この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
製作国
中国
監督
ヤン・ビンジア
脚本
ヤン・ビンジア
出演者
シェー・ミャオ
ガオ・ウェイマン
シャン・ハオ
ジャン・ディー
今回は背中で語る盲目の男のアクション映画盲剣楼(原題:目中无人)の感想。
先に言っておくとアクションが滅茶苦茶カッコいいです。
主人公の盲目の設定だけでなく各登場人物の設定や性格をしっかりとアクションに反映させており、
個人的には今年の映画の中でもトップクラスにアクションが好みの映画となりました。
人物描写はやや薄めな部分がありますが主人公のイーのキャラや性格を考えればこれで十分と言えるでしょう。
時間も短めですので寡黙な男の秘めた激情とアクション、これらを是非見てほしいですね。
ジャンルはアクションで上映時間は約77分となります。
目次
あらすじ
盲目の賞金稼ぎのイーは、捕らえた放火犯を伴い、涼城県を訪れた。そこで、婚礼を控えた酒家の娘イェンに出会う。しかし、婚礼中にイェンの兄を追って現れた極道のユーウェン家の手先・チウファンが兄や婚約者を無残に殺害し、更にイェンはユーウェン家の次男インに凌辱されてしまう。普段は誰にも干渉しないイーだったが、イェンを放っておけず、復讐を手助けすることに。二人は洛陽に向かい、イーはイェンに身の安全が確保できる場所を教えるが、イェンは一人で婚約者と兄の仇を打とうとチウファンの元へ向かったところ、捕らわれてしまう。状況を知ったイーはイェンを救い出そうと決意する。
Rakuten TVより
盲剣楼を配信している配信サービス
※2023年10月11日時点
見放題 | レンタル | |
Amazon Prime Video | ✖️ | ◯ |
Netflix | ✖️ | ✖️ |
U-NEXT | ✖️ | ◯ |
hulu | ✖️ | ✖️ |
DMM TVプレミアム | ✖️ | ✖️ |
登場人物
・チョン・イー
盲目の賞金稼ぎ
立ち寄った村で出会った酒場の娘イェンが婚約者と家族を失い濡れ衣を着せられたのを見て義憤で力を貸す
・ニー・イェン
酒場の娘
自身の婚約の日に兄のトラブルに巻き込まれ家族と村の人間、そして婚約者を失い復讐を誓う
・チン
イーの古くからの知己
賞金稼ぎのイーに彼の目の治療のための資金を稼がせるために仕事を斡旋している
・ユーウェン・イン
朝廷にまで影響力を持つ極道のユーウェン家の人間
令嬢との婚約のために行った盗掘を協力させたイェンの兄を追い口封じのために彼もろとも村の人間を殺害した
・ホー・チウフォン
ユーウェン家の手先
盗賊一家の3代目でユーウェンの力を借り牢から出た
正義なき世で正義を成す
荒れた世の中で盲目の賞金稼ぎとして生きている男イーがたまたま立ち寄った村で行われた非道と生き残った女性の復讐に手を貸すために義憤で力を貸すという本作。
盲目ということで座頭市を意識はしているのですが、そこら辺は中国B級だとお約束なので分かった上で見てる以上はスルーしておきます。
ストーリーとしては王道もいいとこ、法で裁けぬ悪が寡黙な男の義憤によって裁かれると、これは古今東西みんな大好きなプロットと言えるでしょう。
77分と短い時間ながらもこれらをしっかりと纏めており、満足度は高いストーリーとなっております。
寡黙な男を映し出す2人の女性
本作の主人公イーは盲目でかつ実に寡黙な男として描写されております。
これがこの映画の人物描写がやや少なめになっている部分ではありますが、この少なさはイーという男の性格を見れば正解と言えるでしょう。
イーが寡黙で自分のことを語らないのであれば、他者との関わり合いでうっすらと見せなきゃならない、ということでイーと関わる2人の女性がイーという人物をそれとなく映し出してくれます。
その2人の女性というのがイェンとチン。
ますばイェン、彼女は“動機”となる女性ですね。
たまたまイーが立ち寄った村で出会い彼女の婚礼に酒を飲むために参加させてもらい、その日に彼女は兄も婚約者も失ってしまう。
更には力を持つ極道が相手故に役人から濡れ衣まで着させられてしまうと不幸な女性となっています。
意外なことに彼女とイーの交流は実はそこまで深くなかったりします。
立ち寄った村で少しだけ世話になった女性が非道な目に合うのを見て力を貸すというだけで心を通わせるような交流はないのです。
ですが逆に言えばその程度のことでも義憤で力を貸すというイーの人間性が垣間見えるとも言えます。
寡黙なイーが彼女の件で1つだけ自分を出すように言った言葉。
「人を殺せば命を持って償うのが道理」
これこそが無法な時代で賞金稼ぎとして生きる彼の正義と義憤を表していると言えるでしょう。
最後には今までの稼ぎをイェンに渡して酒屋をまた始めるようにと言伝で伝えたりなど彼女はイェンの渋さという物を引き出してくれていましたね。
もう1人の女性チンはイーとは古くからの仲である事が匂わされています。
かつての反乱の際に共に戦い、彼が視力を失った後の10年間、彼の目の治療のために彼に10年間賞金稼ぎとしての仕事を斡旋して治療費を稼がせていると互いに信頼し合っている仲です。
この目の治療、結果としてはそんな方法は無くイーに生きる希望を与えるための嘘だった事が分かりますが、
これは裏を返せば10年前のイーは生きることに絶望していたということ、だからこそそれが分かってもイーはチンを責めることなど何一つしない。
ここで生きる道という物を定め切っている男の覚悟という物が伺えるようで惚れてしまいそうになります。
最終的にチンはインに捕まり拷問により惨たらしい最期を迎えることになりますが、
これによってイーにも明確な個人として戦う理由“復讐”を背負わせたと言えます。
イェンからは義憤をチンからは復讐を背負い戻らぬかもしれない最後の戦いに身を捧げる、その姿がたまらなく渋くて格好いいんですねぇ。
寡黙な男の人となりを本人の口から語らせるのは無粋。周りの人物によって醸し出させるというのがやはり正解でしょう。
不条理が続いてる世で目は見えずとも心で正義を見据えて戦いに臨む。
最初から最後まで決して激昂せず寡黙に華麗に敵を討ち倒していくこのイーという男の生き様が最初から最後まで最高に格好いい映画でした。
悪辣ながら小物な極道
この映画のヴィランとなる極道ユーウェン家。
反乱の際に乗じて朝廷に潜り込み影響力を持つ存在にまでなり役人すら逆らえないという存在です。
彼らはというか一家の中の1人インは大物でありながら小物と言えるような存在でいいヴィランとして活躍してくれました。
イェンの家族と婚約者を殺害する、イェンも拷問する、チンは拷問の果てに殺害、更には権力も利用しているとやっていることはかなり悪辣なのですが。
事の始まりが将軍の令嬢と婚約のためにやった自分の盗みの口封じに失敗した事から端を発していること、
それらが失敗して兄に折檻を受けているなど背景とやってることの割にはどうにも大物感に欠ける。
でもこれがイーとの対比になっていて中々にいいんですね。
寡黙な男に相対するのが権力を持った小物というのは実に映える、
法なき世で正義を成すというストーリーならやはりこれくらいの絶妙な小物さ漂う外道で無ければいけませんね。
強いて褒めるところがあるとすれば実力自体は確かなことと無様な命乞いをしなかったくらいでしょうか。
この部分まで欠けていてはイーの活躍に翳りが見えてしまうのでいい塩梅のヴィランでしたね。
設定や性格を活かした最高のアクション
この映画のアクションはかなりいいです。
何がいいって登場人物の設定や性格を存分に活かしているようなアクション、
更にそこにケレン味とキレの良さが混じってアクションだけでも何度も見返したくなる格好良さです。
まず何といってもイーの動きがキレッキレ過ぎること。
盲目の賞金稼ぎというだけでも厨二心をくすぐるのに動きのキレまで合わさってしまったらもう最強としか言えません。
そして登場人物の設定や性格を拾ったアクションの種類。
イェンが酒屋という設定で唯一残った酒を貰うのですが、これを戦闘にふんだんに活かしている。
動きの早い敵には酒を吹きかけ臭いで辿り返り討ちにする。
もうこれだけでイーの盲目とイェンの酒屋の設定を活かしていると言えるのですが、最高なのは最後の戦い。
雪降る中で単身ユーウェン家に乗り込んで無双するのですが、ここでも酒を活かす!
何と酒瓶を切って酒を撒き散らしそこから鞘と刀を擦り合わせた生じる火花でエンチャントファイアをするのです。
これを初めて見た時はキャラの設定を活かした事、派手にケレン味あるアクション、そして雪の中で燃える火と刀に残った火を残心で静かに消すところと、
あっ、これはもう駄目だ、惚れてしまうと唸ってしまいましたよ。
更にこの後に行われる最後のインの戦いも実に性格が出ていていいんですよ。
仲間がいても諸共イーを弓矢で射抜くところや遠距離からチクチクと嫌らしくイーを消耗させるところなどインの性格が出ていて実に好みです。
このように色々見どころがありますが、振り返ってもやはり特筆すべきはイェンの酒を使うというところでしょう。
この戦いは彼女の復讐であるのですからイェンの酒を使って活路を切り開くというのは作劇的にも完全にハマっている。
アクションのケレン味や質の高さだけでなくストーリーの要素もしっかりと混ぜるお手本のようなアクションでしたね。
マジでエンチャントファイアだけは何度も見返したいくらい好きです。
まとめ
寡黙な男とケレン味のあるアクションと実に自分好みの映画でした。
中国B級映画なのでアクションの質自体は全く心配はしていませんでしたが、本作のアクションは期待を超えまくってくれましたね。
登場人物の設定や背景をアクションの中でもしっかりと活かす、簡単なようで意外とおざなりにされている映画も多い中でこの映画はしっかりとそれをやってくれたのですから。
ストーリー面でもイー本人は口数少なく周りによって彼という人物を魅せるようにするとこの渋さもたまらん出来でした。
映画自体も短くて見やすいですし(時間に関しては好みの分かれ所でしょうが)個人的にはかなりおすすめの1本です。
他の映画感想
他のアクション映画感想はこちら。