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製作国
トルコ
監督
エミール・ハリルザデー
脚本
バキ・イルハン
出演者
イスマイル・フィリズ
エスラ・ビルギチ
バキ・イルハン
セルダル・デニス
ネヴザト・イルマッツ
国が変わると戦士の戦う理由や信念も変わる。
その変化の中で時に物凄い厨二心にザクザク突き刺さるような描写や設定に出会うことがあります。
今回はそんな映画シャドー・ウォー 聖戦(原題:Adanis: Kutsal Kavga)感想です。
ジャンルはアクションで上映時間は約114分となります。
厨二心に刺さりまくる設定とアクション
主観が変わって見えてくるイスラム教についての知識
目次
あらすじ
紀元前、アークは秘密の場所に埋められる。時は流れ2005年。元諜報員のイルハンは、アークの地図を守る“献身者”である兄・フセインを救おうとする。テンプル騎士団によって瀕死の重傷を負ったフセインは、地図の入った首飾りをイルハンに託すが…。
U-nextより
登場人物
・イルハン・ハシモーグ
元諜報員で現在は道場でハンカンドーを教えている
息子と娘がいる
・ジェムレ
諜報員
イスラムの戒律に反発している
・フセイン
イルハンの兄
テンプル騎士団に追われる“影無き者”
・テオドル・ジュリウス
テンプル騎士団総長
アークを求めて地図を所持しているフセインを狙う
・ロクマン
医師
孤児だったイルハンとフセインを引き取った
5世紀に跨る死闘
ムハンマドの血を引くサイイドの手によって守れている地図に記されている隠されたアーク。
このアークが世に再び出たら世界の定説が覆るという…
そんなアークを巡る戦いが記されたこの映画、というわけでいきなり冒頭は戦いで始まります。
この戦闘、言うなればキレッキレのジョン・ウィックシリーズのガンフーのようなアクション。
ヒゲのおっちゃんがコート靡かせて銃と格闘で戦うだけなのに何故こうも格好がいいのか、
兎にも角にももうこれだけで掴みは完璧な始まりでした。
視点は変わり主役のイルハン、そしてヒロインのジェムレへと向かいますが、この2人いきなりそれぞれの場所で喧嘩して交流されてしまいます。
イルハンは酒を飲む飲まないの流れで周りの客に絡まれて、ジェムレは妻と娘を虐待されている声を聞きご近所さんにいきなり殴り込みをかけるという経緯です。
元諜報員と現役諜報員がこれでいいのか?と思いますがこれはあちらの文化的には全然OK!くらいのラインなんですかね?とちょっと気になったりします。
これに限らず文化的な感覚の違いというのが結構見受けられる映画でした。
そして勾留先で気まずくも再会する2人。過去に別れたっぽい感じですがそれは戒律についての考えの相違という内容。
これは向こうでは勝手な考えながら結構攻めてそうだなと思う会話の内容でしたね。
特に女性の服装についての会話ですね。
最近このことでイランで問題になったというのもあり実はこれは相当ライン攻めているのではと感じましたね。
そんなこんなしている裏で秘密結社テンプル騎士団が暗躍しているという流れになるわけですが、
宗教や科学などを利用して人や国の精神を支配していくという。これまた最近は他人事でもなくなった気がする設定の相手が出てくるわけです。
ハイテクな機器を用いながら冒頭の男、フセインを追っているテンプル騎士団とその幹部テオドル。
フセインはアークの場所が記された地図を持つサイイドであり通称“影無き者”と呼ばれる選ばれた戦士であり、巻き込まないために過去にイルハンを置いて行ったイルハンの兄でした。
再びテンプル騎士団の放った暗殺者100人に襲撃されるフセインですがナイフやら斧やら使ってまたまた格好良く返り討ちにしていくという、
いやー、なんでヒゲのおっちゃんがコート靡かせて戦うだけでこんなに格好いいのでしょうね(2回目)
それでもやっぱり多勢に無勢、そんな時に事情を聞いたイルハンが駆けつけ兄弟はもう再会を果たします。
地図をイルハンに託し自身は敵を引きつける最後まで格好いい兄と戦士の鑑ヒゲのおっちゃんフセイン。
強すぎて頼れるが故の退場の早さって感じでちょっと勿体無さすら感じるレベルですね。
まぁ、イルハンも大概やばいやつなんですが。
フセインから託された地図、それに纏わる使命、献身者となるイルハン。
献身者とは正義感の強いものが選ばれ、英才教育を受け普通の生活は送れない、ひたすらに姿を隠し地図を守る。とても厨二心をくすぐる設定の存在でした。
やだ、超格好いい…
献身の書を読み歴代献身者の戦いを知るイルハン。
敵に狙われ家族を奪われる苦しみが待ち受ける、それて耐え忍び敵に狙われるまでは決して血を流してはいけない…
しかし、敵に見つかれば血に濡れるのはお前の剣だ。
やだ、超格好いい…
イスラム教的な側面もかなり強い設定ですが、字面と絵面だけで格好良すぎるこの設定。
隠れ耐え忍びながらも一度敵に見つかれば最後に勝つのは己とか何ですかこの格好良さは。
アクションの良さと設定の格好良さでこちらの厨二心は刺されすぎてズタズタになってしまいましたよ。
こういうケレン味あってこその宗教混じえたアクション映画の良さだと再認識出来ますね。
その後のテオドルとの対峙もまたカッコいいんですねぇ。
呼び出しに単身やってきて囲まれながらも自分の持ってる情報と命を交渉材料に堂々と交渉と。
相手に自身を生け取りにする以外の選択肢を与えないというここは元諜報員の設定が微妙に生きていた気がしますね。単純にイルハンの気性の問題な気もしますが。
ここでイルハンは相手から完全に一目置かれるんですが、それが今までの献身者との違い気性の差ですね。
今までの献身者達の耐え忍ぶ守りの精神ではなく積極的に攻めてくる攻めの精神、
宗派的には異物ですがそれ故にこの5世紀に跨る戦いに変化をもたらすと今まで巻き込まれ系だったイルハンがここら辺で明確に主役としての個性を出せた気がしました。
本人がやばそうなら当然狙われるのは周りということで息子と娘が狙われるわけですが、
ここら辺から駆け足になってしまったのがかなーり勿体なかったですね。
息子と娘は助けられず自身も地図を奪われ(いつペンダントの中って気づかれたんだろう)復讐心のままテオドルを手にかけた…
と見せかけて実は裏で生きていた兄のフセインと協力して息子と娘を助けてもらい奪われた地図もフセインが襲撃して取り返していたと。
隠し球にしてもいくら何でも都合のいい便利な存在になりすぎなフセインに、えぇ…この展開は勿体無いなぁと思ってしまいましたね。
一言でこの後半の畳みかけを言うなれば打ち切りハッピーエンド。
あれだけアークが話の中心となっていたのだからせめて奪われかけての兄弟のコンビネーションでギリギリの攻防戦くらいは欲しかったですね。
結局異物的な存在であり独自の存在でもあるイルハンより献身者に沿った考えのフセインが全て持っていたのも残念ポイント。
ただここは宗教的にはもしかしたらとんでもないデリケートな部分でガス抜き的な展開だったのかも?ともちょっと思っており、
やはり教えに沿った人間こそが相応しいという結論に持っていきたかったのかなと完全な憶測と妄想で納得することにしました。
ただそれを抜きにしてもこの最後の駆け足だけはいただけない。
途中まで厨二心にビンビン来ていい積み重ねが出来ていただけに最後まで厨二を積み重ねて欲しかったというのが本音ですね。
何だかんだで最後も格好良いんですけどもっともっと積み重ねてくれよって惜しい意味での残念さですね。
宗教的な側面は発見が多い
この映画はトルコ映画ということでかなーりイスラム教の戒律や思想などのお話が出てきます。
これはお国柄的な要素なので当然なのですが、そこら辺で発見があったり共感の難しいところがあったりなどまぁ様々でした。
特に献身者についてですね。
献身者という名前の通りアッラーに全てを捧げているような戦士なのですが、この献身者のスタンスというべきでしょうか。
これが自分が抱いているイメージとは大分異なっている部分が多々ありました。
当然ですがイスラム教の教えに忠実でなければ資格はないわけなんですが、これがイルハンとフセインの2人からなぜフセインが最初に選ばれたのかというのかという話です。
ロクマンの誰かに攻撃されたら?という問いに対してイルハンはやり返すと答え、逆にフセインは耐えると答えるわけです。
これこそがイスラム教ひいてはアッラーの教えに忠実な考えというわけで献身者にはフセインが選ばれたわけですね。
その後のイルハンが地図を引き継ぎ読んだ“献身の書”の内容にも
“忘れるなアッラーは蛮行を好まれない”と基本的には受け身の姿勢であるという。
自分は宗教というものに碌に詳しくなく、日本に住んでいる身としてはイスラム教というのは正直なところお世辞にも好ましいイメージだけではないわけなんですがここら辺は印象が変わるような発見でしたね。
当然国によって描かれ方は変わるものなのである程度フィルターがかって良くしている部分もあるのでしょうがここら辺は1つ別の視点というものを見れた気がします。
ラストの終わり方を見ても戒律にはやや反しているイルハンではなく元々のフセインが事態を上手く収めたのを見ても、
教えに忠実な方こそ献身者として相応しいというそういう映画的なカッコよさより宗教としての側面を優先したそんな印象も受けましたね。
こう書くとイルハンは破戒的な人間なのかというとそうでもなく寧ろばっちり敬虔なイスラム教徒ではあったりします。
これはジェムレとの会話でもよく分かります。
というかジェムレとの会話は上でも書きましたが宗教的には大分攻めていると思いましたね。
何だかんだで敬虔なイルハンに対してジェムレはかなり破戒的な描かれ方をしています。
服装やメイクなど思いっきり自由にやっていますし女である前に1人の人間として扱われたいなど、
こっちだと割と当たり前のような考えで議論しているというのはやっぱり価値観の違いをどうしても感じてしまいますね。
ここら辺は定期的に大きな事件や議論になったりしているのを見受けますしね。
それに対して人を見極めるには現実を見る、見たいものだけ見るななどイルハンとの所謂ディスカッション。
こういうのが入れられるだけでもそこまで押し付けが強い訳ではないお国柄なのかなとは思えましたね。
映画と同じで視点というか主観が変われば見えてくるもの見せてくるものが変わるということで1つ映画の醍醐味を味わえた部分でした。
まとめ
厨二心にガンガン来る設定のアクション映画だった本作。
ストーリー的には竜頭蛇尾という感じですラストの駆け足っぷりが本当に勿体無いなと思う部分ではありましたが、過程においては十分話もアクションも堪能できて楽しめました。
宗教的な側面もありますがこれは個人的には嫌味や嫌悪といったノイズには繋がっていなかったので単純に発見のある要素でしたのでちょっと勉強になったなくらいの感じですね。
いい年こいてまだ残っている厨二心にビンビン刺さりましたしちょっとした勉強にもなった、国としての独自性もありましたしいい体験でした。
強いて欠点をあげるとしたら登場人物にヒゲのおじさんが多すぎて個別の把握するのが手間取るくらいですかね。
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