました。

そしてカメラワーク最大の特徴は“俯瞰”でしょう。

とにかく真上から俯瞰して映すシーンが多いのです。

何かが起きている時、パートが変わる時など印象的に使われています。

多分この映画自体がカメラワーク同様に“俯瞰”が1つ強く見せたい物なんだなと自分は感じ取りました。

登場人物達の考えや起きている事態についてもこちらにはほぼ全て提示されている、つまり“俯瞰”して物語を見ているわけですよ。

そしてそれに合わせるかのようにカメラワークも“俯瞰”して見せている。

作劇的にも画的にも“俯瞰”を意識している、これらを計算して(いると自分が勝手に思っています)、噛み合わせているカメラワークの丁寧さとすごさには製作の職人気質を感じざるを得ませんでしたね。

まとめ

2023年も終わりというところで物凄くいい映画が見れました。

まさに今ある危機を描いている事態により崩壊していく日常、現代社会だからこそ作り出せる閉鎖空間、そして情報を提示して見せることと物理的に見せることの両方の“俯瞰”

こんなにしっかりと計算して作られた映画は面白いとしか言いようがないですよね。

残念な点があるとしたら最後に人間関係において人間は愚かだからとか黒人と白人など露骨な台詞が出てしまうくらい。

この映画でのこれは口には出さずに態度や被害妄想の域で感じ取れるようにした方が綺麗かなと自分は思いますね。

分かりやすさ重視なのかもしれませんが。

最後に出てきた光景やアーチーの病気、彼らの行く末は想像するしかない結末ですが、
少なくとも互いを敵として排除するという感情は乗り越えることが出来たのですから、何か報われる結末を迎えていることを祈りたいものです。

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