【映画】浸る不幸、望まぬ奇跡 PITY ある不幸な男 ネタバレあり感想【レビュー】

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pity
©2018 Neda Film, Madants, Faliro House

製作国:ギリシャ、ポーランド

監督
バビス・マクリディス
脚本
エフティミス・フィリップ
バビス・マクリディス
出演者
ヤニス・ドラコプロス
エビ・サウリドウ
マキス・パパディミトリウ
Evdoxia Androulidaki
Nikos Karathanos

どっぷりとした不幸から来る周囲の関心は居心地の良さすら感じるようになる。

今回はそんな映画 PITY ある不幸な男(原題:Oiktos)見たので感想書いていきます。

ジャンルはスリラーで上映時間は約99分です。

あらすじ

不幸なときだけ幸せを感じる男の物語。一人息子と綺麗な家に住み、一見何不自由ない弁護士。しかし彼の妻は不慮の事故により昏睡状態に陥っている。境遇を知り、毎朝ケーキを差し入れる隣人、割引をするクリーニング屋、気持ちに寄り添う秘書など同情心から親切になる周囲の人々。この悲しみはいつしか心の支えとなり次第に依存してゆく。ある日、奇跡的に妻が目を覚まし楽園を失った男はやがて自分自身を見失い、暴走する…。

Amazon商品ページより

登場人物

✔️

弁護士

妻が事故で昏睡状態になり憔悴している

✔️

事故で昏睡状態になっている

✔️息子

母の事故の後塞ぎ込んでいる

ピアノを習っている

✔️クッキー

一家の飼い犬

ストーリー感想

pity
©2018 Neda Film, Madants, Faliro House

浸る不幸

誰かに同情してる時の様子をーー

再現してくれと言われても難しい

そんな時人はーー目を伏せうなだれて言う

“何て言ったらいいか…”

“気をしっかり持って”とか何とか

昏睡状態の妻がいるという境遇で周囲からの同情を引き、その快感に依存し浸る夫という序盤からかなり不気味なテイストで進んでいき引き込まれる映画でした。

毎日気を使いケーキを持ってきてくれる下の階の住人を時間前から待ち構える、
わざとクリーニング屋に行き同情を誘うなど序盤から不幸に依存する狂気が垣間見えます。

父を殺された依頼人が一夜で白髪になった話と自身は全く白髪が増えていないこと、
このことからも今の状況をストレスと感じていない様子も見て取れました

息子に明るい曲を弾くと近所に誤解されるなど今の状況を手放したくない様子も強く描かれています。

毎日ベットの上で泣き続けているのは何のためか後半になるとこれすらよく分からなくなってきます。

枯れ果てるほど泣いたのか…それともこれも浸っているだけなのか…

主人公の独白とも思われる文章が所々で挟み込まれますが、

当たり前だがーー

悲しくもないのに泣くなんてとてつもなく難しい 

この文章を見ても悲しんでいたのは本当なのかもしれません。

しかし映画の話になった時、映画の涙は偽りが多いなどメタとも取れる発言もあり、彼の不気味さが引き立っています。

妻が亡くなった時のための歌を息子に聴かせるところなどはなかなかの気持ち悪さです。

そして目覚めないと思っていた妻が目覚めた時、彼の狂気は加速していきます。

ストーリー感想(ネタバレあり)

pity
©2018 Neda Film, Madants, Faliro House

望まぬ奇跡

目覚めないはずの妻が目覚め彼は自身の幸福を見失っていきます。

妻に乳がん検診を勧めたりなど、僅かにでも不幸な可能性を探っている様子が見てとれます。

いつもの住人からケーキも貰えずに催促を迫るところ、
クリーニング屋に妻が目覚めないと嘘をつくなど周りからの同情や関心を引きたい様子がより顕著になっていきます。

さらに父を殺された依頼人が同情を引いている様子を羨望ともとれる目で見てしまいます。

とんでもない目付きで見ているので狂気がものすごいです。

息子のピアノを指の長さやピアノを壊すことなどで新たな不幸を作ろうと奔走し始めるところなどもかなり怖いですね。

この快感を忘れてた

泣けないのは危険らしい

眼球が爆発して視力を失うかもしれないしーー

脳動脈が破裂する恐れもある

妻が目覚めて泣けなくなり自身に催涙ガスを使い泣いたところで出てくる独白ですが、
どれだけ不幸の中で幸せを感じたいのか恐ろしくなってきます。

不幸に身を置くために彼の狂気はいよいよ行くとこまで行ってしまい、
クッキーを沖に捨て、担当している事件を模倣して父、そして下の階の住人を殺し新しい不幸の中で涙を流し終了します。

その中でクッキーが帰ってくるという新しい望まぬ奇跡が起きているとも知らずに…


正直自分みたいな人間には気持ちはちょっと分かってしまう映画です。

自分みたいな底辺野郎だとこの気持ちはわかる部分が多々あってしまいました。

底辺の中で自分に価値を見出すとしたら、
それは底辺であるという不幸に価値を見出してそこに存在価値を感じたり依存ようとしてしまうんですよね

さすがにここまでの狂気には駆られませんが。

この夫の場合は弁護士など社会的地位もあるので自分とは比べる余地もないのですが、
だからこそ大きい不幸でないと浸れないという部分もあったのかなとも思います。

ただこの夫の場合いつから不幸に浸っていないといけなくなったのかが分からないので、
実は妻の事故も怪しいのでは?ちょっと勘ぐったりもしてしまいますね。

映画全体としては夫の独白ともとれる文章が1つ特徴的ですね。
主人公の心情が合間で合間で文章として出てきて理解できるかは別として読み取ることは出来たりします。

他にも画面の明るさ、この映画は絵面だけなら明るく爽やかな雰囲気すらあります。

これの効果で本来なら喜ばしい雰囲気の中で夫の異常性がより際立っていたと感じました

pity
©2018 Neda Film, Madants, Faliro House

夫の俳優の方も感情の揺らぎを表に出さないながらも狂気だけは纏わせていくという素晴らしい演技でしたね。

誰しもが持つ部分をちょっと極端にして出した映画ですが、
ちょっと自分には身につまされる部分があり引き込まれる映画でした。

まとめ

pity
©2018 Neda Film, Madants, Faliro House

不幸への依存という大なり小なり誰しも持っていると思う部分をより肥大化させた映画であるPITY。

共感と嫌悪が両立する良質なスリラーホラーで身近な作品でもあるので個人的にはかなりおすすめです。


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