【映画】ラスト20分の絶望感が凄まじい… タイ・ファイター 感想

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タイ・ファイター

製作国

タイ

監督
クリサナポン・ラチャタ
脚本
クリサナポン・ラチャタ
出演者
サイモン・クック
ポーンウィパ・ワチャラカルーン
サッチャイ・ユカチェン
パドゥン・ソンセーン
アヌワット・ タラポン

今回はアマプラにて視聴したタイ産アクションスリラー映画、タイ・ファイター(原題:Thai Fighter/The Microchip)の感想。

Star Warsのタイ・ファイターではないですよ。

先に言っておくとストーリーの構成については色々と問題がある映画です。

オムニバスにしたけど視点の移動が早すぎて状況の確認が大変。
その割にストーリーの中身はストレートな内容なのでそもそもオムニバスがあまり機能していないとか、
緊張感ある話なのにコメディ演出が多すぎるとか色々言ったらキリがないです。

でもそんな不満も追跡者たる人間の存在とその男とのラスト20分以上に渡るアクションシーンで全て吹っ飛びます。

あまりの強さ、あまりの絶望感、そしてキレのあるアクションに間違いなく飲み込まれる映画と断言出来るラストバトルですよ。

ジャンルはアクションで上映時間は約80分となります。

ここが見どころ!

追跡者たる男の存在感とアクション

あらすじ

レストラン店員、カジノ店員、スリ、女装家の男娼として日銭を稼ぐ4人の仲間たち。初めて出会った頃は、みじめな暮らしをしていたが、これまで助け合いながらつらい状況を乗り越えてきた。そんな彼らに思わぬ試練が訪れる。偶然ギャングが皆殺しにされた現場に居合わせた1人がとあるメモリーカードを手にしたことから、犯人に追われるハメになる。運命を共にしようと約束した4人と犯人との攻防を描く超絶武術アクション!「イップ・マン 継承」でドニー・イェンと共演したアクションスター、サイモン・クックが非道の汚職警官を演じる!

Amazon Prime Videoより

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登場人物

ジョン

レストランで働く不法就労者

ジャック、ジャズ、エドクとと共に住んでおりお互いの稼いだ金を貯めて今の生活から這い上がろうとしている

レストランで行われた取引と殺人事件に巻き込まれ、その取引にいた男に狙われることになる

ジャック

カジノで働くジョン達の友人

カジノで働く主にイカサマをするディーラーをやっている

ジャン

スリで稼ぐジョン達の友人

仲間思いでスリに関しても貧乏人から盗むことには罪悪感を抱いている

エドク

ジョン達の友人の男娼

仕事柄トラブルに巻き込まれることも多いため意外と強い

ムアイ

ジョンと同じレストランで働く女性

ジョンとは互いに想い合っている

男と警察に追われるジョンに頼まれて証拠となるメモリーカードの回収をする

マナト・クワンビライ

レストランで犯罪者と取引をしていた男

本来取引で受け取るはずだったとある証拠映像が入ったメモリーカードがジョンに渡されたことで彼を追跡する

ざっくり概要

オムニバスで視点が激しく動く映画のため状況把握が大変なストーリー(蓋を開けたらどストレートなストーリー)ですし、
そもそも中身もあまり詰まっている部類ではないのですが中盤までのざっくりとした概要を。

不法就労者として働くジョン、ジャック、ジャズ、エドク。
彼らは同じ部屋に住み互いの稼いだ金を夢のために貯めていた。

ある日ジョンの働くレストランに明らかに悪人な連中が一部屋を貸し切り食事を始める。
そこで行われていたのは不審な取引。

その取引の中で黒い服を着た男が相手との取引に必要な物を渡さず実力行使で自身が求めるメモリーカードを奪おうとする。

彼らの接客をしていたジョンはその戦いに巻き込まれ、殺害される直前の男からメモリーカードを渡されてしまう。

部屋に帰ったジョンは友人達に事情を話し、次の日に警察に向かう。
しかし警察署の中にはメモリーカードを追うあの男が既にいたのであった。

それに気付き急ぎ逃げるジョン達、そして男の方は警察署内のデータにアクセスして彼らの素性を探る。

男から逃げたジョンはレストランの同僚であるムアイに連絡をし、
実はメモリーカードを受け取った後にすぐにその場で隠したチップ箱からメモリーカードの回収をするように頼む。

メモリーカードを回収したムアイはその中身を確認する。
その中に映っていたのは警察の殺人と薬物取引の現場の映像。

その直後に現れた警察からジョンの捜索について協力されるが、
既に映像を見たムアイにとって警察は信用ならない、彼女は警察達を追い返して急ぎジョンに連絡を取る。

殺人犯の男の狙いを知り、またムアイの部屋は警察に監視されていることからジャックの働くカジノでメモリーカードを受け取る段取りをつけるジョン。

狙われているのはあくまで自分だけ、友人を巻き込むまいと1人でカジノに向かおうとするジョンだが、彼の考えに気付いたジャック達は強引についてくる。

友は決してお互いを見捨てない。
“友のため、夢のため、日々のため”

彼らはメモリーカードの回収に向かうのであった。
既に男から尾行されていることには気付かずに…

中盤までのざっくりとした内容としてはこんな感じ。

ここまではあまり中身は無い映画というか、特に捻りのないストーリーですね。

というか最後までは捻りはないのですが。

ですがこの映画の真価はラストの男に追いつかれてから。

ここからの展開は中盤までのダルさを吹き飛ばす絶望感を見せてくれる内容となっていますよ。

あまりオムニバスの意味はない(ネタバレあり)

この映画序盤からかなり激しく視点が切り替わるオムニバス形式のストーリー進行となっています。

ジョン達主要人物4人は勿論追跡者たる男の視点までこれらが激しく入れ替わります。

ただ激し入れ替わる割にはあまり意味がなかったりします。

大体オムニバス形式の映画と言うのはそれぞれの視点の行動が実は他の視点の人物を助けたり追い詰めたりなどの影響があったり、
全ての視点を合わせることにより真実が明らかになったりなどという形になるからこそ採用されると思うのですが、
この映画のオムニバスはどちらにも作用しておりません。

理由としては至って単純。
この映画のメインストーリーは別にメモリーカードを巡ってただ追いかけっこしているだけで目的は最初からはっきりとしていること、
そしてメモリーカードの中身も別にパスワードで隠されていることもなく簡単に中身の確認がされてしまうからですね。

追跡者の目的は最初からメモリーカードと分かっているのでそれぞれの視点で相手の目的を探ることやそれに対する対処という物を考える必要がない、
そしてメモリーカードの中身もあっさりと見れるので誰かがパスワードを入手して他の仲間がそれを告発しに動くなどといった駆け引きも生まれないわけです。

オムニバス形式で謎の男に狙われるという形を取るなら、
これらのどちらかを行ってストーリー面でも興味を引く形にしても良かったんじゃないかなぁと思いますね。

ぶっちゃけ悪徳警官が汚職の証拠を消すために追いかけてくる。
この構図が最初から最後まで崩れませんからね。

わざわざ1人の警官に「良い警官と悪い警官きちんと見分けろ」こんなセリフを言わせているんですから、
実は追跡者の方が良い警官で捜査をしているのが悪い警官くらいの捻りはあると思っていましたよ。

これはこれで安直な予想だなとは自覚しています。

そもそも尺が少ないからこういう形式を取らざるを得なかったのかもしれないという考えもあるかもしれませんが、
この映画結構コメディ挟んだり、後半に入る前には仲間達4人の過去映像でミュージックビデオやってがっつり尺取っているんですよね。

なのでやはりオムニバスという形式はこの映画では不要な要素かなと思いましたね。

ですが先ほど言ったがっつりと尺を取ったコメディとミュージックビデオに関してはラストまで見るとこれ多分必要だったんだなと印象が変わります。

その理由はラストにとんでもない絶望感と犠牲があるから。

追跡者とのこれまたがっつりも尺を取ったラストバトルですが、はっきりとネタバレをするとジャックとエドクが犠牲となってしまいます。

この展開がベタながら中々に熱い。
所謂ここは俺たちに任せてお前達は先に行けなんですが、
この展開に今までのコメディと友人達との回想を挟んでいるミュージックビデオが効くんですよ。

あんなにやばい状況にも関わらずお気楽にコメディを挟み、じっくりと長尺で友人達4人の関係性も見せる。
それを見せられた後にお出しされる追跡者による犠牲という展開はやはり心に響く物はありますよ。

この手の尺や規模の映画は同じような展開をしても関係性の深堀り不足という物が目立つことがあってノリ切れないパターンも珍しくないのですが、
この映画はそこら辺ちゃんとやっていたので展開に冷めることなく魅入らせる力はありました。

オムニバスの意味の無さを除けば限られた時間の中での取捨選択はしっかりと為せていたストーリー展開だったのではないかなと思いますね。

4人の絆をしっかりと見せてからの犠牲と勝利ですから。

絶望感ある敵のアクションはいい物だ

この映画の敵となる追跡者たる汚職警官マナト・クワンビライ。

彼の存在感とアクションだけでこの映画は元が取れるとい 言っても何一つ過言はありません。

彼を一言で表現するならターミネーター。

無表情で無敵な追跡者が追ってくる様を表現するのにこれ以上に相応しい表現はないでしょう。

彼のアクションは滅茶苦茶いいです。

キレのあるアクションとそれをしっかりと魅せるカメラワーク。
序盤からそれを惜しげなく披露してこいつは他の登場人物とは格が違う最強の敵だぜと見ている側でもすぐに把握出来るほどです。

そしてそれを表現しきっているのが最終戦。

もうね、この映画を作っている人達はこれだけを作りたかったんだろうなとこれまたすぐに把握出来るくらいに力入ってます。

20分くらいぶっ通しでアクション、しかもあまりの最強っぷりを見せつけながらですからね。

誰が立ち向かっても敵わない、何度攻撃しても怯まない。
圧倒的な暴力、圧倒的な強さ、圧倒的な実力差。

ジョン達が何度も何度も立ち上がっても無傷で返り討ちと最早化け物クラスでこいつには一体どうやって勝つんだ?と
コメディ塗れな中盤までとは実にいい緩急な緊張感が生まれていました。

しかも戦闘スタイルが弱った相手に追い討ち上等な残虐ファイトスタイルなのがまたいいんですよ。
冗談抜きで倒れた相手への追い打ちがエグいのなんのって、
これはアジア映画らしい味がよく出ているアクションでしたね。

正攻法じゃ勝てないから酒をぶっ掛けて火をつけようとしても途中まで投げつけたマッチすら避けまくる始末。
ようやく火をつけて倒したと思ってもスプリンクラーで火が消えた後に再び立ち上がってまた平然と戦闘するんですよ。

生身の癖に完全にターミネーター。
正直生身対生身というカテゴリ内なら近年稀に見るくらいの絶望感を見せてくれます。

「俺は警官だ、法律そのものだ」っていう台詞も腐っている感ありながらも
ジョン達の立場が不法就労者と考えるとそういった所でも優位に立ち敵わない感出しているのがまたいいんです。

最終的にジョン達が敵うことなく良い警官の発砲によって決着がつくのもここら辺を示唆していると思ったのは自分の考えすぎでしょうか?

最後にメモリーカードの紛失には成功して証拠不十分で釈放されてテレビ越しにジョン達にメッセージを送ったりするところなど
最後まで絶望感たっぷり、最早ホラーに片足突っ込んでいるその様がめちゃくちゃ魅力的に感じてしまい、
B級という括りなら久しぶりにがっつりと心掴まれる存在となりましたよ。

まとめ

ラスト20分だけで見て良かったと思える映画でしたよ。

こんな結論出してますが、だからといってラスト20分だけ見てもいいと言うわけではない作りになっているのも上手いですね。

オムニバスは失敗してますが一見無駄な尺稼ぎに感じる仲間とのコメディや回想。
これがラスト20分でしっかりと絶望と怒りに変わるのはこの尺の映画として見れば良く出来ております。

まあでもこの映画の魅力の8〜9割はマナトですね。

彼のキレッキレなアクションとターミネーターばりのタフさと絶望感が無ければ自分はただの虚無映画と断じてしまっていたと思います。

たった1人の存在だけで映画を一気に華やかに印象的に出来る。
何というか全てにおいて整合性がある作りもいいですが、
1つの存在だけで映画を引っ張り上げるというのもまたいいものだなと感じ入ってしまいしたよ。

このやり方は完全にホラー映画や怪獣映画の作りなんですけどね。


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