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製作国
ノルウェー
監督
ヨン・アンドレアス・アナスン
脚本
ハラルド・ローゼンロウ・イグ
ラーシュ・ギュドゥメスタッド
出演者
クリスティン・クヤトゥ・ソープ
ヘンリック・ビェラン
ロルフ・クリスチャン・ラーセン
アンドレス・バースモ・クリスティアンセン
ビョルン・フローバルグ
タイトルだけ見るとバーニング・オーシャンを思い起こさせるこの映画。
要素こそ被っておりますが、見ている視点は違うというしっかりと差別化はされている映画でした。
今回はそんな映画バーニング・シー(原題:Nordsjøen/The Burning Sea)の感想です。
ジャンルはスリラーアクションで上映時間は約104分となります。
長い日常を描写することにより感情移入できる後半のドラマ
目次
あらすじ
北海の油田で石油採掘リグが倒壊する事故が発生。海洋研究チームのソフィアは原因究明に乗り出すが、海底で大爆発が起き、さらに恐ろしい事実が判明する。リグ倒壊は大規模な海底地滑りが原因で、数十時間以内に再び巨大地滑りが起ころうとしていたのだ…。
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登場人物
・ソフィア
イーリーの遠隔パイロット
ガルファクスAに取り残されたスティアンを助けるために無断で救助に向かう
・スティアン
ソフィアの恋人
地滑りの直前パイプを絞めに行ったことでガルファクスAに取り残される
オーディンという息子がいる
・アルトゥル
ソフィアの同僚
ソフィアのスティアン救助に協力して共にガルファクスAへと向かう
・ロニー
ガルファクスAの責任者でスティアンの同僚
・ヴィリアム・リー
緊急事態管理者
地滑りで漏れ出した原油に焼却処分を提案する
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日常があればこそ
海が燃える映画ですが、この映画の半分は日常で形成されております。
ちょっと尺割きすぎじゃない?と思われがちですが、こういうディザスター映画の側面を持っている映画はこの日常があるかどうかは大事となります。
ソフィア達主要登場人物達はヴィリアム以外はプライベートでも交流があり、
その関係性は恋人、親子、友人、同僚と関係は様々ですが彼らはお互いを知っておりそして愛があります。
日常に半分も尺を使い描写し生活感などの息遣いを持たせる。
これがあるからこそ後半彼らの時に感情的とも言える決断にも納得感があり、また納得しつつ不快感を感じ時にストレスともなりますがこれが大事なんです。
当然ストレスの程度にもよりますが、これこそが日常の一部となる存在を失うかもしれないという登場人物達に血が通ってる証拠なのですから。
この映画には決断において2つの軸があり、ソフィア達個人のミニマムな視点だと感情を優先するもの。
そして大局を見ざるをえない大きな視点だと冷静な決断を優先するヴィリアムです。
パッと見だと対比関係にも見えますがそんなこともなくヴィリアムも犠牲者を増やさないために苦渋とも言える決断を下しているのでこの映画の人物は基本的に血が通っております。
切り捨てたくて切り捨てているわけじゃないというのが見て取れるのがいいところですね。
そしてスティアンを救出に向かうという感情的とも言えるソフィア達の決断。
日常の一部を失うことを恐れること、これはしっかりと日常を見せたからこその納得感のある描写であります。
こんだけ覚悟決めたので難航するのかなと思うスティアンの救出自体ですが、こちらは予想に反してかなりあっさり成功します、
とはいえ救出の後はやはり脱出、こちらがキモと言えるかなと思える部分になっていました。
地滑りにより漏れ出た原油を焼却処分され燃える海が迫る中、救助艇に水を入れ沈めて延焼の下に潜り込むという一か八かの決断です。
ここの給水作業の最後で固定レバーの1つが戻るというアクシデントが起きるのですが、ここはソフィアの責任は重く感じましたね。
アルトゥルがソフィア達を救うために自らを犠牲にしてレバーを戻し救命艇を降ろすことに成功しますが、これアルトゥルはいい奴なんですがかわいそうでもあるんですよね。
アルトゥルも日常でソフィア達と交流があればこその決断だとは思うのですが、この救命艇が降りないという事態は間違いなく避けられた件でもあるので。
救命艇が降りてからは沈まないように水を排出してそして浮上して救助されるという流れ。
ここは気絶したスティアンが目覚めるまで同じようなことを繰り返すだけなので、意外と緊張感ないんですよね。
何となく察したかもしれませんが、この映画は意外とパニックやディザスター描写は薄かったりします。
救助も脱出もあっさりというか燃える海の中でギリギリの奮闘をするという感じではないんですよね。
一応水圧で救命艇が軋むなど緊急性のある状況のはずなんですが、こっちとしては燃える海の中での緊張感を見たかったので思ったのと違うなぁという方に意識が引っ張られてしまいました。
良くも悪くも登場人物の時点でのストーリーだと燃える海での奮闘ではなく、それによって引き起こされるかもしれない日常の喪失への恐れがメインとなっていたと思います。
だからこそラストでアルトゥルのことを一瞬でもいいから振り返って欲しかったですね。
無事救助されお互いの無事を喜び当たり前に感謝するのはいいのですが、
アルトゥルという日常の一部が自分達を守るために散ったことをほんの少しでも逡巡しないのは今までの積み重ねを考えると片手落ちな部分かなと言わざるをえませんでしたね。
あれだけ日常に尺を割いたのにここだけは勿体ない。
燃える海
タイトル的にどうしてもバーニング・オーシャンを思い起こされるこの映画。
実際油田での事故、燃える海、など要素だけで見ると似てはいます。
ただ当然差別化はされており、あちらは会社のコストカットなどの理由で危機管理、メンテナンスを怠り起きた人災の話であれば、
こちらはやることはやっていても自然からのしっぺ返しをくらう話となっています。
どちらも行きすぎた欲によるものではあるのですが危機管理との向き合い方か自然との向き合い方かの違いですね。
ノンフィクションとフィクションの違いでもあります。
北海で行われてきた掘削作業、あくまで作中だと推測の1つという事にはなっていますが、この長年行われてきた掘削により8000年前の断裂が再開し地滑りが起きたという形です。
この地滑りによる原油の漏れによる海洋汚染、その予想被害規模は数十年から100年というとんでもない被害規模という正に行きすぎた欲による自然からのしっぺ返し。
その漏れ出た原油を止めるために行うのがヴィリアムが提案する大きな決断が漏れ出た原油を燃やすという焼却処分という案。
これでも生態系への被害は出るのですがそれでも被害規模は推測より遥かに抑えられる。
最悪の回避のために最悪の手段を選ばざるを得ないという話となっていました。
この映画の大きな決断を下す登場人物は事態に対してかなりしっかりと立ち回っています。
足を引っ張ることもなく与えられた情報から迅速に判断、行動もしています。
それでも尚自然からの脅威には飲み込まれ苦渋の決断を下さざるを得ない。
バーニング・オーシャンとの完全な差別化はここですね。
起因は欲から始まっても責任者の判断には大きすぎるくらいの差がある、しかしそれでも防げないのが自然からの戒めです。
燃やした海、燃え続けたこの海の煙が消えるのに1年もかかるというそれでも数十年規模の海洋汚染は避けられたというラスト。
石油で潤った国を自然が戒めたという台詞からも分かる通り、この映画の大きな視点での話は自然との向き合い方。
欲に任せて自然から搾取を続けると手痛いお仕置きを受けるという啓蒙のお話となっていました。
まとめ
小規模な視点と大きな視点、この2つの視点からの決断が見れるこの映画。
前者はドラマとして後者は啓蒙として紡がれていく話でした。
個人的にはもう少し燃える海との戦いというものが見たかったのですが、こちらはそこまで主眼となってはいませんでしたね。
燃える海はあくまで最後の引き鉄、舞台装置でありシチュエーションには持ち込まれませんでした。
緊急時における人のドラマを引き立たせるためにもう少しこの燃える海を使ってくれた方が話としても絵面としても好みだったんですけどね。
派手にすればいいというものでもないですが分かりやすい見どころは欲しかったかなと思う映画でした。
2つの視点からの決断という要素は良かったので惜しい。
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