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製作国
アメリカ
監督
D・J・カルーソー
脚本
メラニー・トースト
出演者
レイニー・クアリー
ジェイク・ホロヴィッツ
ヴィンセント・ギャロ
世の中には無条件で生理的嫌悪感を催す相手というのは多々います。
そんな人間に複数、しかも自身は手の届かないところで大切なものが襲われたら…
今回はそんな映画トジコメ(原題:Shut In)感想です。
ジャンルはスリラーで上映時間は約89分となります。
こんなこと書きましたがこれは表面的な部分、実際は狭い部屋での様々な自身との対峙がメインな映画です。
この映画の見どころ
・無条件で嫌悪感を感じる設定の悪役
・己の人生との対峙と克服
目次
あらすじ
ジェシカは、祖母が遺してくれた家から引っ越す準備をしていた。薬物中毒のロブと決別し、2人の子供を連れて新たな土地へと移り住むためだ。出発の時間が近づく中、ロブが居候先のサミーを連れてやって来るが、冷たくあしらわれたロブは怒りを露わにして貯蔵庫にジェシカを閉じ込める。そこは、重いドアで閉じられ内側からは開かない密室だった。ドアの外で娘の叫び声が聞こえる。さらに、サミーは小児性犯罪者と噂されていた―。
Amazon商品ページより
登場人物
・ジェシカ・ナッシュ
二児の母
薬物に手を染めていたがリハビリ施設に通い治療した
収入のためにテキサスに引っ越そうとしていた矢先にロブとサミーに閉じ込められた
・サミー
薬物中毒者で小児性犯罪者
ロブに金を貸している
・ロブ
薬物中毒者でDV夫
薬物を克服したジェシカに執着し暴力を振るう
・レイニー
ジェシカの娘
・メイソン
ジェシカの息子
シチュエーションとコンセプトはいい
薬物中毒者のDV夫と同じく薬物中毒者の小児性愛犯罪者に貯蔵庫に閉じ込められて脱出と娘を守るために立ち回る…
こう書くとすごい良シチュエーションなスリラー映画ですね。
特にDV夫と小児性愛犯罪者が相手というのが生理的嫌悪感を非常に催してくれて緊張感もたらしてくれます。
ただでさえ設定の時点で生理的嫌悪感を感じますが、当然言動や行動もそれに伴うもので中々の嫌悪感。
娘を狙うサミーと薬物を克服したジェシカをまた薬物中毒者に戻そうと執着するロブと、
何というか見ているだけでこいつら早く◯なねえかなと何一つ同情の余地がないくらいの嫌悪感。
こういう生理的嫌悪感は恐怖と怒りを生み出すのと紙一重なので、気持ち悪いですが役割としてはなかなかの良ポジションとも言えるかもしれません。
スリラーやホラーというのは主役側より相手に評価を委ねるタイプの映画なので、この映画はそこら辺は設定で既に勝っていますね。
ただこんないい相手がいるこの映画ですが、タイトル通り大体貯蔵庫に閉じ込められているので仕方ないとはいえ立ち回りの幅がないのが残念ポイントです。
序盤は独りで、中盤はサミー、後半でようやく外でロブと、という構成なのでどうしても後半になるまでは動きが少ないというか動きようがないんですよね。
ただそれぞれのパートで対峙する問題が変化するのは面白いです。
序盤はロブに閉じ込められて出るために娘のレイニーに頼んであれやこれやと奮闘。
ここは全く状況を変化させるような実りはないのですが、(というかジェシカが娘に少し当たったりなどむしろ問題が多い)それでもジェシカの人間性や事情というのも見えてくるので割と重要でした。
というか多分ジェシカの内面がメインなんでしょうね。この映画は。
中盤はスリラーとしてのキモとなるサミーとの対峙。
ここはキモいものの想像していた内容とはちょっと違いましたね。
閉じ込められた状況で何とかレイニーを守るために指示を出すのかと思いきや、
ロブの残した薬物で釣って腕を伸ばしたサミーの手のひらをドライバーで刺して固定させるという中々の荒技でした。
もっとサミーもジェシカも色々と立ち回ると思いきやサミーと問答し続けるという、サミーはキモいですけどピンチは少ないのでもう少し緊張感は欲しかったですかね。
でも酒使ってエンチャントファイアするのは面白かったです。
後半のロブとの対峙はもうタイトルから離れて外に出ても続く苦難という感じですが、
中でジェシカが一皮剥けているのでちょっと消化試合感は否めなかったです。
総じてシチュエーションよりどちらかと言うとジェシカの内面の変化の方が重要な映画かなとは思いました。
場面がほとんど固定されているので心理面が重視されるのはしょうがないですかね。
後はちょっと見ていて悩ましい部分がジェシカが結構おバカというか迂闊な行動取るところです。
ここは見ていてちょっとストレスかかる部分にはなりますね。
最初に閉じ込められた経緯も迂闊ですし、サミーとの対峙もレイニーを守るために火をつけるのはいいですが自分のとこにも思いっきり火が回って慌てたり、あの状況で迂闊にもがっつり寝てしまったり脱出した後にドライバーを置いて行ってしまったりなど、
つねに最善手を取れとは言いませんがおバカな行動が多いのも如何なものかなとはどうしても思ってしまいますね。
結構レイニーに当たってしまいがちな部分や過去の事情も含めて未熟な人間という部分はフューチャーされてますが、
やっぱり自分のミスでピンチ、しかもあまりにも単純な部分だとどうしてもストレスにはなってしまいした。
常に最善で行動すると人間相手だと話として成り立たなくなるのでここのバランスは難しいんですけどね。
弱さとの対峙
ジャンルとしてのキモはトジコメでしょうがストーリー的なキモとしてはこっちかなと思う部分。
人間夜寝る時とかに暗い場所でずっと目を瞑っているとふと人生について考えたりすることもありますが、
ジェシカもこのトジコメというシチュエーションで自身の人生、弱さとの対峙をすることになりました。
ジェシカ自身、過去に薬物に手を染めリハビリ施設で治療をして克服したというような過去があるのですが、それに纏わる弱さ、もっと直球に薬物に関する弱さなど、
自問自答、相手との問答で再びそれらと向き合うことになりました。
序盤は娘レイニーに対して、ここは脱出のために協力を幼い娘に求めるのですが、
当然なかなか思い通りには動いてくれずに苛立ちをぶつけてしまいます。
ここは家族に対してそして自分に対しての弱さとの対峙ですね。
薬物に手を染めてレイニーを妊娠した時も母になる覚悟もなく一時期共に入れなかった、
そして自分自身も幼い頃には母を恨んでいる経験からレイニーに自分のように母を恨まないで欲しいと
少し都合のいいことを言っているような気もしますが、それでも娘との向き合い方への変化がありました。
正直ジェシカは映画時点ではそこまで素晴らしい母というポジションではまだないんですよね。
次にレイニーを狙って家に入り込んだサミーとの対峙。
レイニーのために早々にドライバー刺して固定するのですが、ここでロブの残した薬物との対峙を求められます。
サミーも過去に薬物を一度だけ克服しまた服用した経験からジェシカを追い詰めます。
気にかける人間がいなくなったらすぐに逆戻りするお互いに弱い人間なんだからと、ジェシカはここではそれは跳ね除けますがすぐに薬物に手を染めかけます。
この映画は基本的に薬物に手を染めるのは弱いという風に見ようによっては少しばかり手厳しいこと言ってる映画ですね。
まぁ言ってるのがサミーとロブなんで間に受けすぎるものでもないでしょうが。
そんな薬物に手を染めかけた時にふと目に入った聖書の中に入っているお金。そして聖書のページから祖母のメッセージとアップルバターのレシピが伝えられます。
偽預言者を警戒せよ
彼らは羊の皮をまとうが内側は貪欲な狼だ
その実で彼らを見極めよ
茨からブドウあざみからイチジクが採れようか
すべての良い木は良い実を結び
悪い木は悪い実を結ぶ
良い木は悪い実を結ばず
悪い木は良い実を結べない
良い木を結ばぬ木は切られ火に投げられる
このように彼らを見分けるのだ
掻い摘むと良き人間になれ、悪い人間を見極めて付き合うなってことなんですかね。
この祖母、本編開始時点で亡くなっているのにかなりの強キャラです。
そもそもジェシカが住んでいるのが祖母が遺した家ですし、遺したお金も何千ドルとあまりにも偉大すぎますね。
この祖母からのメッセージと倒した十字架から天井の水漏れに気付きそこから脱出するなど、
ここからは完全に亡くなった祖母に導かれているかのような流れでした。
そして最後のロブとの対峙、薬物を克服せず家族とも向き合わずその癖また薬を使わせようと執着はする…
彼は言ってしまえば弱い時のままのジェシカのような存在であり、そのロブを乗り越えて(ぶっちゃけ殺害して)ジェシカは己の弱さからは完全に決別することになりました。
ラストは祖母の家で祖母の遺したアップルバターのレシピで商売が成功したジェシカ。
そのレシピに書かれている
リンゴが傷んでも捨てないで
悪い部分は切り取っていい部分は残すの
それこそがーー
最高のアップルバターを作るための秘訣よ
ジェシカは冒頭ではレイニーが持ってきた傷んだリンゴを全て捨ててしまいます。
しかしラストでは祖母の言うとおり傷んだ部分だけを捨てて、リンゴ全てを捨てずに調理に使います。
これはジェシカ自身も同じで傷んだ部分がある人間は全て捨てられるような存在になったわけではなく、
克服し傷んだ部分を切り捨て残された良心と生きれば真っ当に生きれるというメッセージでもあったのでしょう。
正直この映画の中ではジェシカは自身だけでは及ばす全て祖母に導かれたようなものでしたが、この映画の先では悪い部分を切り捨て自分の力で生きていく…
そう思わせるようなラストでした。
我々観客からすればエピローグですがジェシカにとってはプロローグですね。
まとめ
シチュエーションよりストーリーの方が重視されていたなと思うこのトジコメ。
思ったのとは違いましたが、こういう弱さとの対峙というテーマは自分みたいな人間には結構刺さるので良かったです。
弱さと対峙してそこから抜け出す…邦題のトジコメよりは原題のShut Inの方がストーリーとしては相応しいかなとは思いましたね。
自分はそこまで造詣が深くないためちょっと書けなかったのですが、宗教的な暗喩も結構含まれている映画です。
リンゴとか両手に釘とかなんかはモロですね。
暗喩してるんだろうなと思いつつもそれに対する意味は自分は知らないので、そこら辺に造詣が深い方が見るとまた違うもしくはより深い楽しみ方が出来るんじゃないかなと思います。
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