【映画】母2人の愛と狂気 そして真実は… チェンジリング・ガール 感想

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チェンジリング・ガール
COPYRIGHT (C) 2012 TAKEN BACK PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

製作国

カナダ、アメリカ

監督
マーク・ジーン
脚本
ブライアン・D・ヤング
出演者
モイラ・ケリー
アマンダ・タッピング
ケイシー・ロール
デヴィッド・キュービット
ニコール・オリヴァー

今回は誘拐した娘を探す母の映画、チェンジリング・ガール(原題:Taken Back: Finding Haley)の感想。

この映画、個人的にはかなり好みの内容でした。

狂気に似た愛、愛に似た狂気でクライマックスまで真実を予想させない。
この構成、人物配置が絶妙でいい緊張感を抱きながら最後まで見ることができました。

愛と狂気は紙一重。

2人の母が織りなす愛と狂気を是非とも堪能して欲しいですね。

ジャンルはサスペンススリラーで上映時間は約92分となります。

ここが見どころ!

母2人の愛と狂気によりクライマックスまでの曇る真実

COPYRIGHT (C) 2012 TAKEN BACK PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

あらすじ

母親の確信は、奇跡の再会か狂気の妄想か!?
メリーゴーランドに乗っていた3歳の娘ヘイリーを、柵外から撮影していたカレン。しかし回転の死角に入った一瞬の隙に娘が消えてしまった。誘拐事件としてFBIや警察が捜索、カレンと夫ティムもあらゆる手を尽くすがヘイリーは見つからず2年の歳月が過ぎた。娘の捜索に取りつかれたままのカレンを支えきれなくなった夫は去り、カレンは睡眠薬で自殺を図るも、タリー刑事と友人メーガンに救われる。その10年後。未だ娘を捜すカレンは、コルウッドの高校で生徒の写真撮影の仕事を行っていた。そのなかに娘の面影がある生徒エマがいた。娘だと確信しエマの周囲を調べ始めたカレンは、過去にも他人を娘だと思い込み、迷惑行為で訴えられた過去もあり、精神鑑定で再犯可能性も疑われていたが…。

Rakuten TVより

チェンジリング・ガールを配信している配信サービス

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登場人物

カレン・ターナー

誘拐された娘ヘイリーの捜索に心血を注ぎ続ける

過去に他人をヘイリーと思い込み迷惑行為で訴えられ、自身も精神鑑定を受けた

現在は学生の写真撮影の仕事をしている

ヘイリーの誘拐から12年後娘そっくりの少女エマを見て彼女を娘だと確信して周囲を調査し始める

エマ・マックイーン

ヘイリーによく似た少女

過干渉で過保護な母スーザンに辟易している

ヘイリー

誘拐されたカレンの娘

メリーゴーランドに乗っている最中にカレンが写真撮影をしていた僅かな時間に誘拐された

スーザン・マックイーン

エマの母親

必ずエマの送り迎えをするなど彼女に対して異常なまでに過保護

デイブ・マックイーン

エマの父

不動産業を営んでいる

メーガン・ハーパー

カレンの友人

警察事務でカレンのエマについての調査を危惧している

カレンを諦めさせるために最後の協力をする

ざっくり概要

12年前に誘拐された娘を探す母と自分の娘を守ろうとする母、この2人の母親の愛と狂気が繰り広げられる本作。

チェンジリング・ガール
COPYRIGHT (C) 2012 TAKEN BACK PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

娘のヘイリーと遊園地に来ていたカレンは娘をメリーゴーランドに乗せて写真を撮影していた。
だが他の子達に目を移し撮影していたその僅かな時間の隙にヘイリーは誘拐されてしまう。

2年後、悪夢を見ながらもヘイリーを探し続けるカレンだったがそこに心血を注ぎ続ける彼女を支えきれない夫ティムは彼女の元から離れてしまう。

そしてカレンもまた徐々に憔悴していき他の女の子をヘイリーと思い声をかけるなど問題行動を起こし、
果てには睡眠薬を大量に服用して自殺を図るが駆けつけた友人メーガンとヘイリー誘拐事件の担当刑事であるターナーに救われる。

10年後、学生の写真撮影の仕事をしているカレンだったが、それは成長した娘ヘイリーを見つけ出すためだった。

そしてコルウッドの学校での撮影の際にヘイリーの面影を強く感じる少女エマを撮影する。
彼女をヘイリーだと確信したエマは彼女を尾行してやがて家まで突き止める。

当事者であるエマは母親であるスーザンの過干渉、過保護に悩んでいた。
学校へは必ず送り迎えをしてきて外での遊びも許可されない、更には幼少期の写真のやり取りすら咎められる。
そんな状況に両親、特に母とは少しばかりの溝が生まれていた。

その一方でカレンは警察事務の友人メーガンにエマについての調査の協力を求める。
かつて全く無関係の他人の少女などに迷惑行為をしていて再犯の可能性が高いとされているカレンを危惧するメーガンだが、
彼女を諦めさせるために最後の協力をする。

カレンはスーザンを尾行して彼女が墓地で“私たちの小さな天使”に墓参りしているのを目撃する。その墓地のある場所はヘイリーが誘拐されたアトウォーターにあり、カレンはますますエマを自分の娘だと確信していく。

そしてそのことをメーガンに話し、スーザン一家の出生証明書を調べるようにお願いする。
調べた結果出生証明書は存在していたが、カレンは出身地が墓地のあったアトウォーターであったこと、
これは偶然ではないと主張して彼女の暴走を危惧して咎めてくるメーガンと決別する。

エスカレートしていくカレンのエマへの行動。
これは母の愛による確信か、狂気による過ちか…

とまぁ終盤に入るまでは大体こんな感じ。

エマという1つの中心にカレンとスーザンという母が囲む形となっているのですが、この映画の真実はクライマックスに入るまで読めません。

どちらの母にも狂気的な部分があり、これは愛情と紙一重の描写をされているのでどちらが狂っているのか分からないからですね。

サスペンススリラーとしては良質な部類の映画でした。

母2人の愛と狂気(こっからネタバレだよ)

この映画を最後まで読めなくしている要素であり重要な要素がカレンとスーザン、この母2人の娘に対する愛と狂気でしょう。

ほんの少し目を離した隙に娘を誘拐されたカレン、娘に異常なまでに過保護に接するスーザン。

この2人それぞれの愛と狂気が実に観客とエマを混乱させてくれる訳です。

まずカレンですが、目の前でほんの僅かな時間の間に娘ヘイリーを誘拐されてそして取り戻すために12年間諦めずに探している、
しかし、その過程で赤の他人の娘にまでベイリーと勘違いして接触して危険人物として見なされたこともあると。

チェンジリング・ガール
COPYRIGHT (C) 2012 TAKEN BACK PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

こういう危険性も提示されていることでエマに対する行動が真実に基づいているのか混乱させてくる訳です。

何と言ってもカレンの行動自体がまたすごいのですよ。

一目でエマを誘拐されたヘイリーと自分の中で確信して尾行して家を特定、
更に家族構成を確認して更にはスーザンを尾行して墓地に墓参りしている姿を撮影する。

更に更に家と部屋に侵入して飲みかけのコーラ缶まで盗ってくると。

はい、ぶっちゃけ言い逃れ出来ないレベルのストーカーですね。

挙げ句の果てにはエマを直接誘拐してヘイリーの部屋に連れて行きますからね。

本人は絆を感じて確信の元に行動しているのですが、観客や周囲の人物からしたら狂ってるとしか言いようが無い、
このカレンの狂いっぷりは実にクライマックスまでのエマがどちらの娘なのか混乱させるのに作用しておりましたとも。

そしてエマの母でおるスーザン。

チェンジリング・ガール
COPYRIGHT (C) 2012 TAKEN BACK PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

彼女はエマに対して異常なまでの過干渉、過保護っぷりを見せてきます。

学校の送り迎えは絶対に自分が付き添い、キャンプにすら行かそうとしない、
更には幼少期の写真をエマが親友のアレクシスに送ったらそれを削除させると、所謂毒親ムーブってやつですね。

ですがこの映画は誘拐された娘の話なのでこれが単純な過保護、過干渉な毒親なのか、
それとも誘拐した娘をバレないようにするためなのか、
カレンの行動と合わせると守っているようにも隠しているようにも見えるという実にいい塩梅の描写だったと思います。

そして肝心の真実となりますが、エマ=ヘイリーです。

つまりカレンの直感が正しかったという話ですね。

経緯としてはスーザンが本当のエマから少し目を離した間に湯船に沈んでいた事故から。

こちらも少し目を離した隙に…なんですよね。

そしてその時たまたまエマによく似たヘイリーを見つけて彼女を誘拐したと。

この全てが明らかになり2人の母が対峙した時のスーザンの化けの皮の剥がれっぷりは彼女がエマ(ヘイリー)に抱いていたのは愛では無かったと感じるのには十分なものでした。

カレンを気絶させてヘイリーを追いかけた時にスーザンは“恩知らずのガキめ”と宣うんですよね。

これを聞いた時にスーザンはエマを愛していたのではなく、
自分の過ちを無かったことにしたいだけで行動していた独りよがりな人物でしかなかったとヘイリーですら感じたことでしょう。

実際スーザンの罪はとても重いです。
1つの家族を崩壊させて1人の少女の人生を狂わせた、しかも12年も。

今思うとカレンとスーザンがそれぞれヘイリー(エマ)に親として語った

カレンの“ママの愛情はすごく深い”
スーザンの“恵まれた人生に感謝しなさい”

この言葉の差、この無償の愛と押し付けがましい愛の差の時点で今回の結末は見えていたんだなと分かります。

正に愛と狂気は紙一重。

しっかりとクライマックスまで真実を曇らせてくれる母2人の愛と狂気でした。

奪われた2つの人生

この映画で1番の被害者であるヘイリー(エマ)。

チェンジリング・ガール
COPYRIGHT (C) 2012 TAKEN BACK PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

彼女の人生に思いを馳せるとスーザンの行為の重さがよく分かります。

彼女は言ってしまえば若くして人生を2度失ってしまったんですよね。

ヘイリーとして誘拐されてヘイリーとしての人生が失われて、そしてエマとしての人生は真実により否定されてしまった。

彼女はこの時点で2度殺されたといっても過言ではないでしょう。

親からの無償の愛というものは人生を形成するのに大きな影響を与えるものですが、
それすらスーザンのクソガキ発言により否定されてしまった。

普通なら相手が誘拐犯であろうとも悩みを抱くはずなんですよ。
自分の人生の中で多くを共に過ごした母は間違いなくカレンよりスーザンなんですから。

でもそんな年数の重みもスーザンはあの発言で打ち砕いた。
だからこそ最後に逮捕されて縋るような目で見てきたスーザンに何も声をかけずにカレンの隣に寄り添い躊躇いながらも手を握ったのでしょう。

誘拐という物にスポットを当てた映画でしたが、被害者が見つからないことに焦点を当たるのではなく、
見つかった時に再び崩壊する被害者の人生というものに焦点を当てそれをよく描けていたなと思います。

まとめ

愛と狂気がどれほど近くにあるのか、そして誘拐された被害者は間接的に何度死んでしまうのか、これらについて本当に良く描けていました。

狂気にも見える愛、愛に見える狂気、これらが真実の予想を困難にするという構成もまた素晴らしい。

誘拐物としては被害者の人生に思いを馳せる部分が強めなのも個人的には好みでした。

正直カレンにイラッとする部分が多いのも確かなんですが、最後の救いだけで良かったなぁと思う自分はやはりチョロい人間だなと思いますね。

あまり期待していなかったのですがドラマとしても完成度は高く、思わぬ掘り出し物を見つけた気分になりましま。

個人的にはオススメですよ。


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