【映画】これが独り立ちの物語 クリード 過去の逆襲 感想

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クリード 過去の逆襲
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遅ればせながらクリード 過去の逆襲を見てまいりました。

ロッキーシリーズは大好きなのでこのクリードシリーズも当然大好き。
ですが、今回は色々な意味でクリードというシリーズ、存在の独り立ちの物語となっていましたね。

この展開はこのシリーズにおいては間違いなく必要な物でもあり、それでいてやっぱり物足りなさを感じてしまう部分でもあり、自分の頭の中でも結構賛否が巻き起こっている話でしたね。

とはいえ面白さは間違いなく保証されていた映画だったので満足はしております。

というわけで感想を述べていこうかなと思います。

概要

家族同然だった幼馴染が宿敵へ!

ある日、クリードの前にムショ上がりの幼馴染デイムが現れる。実は、クリードには家族同然の幼馴染を宿敵に変える誰にも言えない過ちがあったのだ。

クリード 過去からの逆襲公式サイトより

独り立ちして期待に応えることの難しさ

ロッキーシリーズから始まったこのクリードシリーズ。

今回はその登場人物にとってもシリーズにとっても親と言えるロッキーという存在から独り立ちした物語や構成となっていました。

まずはストーリー。

今までの2作はアポロの息子という肩書き、ロッキーに対しても含む因縁など過去のシリーズからの要素で引っ張っていた部分が多分にあったストーリーでした。

実際にそれに惹かれましたし、それを起点とした物語で感動もしていました。

ですが、今回のストーリーの内容は違う。

アドニスという人物の過去の因縁を焦点に当てたことで彼個人の物語となっています。

父アポロの肩書も血も因縁も関係ない、ロッキーは登場すらしない(ちなみに作中内で特に理由も語られません)、完全にアドニス・クリードの物語です。

よく考えたら確かにアドニスの過去というものはあまり描写はされてはいなかったんですよね。
アポロの不貞の子であり、荒れていた孤児だったというのは分かっていてもどういう環境でどういう交友があったのかまでは語られていない。

ですのでアドニス個人の物語にするならそこを埋めるような内容になったのは必然的とも言えるでしょうね。

そしてその内容なんですが、まぁここら辺は想定通りというかよくある内容かなと言う以上の感想には正直なりませんでした。
だからと言って悪いというわけでも感動しなかったというわけでもないんですけどね。

孤児院で兄弟同然に過ごしていた兄貴分が自分のせいでムショ入りしてそこから逃げた負い目や後悔、
そこからの相手の負の熱量により因縁で対決とまぁざっくりとしたまとめ方ですが内容としては予想通りで驚きはないですよね。

ただここまで積み重ねてきたアドニスという人物を過去のシリーズに頼らず完全に主役にするには
やはりこういった落ち度や人間臭さといった物が絶対的に必要になったとは思うので驚きこそないものの必要な物語だったなとは思います。

そしてこのシリーズなら最も大事なボクシングシーン。

ここでも独り立ちのためか色々と変化をつけてきていました。

ぶっちゃけこのシリーズってボクシングシーンだけで100点取れるシリーズなんですよ。

例のテーマを流しながらスポ根みたいな特訓シーン、リアルかつ迫力ある泥臭いボクシングを見せる。
これだけで自分も含め多くの観客は満足するシリーズです。

ただ今回はクリード独り立ちの映画。

ロッキーの例のテーマという絶対的な加護にすら頼らず(微妙に似た曲調のは混ざります)試合でも精神的な部分を強調してリアル感も少し薄れていました。

これは思い切った決断でもあり好みが分かれる部分だと思いますね。

あのテーマが使われないのはもちろんですが、試合内容ですよね。
公開前にはじめの一歩など日本の漫画などを参考にしたという話がありましたが実際漫画的、アニメ的な演出がありました。

途中からアドニスとデイム、試合をする2人の世界に入って霧が立ち込めロープは檻に変わるなど精神世界的な描写。
これは正直なところ自分はイマイチ乗り切れない部分がありましたね。

ロッキーシリーズがリアルなボクシングだったかはともかくこのシリーズの試合にはリアル感があり泥臭さがあったと思うですよ。
ですが今回のメインとなる2人の試合はこの精神描写が挟まって一気に最終ラウンドまでいってしまう、
いつものテーマがないのも相まってやっぱ観客や身内の反応あってこそのボクシングかなぁと個人的には思ってしまったんですよ。

公開後のアニメの予告とか見るとこれこそが独り立ちしたクリードシリーズの色ということなんでしょうけど、
自分みたいな例のテーマでボクシングをする姿を見るのに感動するというのが遺伝子に組み込まれてしまった人間にはやはり物足りなさを感じてしまったのが本音です。

あのテーマのかかる中でボクシングする姿を見にいってるようなもんですので。

テーマ曲もない、試合シーンも精神世界寄りにしてしまった本作ですが、だからダメってことでは全くなくあくまで好みの問題だと思います。
これで半端に例のテーマ曲など入れてしまったらそれこそ本作でやろうとした独り立ちという部分はブレてしまいますからね。

独り立ちさせるのにあたってこの決断は間違いなく尊重されるべき部分です。
良いか悪いかで言ったら間違いなく良い決断、しかし自分の好き嫌いというか好みだったかと言われたら、やっぱ親の方が好きだなぁとなってしまったというだけの話ですね。

映画見た後に体動かしたくなるような情動が沸き起こらねえ。

あっ、ちなみに過去の対戦相手だったコンランやヴィクターとのシーンはかなり良かったです。
これはアドニスが今までのシリーズで自分で得た交流関係だと思うので彼らが出たのは結構嬉しかったですね。

特にアドニスの因縁に巻き込まれてとんでもない災難にあったヴィクターと仲良くしているのは普通にほっこりしてしまいました。

これは自分が炎の宿敵の試合でのヴィクターの描写が好きすぎたというのもありますが。

夢への焦燥感

この映画で自分が印象的に感じたのがこの夢というものへの焦燥感ですね。

これはアドニスというより対戦相手であるデイムの部分になってしまいますが。

こうなってしまうのは前作でもそうでしたがアドニスより対戦相手の方が切実に見えるというのもありますね。

やはり負け犬が這い上がるというのも1つの見どころというのもあり、そこら辺の要素がある相手の方が印象的になりがちと言いますか。

前作のヴィクターは父の汚名を晴らすという部分がありましたが、今回のデイムは至って個人の部分の話。
ここも今回のアドニス自身の物語となっている部分に良く合っている相手だったと思います。

デイムはアドニスが起こしたトラブルで服役していてボクシングでチャンピオンになるという夢がありながらももう既にリミットが近づいている、というかアドニスが引退している以上もう過ぎているといってもいいですね。

夢を追い、未来を描き、しかし時間というものによって否応なく訪れる焦燥感。

これが刑務所に入った経緯と合わせてアドニスとデイムの確執や因縁に繋がっていくのはベタでありがちですけどやっぱ王道展開ですよね。

自分が立ちたかった場所にあの日逃げたあいつがいて、そして自分には時間がないと、これで狂ってしまうのは良く理解出来る部分です。

とはいえデイムを印象的と言いましたが、共感出来るかと言うと全然そんなことはなく。

自分がタイトル戦に参加するために仲間にヴィクター襲わせて拳を破壊するというのはどう考えても悪辣な行いで、
同じボクサー、そして抱えている焦燥感があるなら絶対に踏み越えてはいけない行いだったと思います。

これは対戦相手として見れば感情的に盛り上がる相手となるんですが、負け犬の物語として見ると共感出来ないというのはやはり苦しい部分ではありましたね。

ここら辺はやっぱ前作のヴィクターの方が試合前、試合中共に感情移入出来て良かったんですよ。

当時ボロ泣きしておりました。

前作と同じことをしてどうすんねんって話ですからデイムを悪辣にするのは分かるんですが、そこからの試合後の和解ですよね。

この和解そのものは全然良いんです。寧ろ良い内容だと思いました。

再会した時にアドニスが負い目を感じて腹を割って話せず謝ることも出来なかったそこが起因していた部分だなと感じましたしね。

ただヴィクターに対してやったことを考えるとうーん、となってしまうのも事実。互いのわだかまり、デイムが抱えている焦燥感、
それでこうなったのは分かるんですがやはりケジメは欲しかったかなと。

ここからまた服役だと救いが無さすぎるので綺麗に終わるのであればそこら辺有耶無耶にした方がいいんでしょうけどね。

対戦相手にもしっかりと焦点当てた以上はその最後まで責任持って描写した方がいいかなと思いましたね。

まとめ

ロッキーという親から独り立ちした本作。

個人的には親の偉大さを感じざるを得ない映画でしたね。

悪くはないんだけどもし全く同じ内容でロッキーが出ていたら?特訓や試合中にあのテーマが流れていたら?と、どうしてもそんな考えが頭によぎってしまうんですよね。

ただやろうとしたことは間違いなく絶対に必要な内容。アドニスという個人を掘り下げる意味でもやはり頼れる親から離れるの必要だったでしょう。

単品としては間違いなく面白いんですが、シリーズとして見ればやっぱりあれやこれが欲しかったなぁというそんな贅沢な悩みが出てくる映画でした。

ちなみに本編の後に流される今後展開する予定らしいアニメだけはちょっとどうかと思いました。

なんかメチャクチャ時代飛んでとんでもない設定出てきているので、ここまで行くと独り立ちしすぎだろうと突っ込んでしまいました。

このアニメの予告見ている時に本編の記憶が飛びかけたのは内緒。


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