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製作国
韓国
監督
イ・チュンヒョン
脚本
イ・チュンヒョン
出演者
チョン・ジョンソ
キム・ジフン
パク・ユリム
今回はネトフリオリジナルの韓国映画バレリーナ(原題:발레리나/Ballerina)の感想。
ストーリーそのものはベタな復讐譚なのですが、鮮やかな色彩、圧倒的な暴力による視覚的な表現で一気に惹き込まれ、
そして韓国映画らしいエグ味で心理的にもガシッと心を鷲掴みにされる映画となっておりました。
上映時間もネトフリオリジナルにしては約93分とコンパクトに納めており、手軽に見やすくも心掴まれ目を離せない内容でしたね。
目次
あらすじ
親友を守ることができず、深い悲しみに暮れる元警護員のオクジュ。彼女が残した最期の願いをかなえるため、美しく壮絶な復讐(ふくしゅう)計画を実行に移し始める。
Netfrixより
登場人物
・オクジュ
過去に要人警護をしていた女性
中学からの親友であるミニに部屋に呼び出されて向かったところ、自ら命を絶った彼女を見つける
遺された折り紙に書かれた“復讐して”の言葉に従い、彼女を追い詰めた存在を探しに行く
・チェ・ミニ
オクジュの友人でバレリーナの女性
チョイに撮られた動画で精神的に追い詰められ、オクジュに手紙を遺し自ら命を断つ
・チョイ
ミニの手紙に書かれていた反社組織の男
女性を酒と薬で意識を失わせ、SM動画を撮り脅して仕事をさせている
目を奪われる復讐譚なストーリー
友人を死に追いやった男に復讐するというベタな(王道かつ安定感があるとも言う)ストーリーの本作。
ただベタではあるんですが、そこに韓国映画らしい人を追い詰めていくエグ味、
鮮やかな色彩と暴力的かつ華麗なアクションで彩ることで目を奪われる内容となっておりました。
抑えるところはしっかりと抑えている安定の内容
主人公のオクジュが親友であるミニに呼び出されて彼女の部屋に行ったら自ら命を絶った彼女と“復讐して”という折り紙が遺されているという中々に衝撃的な序盤から始まる本作。
上でも書いた通りかなーりベタなんですが、ベタということはつまり王道ということ、しっかりと押さえるところは押さえてある復讐譚となっておりました。
まず何と言っても本作は女性が主役側でもあり被害者側でもあるという内容な訳なんですが、
これは昨今の主流にも合わせている内容となっていますよね。
女性を食い物にする男を強い女性が屠る、最近の風潮と合わせると反発心を持つ人もいるかもしれませんが、
古今東西でかっこいい女性が活躍というのは割と好かれる内容でもあると思います。
このかっこよさに関しては後で語りますが、しっかりとツボを押される内容となっていますよ。
そして次に復讐される男チョイの存在、これまた詳しくは後で語りますが、
こやつがかなりの変態男かつ、おそらく女性目線だとガチで殺意しか芽生えないことをしている奴です。
復讐される側はどこまでも悪辣で同情の余地なんか無い方がいい、
そういった意味では殺意しか湧かないようやつではありますが、映画のポジションとしてはしっかりと仕事を果たしている野郎となっていますよ。
そしてこれまた王道なのが1人の男を狙っていたらいつの間にか相手の組織まで潰すことになるという点。
ストーリーでも最期の命乞いで「ここまでやるなんておかしいじゃないか」と言われていますが、
やっぱ1つの目的が大きな事態に繋がるのはそれこそ最近だとイコライザーよろしくスカッと感増やすためには求められる内容ではありますよね。
ただ今作で面白いのはオクジュにとって組織は本当に通過点な所です。
チョイを探すために組織の連中に居場所を聞きに行き、話さないから実力行使で全員潰すと、
ただ通る道の小石を押しのけるがごとく組織壊滅させるのがとてもとてもクールとなっております。
このように復讐物としてはしっかりと感情揺さぶるツボを押さえてある本作。
ストーリーとしては驚きや意外性を感じることは少ないでしょうが、
昨今の風潮にも沿った内容と合わせて実に今風な作風と王道な作風を上手く足し算したストーリーでした。
ちなみに自分が1番ツボを押さえていると思ったシーンは装備の準備シーンです。ここの爺ちゃん婆ちゃんとのやりとりは1回でいいから見てほしい。
韓国映画らしいエグ味が上手く噛み合っている
ベタな復讐譚にしっかりと彩りを与えたのがこの韓国映画らしいエグ味。
韓国のみならずアジア圏の映画というのは暴力や精神的に追い詰める描写などに遠慮が少ない作風が多いのですが、
それが復讐譚な本作には実に上手く噛み合い実にむかつくと感情を揺さぶられるようになっていました。
特にそのエグ味を出しているのは本作の復讐相手であるチョイ。
反社組織の一員なのですが、個人的に女性を食い物にする商売をやっており、言動、行動共に実に変態的で気持ち悪さがあります。
その癖顔はイケメンなのだからムカつくぜぇ…
彼のやっていることは女性を誘い酒と薬で意識を失わせてその隙に完全に自身の趣味であるSMプレイ(キモいよぉ)の動画を撮り、女性達を逆らえないようにするという。
分かりやすいくらいの女の敵って感じの悪辣さなのです。
犯した女性の動画は自宅でUSBに几帳面にタイトルをつけながら保存して(その1つが“バレリーナ”)、
更に女性を“奴隷”と呼ぶなどこれでもかと言うくらいの生理的嫌悪の涌く悪辣さでこいつは生かしちゃいけないなと描写させています。
正直こういうエグ味って言葉で伝えるのは正直難しいのである程度の覚悟は必要ですが、百聞は一見にしかずの精神で確かめた方が早い気もします。
もうこいつら早く◯ねよとなること請け合いですよ!
オクジュという女性の寡黙さから感じ取れる感情
復讐譚では当然主役となる存在も大事。
本作の主人公オクジュはクールさと繊細さを醸し出しているいい主人公となっていました。
まず何と言っても冒頭ですよね。
強盗の真横で会計をお願いしてお釣りを強盗が目の前で盗んだ金から受け取り、逆上した強盗を返り討ち。
ここだけで一気に興味を強く抱かせるキャラクター性、そして実力を見せてくれた彼女に一気に心を鷲掴みにされました。
そんな彼女ですが、作中では寡黙で己のことは殆ど語りませんし、語られません。
分かっていることは海外含めた要人警護の仕事をしていたこと、
その仕事に向き合っていると生きていくためではなく死んでいく感じと大分鬱入っていたこと、
そしてミニとの再会と交流で“生きるのが楽しい”と初めて感じたこと。
オクジュに関しては大体これくらいしか情報が明らかにされません。
少ないと思われるかも知れませんが、この映画に関してはこの情報だけで十分だなと自分は感じました。
オクジュの実力に関しての説得力は言うまでもなく、今回の動機となるミニに対する感情もこれだけで十分分かります。
それに本人の事情を最低限の描写にすることで度々挟まれるミニとの回想により、
彼女がどれだけオクジュにとって人生において大きなウェイトを占めていたのかも自然と感じ取れるようになっていましたしね。
特に最後の戦いに挑む時に彼女から誕生日プレゼントで貰ったスニーカーを履いて挑みにいくなど、
おそらくですが友情以上の激重な感情をオクジュはミニに抱いていたんだろうなと語られずとも察する物があります。
この昨今の露骨さのある物と比較して押し付けがましくない、匂わせる描写は高評価です。
そして戦う動機が結果として大きく広がっていくのもさっきから言っているこの手の映画にありがちな物ですが、
オクジュも当然例に漏れずミニの復讐だけでは留まらない理由を背負うことになります。
最初のチョイ襲撃を失敗した後(こいつ変態のくせに意外と強いんすよ)に自分を助けた少女。
名も明かされない存在ですが彼女もミニ同様にチョイに奴隷として扱われている存在でした。
そんな彼女が男を全滅させる救いを求めているとこれがもう1つの戦う理由となっていると。
この2つの戦う理由、(おそらく)愛する女性を死に追いやった者への復讐、更に同じ境遇の女性の登場で彼女の救いの女神となると、
分かりやすい言い方をするとポリコレ系女性ヒーローとなってしまうんでしょうが、
上記で書いたエグ味のある韓国映画らしい描写のおかげでそこまでの露骨さと嫌味さは感じませんでした。
これに関してはオクジュ本人が寡黙で自身からの主張が少ないというのも間違いなくあります。
何より惨めったらしいチョイへのトドメの前の、
「地獄であの女に同じことをしてやる。」
「私が地獄まで追いかける。」
この言葉の応酬!この痛快かつエグいトドメを見れたのでいい復讐系の主人公だったと思います。
ラストは…このチョイとの言葉の応酬、ミニの魚に来世は魚に生まれ変わるという言葉、そして海で燃やされたバイクを見ると、
やっぱそういう決断をしたのかな?と考えられますがこれはオクジュの寡黙なキャラクター性らしく深く語られずに推測されるに留めるのが美しい終わりなんでしょうね。
圧倒的な暴力と鮮やかな色彩
この映画のこの2つがかなり特徴的となっています。
ストーリーだけならベタなこの映画を強く彩ったのは間違いなくこの2つの要素。
暴力的な描写と鮮やかな色彩、この視覚から得られる情報だけで強く人を惹き込む画作りとなっていました。
音楽の主張が少ないことからも間違いなくこれは狙っていたこと、そして少なくとも自分はその狙いにばっちりとハマってしまいましたよ。
圧倒的な暴力
これはまぁ分かりやすくアクション面での話ですね。
冒頭から分かりやすいくらいに痛い描写が挟まりまくります。
とにかく傷や使う道具による痛みという物をしっかりと見せてくるのでそのバイオレンスさに目を奪われるのです。
人によっては覆いたくなるかも?
これはオクジュ自体が決してスマートに戦いきれずタフさが目立つアクションになっているとのもあると思います。
その場にある道具を駆使して切り抜けたりすることから分かりやすく系統を言うならパラベラム以降のジョン・ウィックでしょうか?
ナイフ刺されたとこ見せるなんて当たり前、傷という物をボカすことなく暴力による結果をしっかりと見せてきますね。
これが相手の悪辣さと合わせることで爽快さも得られるようになっているので、
映画全体にある男達のエグ味を強めな暴力描写で洗い流すという爽快感を得られる計算が上手い映画でした。
特にお気に入りはガラス片を無理やり口に含ませて何度も顔面殴るというエグすぎる馬乗りパンチです。
鮮やかな色彩
この映画の視覚から得られる物で1番目を奪われるのはこの色彩センスでしょう。
何か表現を言葉として伝えるのが難しいのですが、現代が舞台なのにまるで近未来SFのような表現なのです。
これをより強調するのが夜のシーンの多さ。
夜の暗闇の中でネオン調の色彩がこれでもかと散りばめられて視覚からの情報量が多くて圧倒されるのです。
ただ単にドぎつく強い色を使うだけではなく光と影の塩梅がこれまた絶妙でそれを見事なカメラワークで動かし、見ているだけで飽きない表現でしたね。
この極彩色はオクジュとミニの2人の思い出でも使われておりまして、特に再会の象徴とも言えるチョコミントケーキの色が特に印象的でしょうか。
この色の強さで嫌でも印象に残るようになっているので登場人物、特にオクジュが多くを語らずとも見ている側には強く頭に残るようになると、
言葉や表情ではなく物や場の色で感情や状況を伝えるかのようなこの表現のセンスはちょっと他に類を見ないほどのセンスじゃないかと思えましたね。
この色彩センスがベタなはずのストーリーを彩り、飽きない新鮮さを与えることに強く作用していると感じましたね。
最初に言った通りBGMの主張が少ないので完全に計算した手法でしょうからあっぱれですわ。
まとめ
実にいい復讐譚なアクション映画でした。
しつこいようですがベタなストーリーを韓国映画らしいエグ味で感情移入させ、
色と暴力という視覚表現で目を離せない演出にするとよく計算されている映画でした。
正直バレリーナというタイトルに関してはとある事情で少し思うところはあるにはあるのですが、
まぁタイトル被りなんてよくあるっちゃある話としてここは飲み込んでおこうと思います。
まぁそれはそれとして見やすい上映時間、質のいいアクション、そして視覚から与えられる情報のセンス、
これらの噛み合いで間違いなく見て損はしない部類のアクション映画となっていますのでネトフリ加入者なら見て損はしない映画となっていますよ。
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