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製作国
香港、中国
監督
ハーマン・ヤオ
脚本
ハーマン・ヤオ
エリカ・リー
エリック・リー
出演者
アンディ・ラウ
ラウ・チンワン
ニー・ニー
ツェー・クワンホウ
フィリップ・キョン
映画バーニング・ダウン 爆発都市(原題:拆弹专家2/Shock Wave 2)感想。
ジャンルはアクションで上映時間は約121分となります。
前作は見ていないのでそこだけはご了承下さい。
目次
あらすじ
爆弾処理班に所属するフォンは、数々の事件を解決してきたエースだったが、爆発に巻き込まれ左足を失ってしまう。現場復帰を認められず、警察を辞めたフォンは、テロ組織・復生会によるホテル爆破事件の現場で、なぜか重体の状態で発見され…。
U-NEXTより
登場人物
・プン・センフォン
元爆弾処理班
爆発処理の事故により左脚を失った後、現場復帰が認められず自暴自棄になる
・ドン・チョクマン
フォンの元相棒で親友
・ポン・レン
フォンの元恋人
・マー
テロ組織、復生会のボス
記憶と怒りを巡る攻防
大規模な爆破テロを目論むテロ組織、その中心にいる主人公のフォン。
彼の記憶と怒り、この2つが鍵となり進んでいくストーリーのこの映画。
爆弾事件で失った左脚、そしてそこで使い捨てられたことに対する憤りと焦燥感。
これによりフォンが記憶を失う前に何をしたのか、そして記憶を失い何をなすのか。
この彼の行動の帰結を見る映画となります。
まずは記憶、爆弾テロ事件で現場にいたフォンが爆発に巻き込まれ記憶喪失となり、
現場にいたフォンは爆弾に精通している上に現場で大暴れしていたので容疑者となり警察に疑われ、
そして病院でテロリストが襲撃し彼を逃がすことで警察に追われることになります。
しかし、彼の元恋人レンがフォンへ「まだ任務は続けられる?」と告げ、記憶を失う前の自分がテロリストへの内通の任務を行っていることを告げられる。
前作からどれくらい地続きなのか分からないのですが記憶を失うことで繋がりが断たれるので今作から見ても問題ないある意味では親切設計な境遇となります。
このレンとテロリストによる2つの出来事これによって彼の記憶を巡る駆け引きが起きるわけです。
この記憶喪失設定、自分は前作からどれくらい地続きなのか分からないのですが、
記憶を失うことで今までと一切繋がりが断たれるので今作から見ても問題ないある意味では親切設計な境遇となります。
記憶部分に関しては陳述記憶が破損し、手続き記憶は残っているという状態。
陳述記憶の欠損は過去の言動や周囲の人間の記憶を失ううもので、この陳述記憶を失えば価値観も変わり別人になる可能性もあるというもの。
手続き記憶は体で覚えた技能が潜在意識に記憶されているというもの。
これによりアクションや爆弾知識については問題なく残っているわけですね。
爆発現場にいた自分は警察官だったのか、それともテロリストだったのか。
これが中盤までの1つの話の見所となります。
ただこの何者だったのかという部分については中盤ではっきり種明かしはされてしまいます。
ぶっちゃけると記憶を失う前はまさかのテロリスト。
これはなかなか攻めましたね。普通なら何だかんだで警察側なんでしょ?と思うのに思いっきり危険思想なテロリストへと堕ちていたという。
レンがそんな彼を偽の記憶を植え付けてまで内通者として仕立て上げようとしたのは、
テロリストだった彼に情状酌量の余地を与えるためという割と詰んでいる状態でした。
記憶に関してはここではっきりと明かされてしまうのですが、それでも記憶に関しての話は終わらない。
なぜならフォン自体はあくまで出来事を話として知り得るのと自身のフラッシュバックでテロリストだった自分を知るわけですから。
陳述記憶の話でもありましたが、彼は過去の自分を主観的な目で見れず客観視して別人となっている。
言ってしまえば元の自分と今の自分との駆け引きが行われるわけですね。
実はフォンは映画の最後まで記憶は戻りません。
記憶を失ったフォンが以前の自分を俯瞰して見た時どの道を選ぶのか、
自分の心に聞いた結果彼はどちらに付き最後にどういう決断をするのか決めることになります。
この記憶に関してのネタバレを中盤にしたにも関わらず、フォンの記憶を戻さないことで昔の自分との対立という形で最後まで記憶を巡る話をメインに持っていけたのは見事としか言えないですね。
次に怒りについて。
フォンは左脚を失った後それでも現場復帰を目指しリハビリをし、体力測定でも問題ない結果まで持っていきます。
しかし、それでも現場復帰を認められずに彼は人も物も使えなくなったら切り捨てられるとして強い怒りを社会に覚えるようになります。
自暴自棄となり親友のチョクマンとも恋人のレンにも自分から別れを告げ社会への復讐を考えるようになる…
そして過去の友人でありテロ組織復生会の中核人物ポーと組みテロ事件を起こし、更により大きなテロを目論んでいたところで記憶喪失となります。
社会から切り捨てられた怒り、そこに怒りを怒りで返せという復生会の理念に共感したことで核を使ったテロまで企てる…
過去のフォンは切り捨てられた怒りだけで完全にとことんまで突き進んでしまうテロリストとなっています。
この彼の怒り、そこに突き進むまでの過程をかなり丁寧にやっています。
記憶喪失の設定上合間合間でフラッシュバックとして挟まる形にはなっているのですが、それでも時系列通りにやってくれるので分かりやすくはありました。
まずはリハビリ、このシーンはなかなか長めに尺を取っており、彼の努力と彼の現場へ戻る強い気持ちを表現することによりそれが報われなかった絶望感をより強く引き立てていました。
そして親友と恋人との諍い、ここもどれだけ焦燥感に駆られて自暴自棄になっているのか分かりやすいくらい分かりやすく見せており、
特に障害者に市民は守れないという今の時代だとかなり攻めた台詞からもそこら辺伺えるようにしていましたね。
最後にマーとの接触、彼との交流により更に危険思想が増幅していく様も見せており、
何というか善良で責任感があった人間が壊れて染まっていく様を段階を踏んで丁寧に丁寧に表現しています。
しかし、記憶を失いリセットされ自分の境遇、行いを知った上で彼が選ぶのは警察官としての自分でした。
テロを防ぐのに協力し最後は自身を犠牲にしてテロを防ぎます。
これは過去の自分のケツを自分で拭いた結果でしかないのかもしれませんが、フォンという人間の本質はどちらだったのか。
人の怒りは一切を滅ぼす
希望が失われかけた時ある者が怒りを制しこの悲劇を防いだ
この冒頭の一節。
これからも分かる通り彼は怒りを怒りで返せといえ復生会の理念ではなく、怒りを制し善良な警察官としての本質で人々を救いました。
切り捨てられ者の怒りという社会的なテーマでもありますが、それを抱えて突き進んでしまうのか、それともそれを制し正しさを進むのか。
記憶喪失を使い1人の人間でこの怒りの向かう先の両面を見せる。
記憶と怒り、この両方を完璧に上手く使っていた脚本で素晴らしかったですね。
流石の44億円
この映画の製作費は44億円だそうでそれも納得のクオリティでした。
アクションの質の良さと人海戦術、この2つを掛け合わせて見応え抜群です。
単純に格闘シーンもいいんですが、左脚がないことを考慮したパルクールや街中での人混みの中を掻き分ける逃走シーン。
更には銃撃戦などもさまざまなシチュエーションを用意した上、かなり本格的で見応えしかなかったレベルでした。
しかもそれらが街中と空港内で行われるのですが、これを撮影するのは相当周囲を規制などしたんだろうなと思うくらいの規模です。
エキストラも尋常じゃない数ですし、アクションのためにここまでやれるのは正直ちょっと羨ましいレベルですね。
資金をかけた上で撮影するために場所や人をしっかり確保する…
映像での説得力を持たせるのに最も分かりやすく大変なアナログなやり方ですが、ここに妥協してないからこその見応えある映像やアクションが表現が出来たんでしょうね。
まぁ電車の車両や爆発のCG部分はちょっと違和感残していたんですが。
まとめ
記憶と怒りというテーマで進む映画な本作。
話としては中盤でさっさとネタバラシする分かりやすさを見せた上で、それでもフォンの結末が気になる構成にしていたのは見事。
記憶喪失を使うことで1人の人間の自棄と本質を多面的に見せることに成功していたのは素晴らしかったです。
アクション、映像ともに見応えもありましたし隙が無い良い映画が見れました。
前作との繋がりに関しても記憶喪失にしたことでそこら辺を気にしなくて済むのも良かったですね。
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